遺言、相続に強くなる!

6-1 遺言書があっても トラブルになる時代になった


「遺言書を作ったから、もうこれで安心だ」
もし、そう思っている人がいたら、残念ながらそれは誤りです。実は今、遺言書にはいくつかの弱点(もしくは不確実な点)があり、遺言書を作っただけでは安心と言い切れない時代になったのです。

<遺言書が絶対ではなくなった>
これまで、「相続させる」という遺言の効力は絶対的でした。「長男に自宅の土地建物を相続させる」と書けば、長男はその遺言書を法務局に持って行って相続登記をすれば、完全に自分のものになる。これは昔も今も変わりません。ただし、以前は、長男が登記する前に二男が勝手に自分の持ち分を登記して誰かに売ったり、借金をして抵当に入れた場合でも、長男は最終的に、すべてを長男名義にすることが可能だったのです。

しかし、最近の相続法改正により、遺言書があっても、法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を備えなければ、第三者に自分の権利を主張できなくなりました。先ほどの例でいえば、二男が勝手に持ち分を売ったり抵当に入れたりした場合に、第三者が登記を備えてしまえば、原則、長男はそれを取り消すことができません。これは預貯金も同じで、先に対抗要件を備えた人が勝つことになりました。

つまり、相続法改正によって、遺言の効力が弱まり、遺産相続は対抗要件を備えた人が勝つことになった、いわば相続が早い者勝ちになったということです。これからは、遺言書がある場合でも、のんびり構えるのではなく、すみやかに執行に取りかかる必要があります。

<相続人全員が合意すれば、遺言書のとおりにしなくていい>
そもそも遺言書は、「絶対に執行しなければならないわけではない」ことをご存じでしょうか。遺言をした人が亡くなったあと、相続人や受遺者等、関係者みんなが、「この遺言書の内容は無視しよう」と合意すれば、遺言の内容にかかわりなく遺産を分けることが可能なのです。

「全員が合意しているのなら、それで問題ないんじゃない?」と思うかもしれません。でも、もし相続人の中に気の弱いAさんがいて、他の相続人から、遺言書の内容を無視するように強く求められたらどうでしょうか。その遺言書が、Aさんを守るために作られたものだったとしても、結局、Aさんは他の相続人のいうことを聞かざるを得ず、Aさんを守ることができなくなってしまいます。
このように、「関係者全員が合意すれば、実行しなくても構わない」という点が、実は遺言書の大きな弱点といえるのかもしれません。

<遺言書はいつでも書き替えられる>
遺言書は、遺言をする人の一方的な意思表示であり、財産をもらう人と契約をするわけではありません。ですから、「やっぱりやめた」と、遺言を一方的に取り消すことも可能です。財産をもらう人からすれば、非常にあてにならないものといえるのです。
たとえ、親が元気なうちに、「全財産を長女に相続させる」と遺言書を書いた場合でも、その後、寝たきりになったときに世話をしてくれた二女に恩を感じ、「二女に全財産を相続させる」と書き直すことがないとはいえません。

●子どもが親を囲い込むケースもある
もちろん、どのような遺言をするかは本人の自由です。長女にあげるという遺言書を書いたあと、長女と仲たがいして二女に財産を残すことにしたのかもしれません。また本来、遺言書は、本人が亡くなる直前の意思を反映したものであることが望ましいともいえるでしょう。

しかし、このことには次のような問題もあります。最初に遺言書を書いたときは、判断能力に問題がなかったのに、それから時間がたつうちに判断能力がおとろえてしまい、関係者から、本来なら書かないような内容の遺言書を作るように誘導される可能性があることです。

よくあるのは、年をとった親を子どものひとりが囲い込み、他の子どもに会わせないようにして、自分に有利な遺言書を書いてもらうケースです。そのまま親が亡くなると、遺言書の有効性をめぐって裁判沙汰に発展する可能性がきわめて高くなります。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

 お問い合わせ
contents
↓応援ポチ感謝です↓
にほんブログ村 士業ブログ 行政書士へ
様々な法律知識