『相続実務のツボとコツ』

5-9 不動産の名義変えに何が必要ですか?


<相続登記って何?>
①不動産登記とは
不動産登記とは、どこに、どのような土地又は建物があり、その土地や建物に誰がどんな権利を有しているのかを公示する制度です。日本国内にあるすべて土地・建物はこれらの内容が不動産登記簿に記録されており、法務局という国の機関によって管理されています。記録をすることを登記と言いますが、登記された内容は、法務局へ登記事項証明書(実務では登記簿、謄本などとも呼びますが同一のものです)の発行を請求すれば、所定の手数料を納付することで誰でも取得することができ、内容の閲覧が可能です。不動産登記事項証明書には、主に表題部と権利部があり、さらに権利部には甲区と乙区があります。

 

表題部には不動産の情報、権利部には個人または法人の権利が記録されています。表題部に変更があった場合は、30日以内に変更しなければならない義務がありますが、権利部に変更があっても変更するかは義務ではありません。

②不動産登記のルール
不動産登記にはルールがあり、取引の安全性から、必ず権利変動の過程を省略することなく記録しなければならない決まりがあります。権利変動とは、Aが売買によってBに所有不動産を売却した場合に、AからBへ不動産の所有権が移ることを指しています。また、Bが更にCへこの不動産を売却した場合も同様に、BからCへ所有権の権利変動が発生しているため、この過程を忠実に不動産登記簿へ反映させる必要があるのです。権利変動があった場合は、法務局へ名義変更の登記申請を行いますが、仮にA名義の不動産を、現在の所有者Cの名義に直接変更する申請をした場合、登記申請は却下されてしまいます。この場合、まずAからB名義に変更登記を申請した後、BからC名義へ変更登記を行います。このような所有権の名義変更を所有権移転登記といいます。

③相続登記の場合
相続登記には基本的に3パターンあります。

 

1.法定相続に基づく相続登記
民法に定める法定相続分に従って登記するパターンです。

 

2.遺産分割協議に基づく相続登記
相続人全員で誰がどの遺産を取得するのかを協議し、この協議に基づいて登記するパターンです。

 

3.遺言書に基づく相続登記
被相続人が遺言書を作成しており、受遺者が不動産を承継した場合に、遺言書の内容に基づいて登記するパターンです。

 

不動産の所有者が死亡し相続が発生した場合、これらの事由で不動産の所有権を取得した者は、自己名義に不動産の所有権移転登記を行うことができます。不動産登記法のルールにより、相続登記を省略して、第三者に売却することはできません。

<相続登記をしない場合のリスク>
不動産登記には、登記をしなければいけない義務はありません。しかし、登記をしなかった場合のリスクをいくつか紹介しましょう。

 

①いつの間にか第三者の名義に
不動産の所有者でもないのに真実の所有者と偽り、権利証や印鑑登録証明書を偽造して他人の不動産を売却し現金を騙し取る者を地面師といいます。特に空き家や空き地、登記事項に動きがないケースが狙われ易いようですので、注意が必要です。

②祖父の他界から名義の変更を行っていない
上記でも述べたとおり、不動産登記は権利変動の過程を省略することができません。相続が重なると登記に必要な書類が膨大になり、手続きが煩雑化するリスクがあります。

③不動産を売却できない
これも同様に、施設入所の為等、急遽現金が必要になった場合でも、第三者へ不動産を売却するには、相続人名義に一度名義変更しなければなりません。遺産分割協議が未了であったり、戸籍の収集に1か月かかったりと直ぐに登記できない場合もあります。

<相続登記の手続きや必要な書類>
具体的にどのように相続手続きを行うのかを見ていきましょう。

 

①申請人
相続登記の申請をする者を申請人といいますが、「法定相続」「遺産分割協議」「遺言」の3つのパターンでそれぞれ誰が申請人かが決まっています。

 

1.法定相続の場合
この場合の申請人は、各相続人が単独ですることができます。単独で申請する場合でも、自己の相続持分のみ申請することはできず、必ず相続人全員の持分を登記する必要があります。

2.遺産分割協議の場合
遺産分割協議によって不動産を取得した者と、それ以外の相続人全員が共同で行う必要があります。

3.遺言の場合
この場合の申請人は、遺言の解釈によって異なります。遺言による相続登記では、「相続させる」「遺贈する」の文言により、手続きが異なりますので、注意が必要です。詳しくは1-9節で解説しています。

 

(1)相続と解釈される場合
相続によって所有権を取得した者が単独で申請することができます。

 

(2)遺贈と解釈される場合
遺贈によって所有権を取得した者と、遺言執行者又は遺言執行者がいない場合は他の相続人全員と共同で行う必要があります。これは、受遺者が法定相続人の場合と第三者の場合でも同様です。

 

②管轄法務局
登記の申請は、法務局に行いますが、不動産の所在地によって管轄が決まっています。下記URL又は「法務局」で検索して管轄のご案内、から調べることが可能です。

(法務局HP)
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static

 

③登記申請書類
登記を申請する場合、登記申請書と添付書類を併せて、法務局へ提出する必要があります。「法定相続」「遺産分割協議」「遺言」の3つのパターンでそれぞれ必要な添付書類が決まっています。

 

1.法定相続の場合
(1) 被相続人と相続人の関係がわかる戸籍除籍謄抄本(又は法定相続情報)
(2) 被相続人の住民票(除票)又は戸籍の附票(除票)の写し
(3) 相続人全員の住民票の写し(又は戸籍の附票)
(4) 固定資産評価証明書

2.遺産分割協議の場合
(1)被相続人と相続人の関係がわかる戸籍除籍謄抄本(又は法定相続情報)
(2) 被相続人の住民票(除票)又は戸籍の附票(除票)の写し
(3) 遺産分割協書
(4)不動産を取得する相続人を除く相続人全員の印鑑登録証明書
(5) 不動産を取得する相続人の住民票(又は戸籍の附票)
(6) 定資產評価証明書

 

3.遺言の場合
(1) 被相続人と受遺者の関係がわかる戸籍除籍謄抄本(又は法定相続情報)
(2) 第三者が受遺者の場合は(1) に代えて被相続人の死亡の記載のある戸籍除籍謄抄本
(3) 被相続人の住民票(除票)又は戸籍の附票(除票)の写し
(4) 遺言書(自筆証書遺言の場合は家庭裁判所により検認を受けたものに限る)
(5) 遺言によって不動産を取得する者を除く相続人全員の印鑑登録証明書
(6) 遺言執行者がいる場合は (4) に代えて遺言執行者の印鑑登録証明書
(7) 不動産を取得する者の住民票(又は戸籍の附票)
(8) 固定資産評価証明書

 

④登録免許税
登録免許税は、不動産の登記を申請すると同時に法務局へ納付する必要があります。納付の方法は、登記申請書へ収入印紙を貼付する方法により行います。納付金額の算出には2通りあるため注意が必要です。課税価格は固定資産評価証明書または、固定資産納税通知書の課税明細書記載の固定資産の価格のうち、1000円未満の金額を切り捨てた価格です。

1.相続登記、遺産分割協議に基づく相続登記、遺言に基づく相続登記の場合
登録免許税=課税価格× 0.4%

 

例:課税価格10,567.469円の土地の移転
10,567,000円×0.4%=登録免許税4万2,200円(100円未満切り捨てます)

2.遺言による不動産の取得で、遺贈と解釈される場合
登録免許税=課税価格×2%

 

例:課税価格10,567,000円の土地の移転
10,567,000万円×2%=登録免許税21万1,300円(100円未満切り捨てます)


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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