『相続実務のツボとコツ』

5-5 「保険金」を受け取る手続きはどうしたらいい?


<「保険」契約の種類>
故人の遺品整理や財産調査をしていると、「保険証券」が見つかる場合があります。
一口に「保険」と言っても、その契約内容は様々です。次の表を参考に、まずは保険証券を見て、その種類が何かを整理してみましょう。それぞれの確認すべき点・注意すべき点は次の通りです。

①生命保険
生命保険契約には、「契約者」「被保険者」「保険金受取人」の3名が登場します。このうち、「被保険者」が亡くなった場合に、死亡保険金を請求することができますので、まずは「被保険者が故人か否か」を確認しましょう。

次に、「保険期間」を確認しましょう。これは「保険金の支払期間」とは異なるため、注意が必要です。「保険期間」が「終身」となっていれば問題ありませんが、「●年●月6日まで」のように期限が定められており、亡くなった日がその期限後であれば、保険金が請求できない可能性があります。もっとも、いろいろな保険契約があるため、部分的には請求が可能なケースなどもありますので、保険証券だけで判断せずに、保険会社へ連絡して慎重に確認することが重要です。

また、被保険者は故人になっておらず、「契約者」が故人の場合は、原則として「保契約の承継手続き」が必要です。遺産分割の対象にもなるため、「解約返戻金相当額証明書」を保険会社から送付してもらったうえで、相続人のうち誰が承継するかを協議(又は遺言書で承継)するようにしましょう。

最後に、「被保険者」も「契約者」も故人名義ではなく、「保険金受取人」だけが故人名義となっているケースです。この場合は、契約者(※故人ではない場合)が受取人変更の手続き(保険契約内容の変更)を行う必要があります。この手続きを行わない場合は、多くの保険会社が約款にて「法定相続分」を基準に分配することとしているため、異なる指定をしていた場合は要注意です。本来の保険契約の目的を達成できない場合は解約という選択肢もあるでしょう。

②医療保険
医療保険契約は、「第三の保険」や「第三分野」とも言われる保険契約です。前述した生命保険契約に「医療保険特約」として付帯するケースもありますので、保険証券を見て確認することが必要です。相続手続きの場合に、これらが問題となるのは、「亡くなられる前に行っていた手術や入院で、まだ請求手続きを行っていないもの」がある場合です。

「未受領(未請求)保険金」と呼ばれ、死亡保険金とは異なり、「債権」として「遺産分割協議の対象」となります。なお保険契約の内容によっては、「入院」しても4日目以降にならないと保険金発生事由にはならなかったり、「手術」といってもがん(悪性新生物)のみが対象だったり、「先端医療」は対象外だったりするため、保険会社に連絡して慎重に確認することが必要です。

なお、疾病(病気)ではなく、「ケガ」や「事故」、「災害」の場合に保険金発生事由となる「傷害保険」においては、これらの事由に該当しなければ保険金はもらえません(その他の特約がある場合は除く)。病気に備える「(狭義の)医療保険」は一般的に持病があったり、3~5年以内に手術・入院歴があったりすると加入を断られるケースがありますが、このような方であっても「傷害保険」は加入しやすく、また保険料も安い(疾病の可能性よりもケガや事故の可能性の方が少ないため)という特徴があります。

③損害保険
最後は、「損害保険」です。これは前述した「①生命保険」と「②医療保険」とは異なり、「財産」に対する損害を補償する保険契約です。最も当てはまるケースは、故人が自宅家屋に「火災保険」を掛けているケースです。「死亡」は保険金発生事由ではないため、原則として「保険契約の承継手続き」を行うこととなります。なお、実務的には、保険契約によって保険期間が1年~5年ごとの更新タイプのものもありますので、変更手続きではなく、満期終了を期に相続人名義で新規契約を締結することもあります。

この「損害保険」は一般的には「掛け捨て」であることが多いですが、「建物更生共済契約 (JA)」など積立てタイプの損害保険もありますので、保険会社に確認し、必要に応じて「解約返戻金相当額証明書」を発行してもらうようにしましょう。

<具体的な請求手続き3ステップ>
①保険会社又は保険代理店へのご連絡
前述したとおり、様々な契約タイプがありますので、保険金がもらえるか否かの自己判断は少々危険です。保険証券に記載のあるコールセンターへまずは連絡するようにしましょう。なお、保険会社ごとにより対応は異なりますが、保険代理店経由で保険契約を締結した場合は、代理店担当者が自宅まで来てくれる場合もあります。代理店がない場合は、保険金請求手続き等の書類を郵送で送ってくれることが多いです。

②必要書類の準備
死亡保険金の請求手続きの場合は、死亡の原因が確認できる「死亡診断書(死体検案書)の写し」が求められることが多いです。手元にない場合は亡くなられた病院の事務局にて再発行をしてもらいましょう。また、故人の死亡の事実が記載された戸籍(又は除籍)謄本の写しや住民票の除票の写しの原本、さらに保険金受取人の住民票の写し及び運転免許証の写しなどの本人確認情報の写しが必要な保険会社が一般的です。

一方、保険金の請求手続きではなく、保険契約名義の変更手続き(保険契約の承継手続き)では、相続人が全員であることを証明するための被相続人の死亡から出生まで遡る戸籍謄本・改製原戸籍謄本・除籍謄本等、遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書(原本)が必要になるのが一般的です。

どういう手続きを行うかによって必要書類が異なりますので、この点も保険会社の指示に従い、準備しましょう。なお、提出した「原本」については「原本の還付を希望」と伝達すれば、原本は返却してもらえることがありますので、保険会社に伝えてみると良いでしょう。

③保険金受領後に届く「保険金支払額通知書」での確認
保険金の請求手続きが完了すると、指定した銀行口座に保険金が振り込まれます。それとあわせて郵便で「保険金支払額通知書」(※保険会社によって名称は異なることがあります)が受取人の住所へ届きます。そこに記載された金額と一致しているか確認をしましょう。
また相続税申告手続きがある場合は、この通知書が重要になりますので、必ず保管しておいてください。

<遺言書による死亡保険金受取人の変更について>
保険法の改正により、「遺言書 (1-5節参照)」を活用することで、生前に保険契約を変更することなく、保険金受取人を変更することが可能となります (参考条文を参照)。例えば、保険証券の管理を相続人に任せており、受取人を変更したことを知られたくない場合などに、有意義な制度と言えます。しかし、たとえ有効な「遺言書」により、保険金の受取人の変更がなされたとしても、保険証券上の保険金受取人(遺言書で変更される前の保険金受取人)が、保険請求手続きを先に行い、保険会社もこの請求に基づいて保険金を支払った場合は、保険者(保険会社)に対抗することができない、つまり「自分に払え」と保険会社に対して主張することはできなくなります。

これは、保険会社にとっては遺言書の存在及び効力発生となる死亡の事実を把握する術がなく、請求に基づいて支払ったことに何ら落ち度はないためです。あとは当初の保険金受取人と、有効な遺言書により変更された新しい保険金受取人の当事者の問題となりますが、多額の場合はすんなりと保険金を渡してくれるとは限りません。

そのため、遺言書で変更された「新しい(真実の)」保険金受取人は、当該(有効な)遺言書を提出したうえで、できるだけ速やかに保険金請求手続きを行うよう、注意が必要です。

※1 入院給付金、手術給付金、未払契約者配当金、特約還付金等を除きます。
※2 遺言書がある場合は、遺言書の有効性を確認します。相続人の範囲の確定(被相続人の出生から
死亡までの戸籍謄本等の収集)については保険会社によりますが、遺産分割協議書の有効性の前提と
なりますので、原則は必要とされます。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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