『相続実務のツボとコツ』

5-19 被相続人が個人事業主として得ていた「許認可」の承継はできる?


<個人事業主が得ている(営業系)許認可の例とは>
個人事業主が「許認可」を得て事業を行っていたまま、亡くなってしまうケースもあります。例えば、

国家資格者(士業や医師等)
個人タクシーや貨物軽自動車運送事業(いわゆる「赤帽ドライバー」)
建設業許可(いわゆる「一人親方」)
宅地建物取引業許可
飲食店営業許可
古物商営業許可
旅館業營業許可
介護保険法適用事業所指定申請(デイサービス等の経営)

等を保有して経営している個人事業主が「現役」のまま亡くなってしまった場合です。
「営業する権利」として財産的価値を把握できることから、原則的には(実体的には) 相続を理由に承継することが可能であると考えられています(ただし、根拠法令により相続を原因とした承継手続きが定められていない場合は、要件を満たしたうえで新規で申請する必要があります)が、これらの許認可を得て、例えば家族経営で事業を行っていた場合に、許認可の承継ができないとなれば、いくら業績が良い状態であっても、法令に抵触する場合には、業務を中止せざるを得なくなります。

営業関連の許認可は無数にあるため、全ての許認可について説明は難しいですが、代表的な許認可の承継について本書では説明したいと思います。なお、相続の一般的効力の例外である「一身専属権」に該当する許認可については、そもそも相続の対象外であり、承継することができません(医師や弁護士などの本人の知識やスキルに基づくものがこれにあたります)。
一方で、営業する権利として財産的価値を把握できることから、原則的には(実体的には) 相続を理由に承継することが可能であると考えられています(但し、根拠法令により相続を原因とした承継手続きが定められていない場合は、要件を満たしたうえで新規で申請する必要があります)。

<許認可別承認手続き>
上記以外にも個人に認められる許認可は無数にありますので、故人が個人事業を営んでいた際には、取得している許認可の棚卸しや承継を希望する場合の法令の確認が必要になります。
相続開始後、法要等で多忙の際は、許認可の専門家である行政書士へ早めに相談されるとよいでしょう。特に、申請期限が明確に定められている建設業や旅館業では、期限を超えた場合には、改めて新規の申請が必要になってしまい、その間は事業が継続できなくなる(無許可営業)ため、要注意です。
なお、一般的な対策としては、「個人事業を法人化しておく」という手段があります。税制上の負担増や決算処理が煩雑になるなど法人化に際しての一般的な注意事項はありますが、生前に「法人化」したうえで法人名義にて許認可を取得していましたら、代表取締役の相続開始(死亡)によって、許認可の承継の問題は生じません。
しかしながら、法人格にて許認可を取得している場合であっても、代表取締役が個人として「人的要件」を満たしていた場合においては、(要件を満たす)後任者の選任などは必要となりますし、代表取締役の変更手続自体は必要となります。

<具体的な「承継手続きの進め方」について>
前述の通り、「許認可」の根拠法により、手続き方法は大きく異なります。承継手続きが定められており、数枚の申請書の提出のみで、簡単な申請で済む場合もあれば、そもそも法令の中に承継手続きが定められておらず、一から新規として申請を要する場合もあります。仮に承継手続きができる場合であっても、相続関係書類や相続人全員の同意が必要な場合もあるため、後継者を巡って難航する場合もあります。いずれにせよ、まずはその許認可の所管となる行政窓口へ相談を行うようにしましょう。なお、承継を希望しなかったとしても死亡により廃業届出が必要な場合がほとんどですので、これらの届出も遅滞や提出漏れのないように注意しましょう。

【コラム】中小企業経営強化法における「許認可の承継の特例」について
事業承継等を行うことを記載内容に含む経営力向上計画の認定を受けた上で、その内容に従い、次のいずれかの許認可事業を承継する場合には、承継される側の事業者から、当該許認可に係る地位をそのまま引き継ぐことができます。これは、円滑な事業承継を可能とするための施策であり、「生前に」許認可を親族間で承継させる際や企業間の合併等を行う際に有益となります。
各許認可の根拠規定は、以下のとおりです(※限定列挙)。

①旅館業:旅館業法第3条第1項
②建設業:建設業法第3条第1項
③火薬類製造業・火薬類販売業:火薬類取締法第3条・第5条
④一般旅客自動車運送事業:道路運送法第4条第1項
⑤一般貨物自動車運送事業:貨物自動車運送事業法第3条
⑥一般ガス導管事業:ガス事業法第35条


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

 お問い合わせ
contents
↓応援ポチ感謝です↓
にほんブログ村 士業ブログ 行政書士へ
様々な法律知識