『相続実務のツボとコツ』

5-17 自動車の相続による承継手続きはどうするの?


<自動車の相続による承継手続き>
故人が自動車を保有していた場合、相続による承継手続きが発生します。近年増えている残価設定型クレジット払いやカーリース契約を締結していた場合には、故人が所有者ではない場合がほとんどですので、最新の「自動車検査証(車検証)」にて確認を行いましょう。もし故人が所有者ではなく単に「使用者」に過ぎない場合は、所有者であるリース会社等に手続方法の確認をします(リース会社等との契約上の名義変更手続きもあるためリース会社等により手続きに差異が生じます)。
以下では、「所有者(兼使用者)」が故人である場合の承継手続きついて説明します。

<誰が相続するのか〜遺言書による指定又は遺産分割協議によって決定〜>
自動車は、不動産と同じく、遺言書がある場合及び相続人が単独の場合を除き、相続開始と同時に「相続人全員の共有状態」となります。これは軽自動車であっても普通自動車であってもトラックであっても同様です。そのため、不動産と同様に、相続人全員が参加する遺産分割協議によって、自動車の所有権の承継者を相続人の中から決めることが原則です。
なお、実務上あまり例はありませんし、使用方法や管理を巡ってトラブルに発展しやすいためお勧めもしませんが、相続人全員での「共有名義」にすることも可能です。

<自動車の名義変更に必要な手続きについて>
①車庫の承継 相続人名義での「自動車保管場所証明」の取得
自動車を保有するには保管場所(車庫)が必要であり、原則として、管轄の警察署から「自動車保管場所証明書」を発行してもらう必要があります。一般的に「車庫証明」というもので、自動車の登録制度上、まずこの車庫証明を取得する必要があります。
ただし、例外として、保管場所に変更がなく、かつ新旧使用者の「使用の本拠の位置」に変更がない場合は、車庫証明書の取得は不要となります。これは「故人と同居していた相続人が同じ駐車位置のまま自動車を承継する場合」を指します。例えば少し離れていたところに相続した相続人が「別居」していた場合、たとえ「保管場所は変わらなくても車庫証明が必須になる点は要注意です。
そして車庫証明の申請の際には、使用権原を証する書類も必要になりますので、同じ保管場所を使用するには、例えば賃貸借契約についても、新しい使用者への権利の承継がされていることが前提となる点も注意が必要です。

②自動車の所有権の承継手続き
自動車の所有権は「車検証」に記録されています。
軽自動車の場合は、各都道府県に事務所がある「軽自動車検査協会」で手続きを行います。普通車の場合は、管轄の運輸支局(又は自動車検査登録事務所)で手続きを行います。

③税金関係
「自動車取得税 (相続の場合は非課税)・自動車税」についても、都道府県ごとの自動車税事務所等で納税義務者の変更の手続きが必要です。運輸支局等の同一敷地内に併設されておりますので、移転登録 (承継手続き)の際に案内があり、申告書(報告書)もその場で入手できます。

④「自賠責保険」の承継手続き
自動車の名義が代わっても、当然に自賠責保険の契約者が変更になるわけではありません。保険契約者たる地位を承継するためには、自賠責取扱保険会社(保険代理店)へ連絡をして、死亡がわかることを証明する戸籍等を添付して手続きを行う必要があります。もっとも、自賠責保険(強制保険)は被害者を守るための保険ですので、名義変更が終わっていなかったとしても補償はされます。なお、自賠責保険の名義変更手続きは、自動車の名義変更を行ってから(承継した相続人名での車検証ができあがってから)行います。

⑤民間の「自動車保険」の承継手続き
上記③の自賠責保険とは異なり、「任意保険」と言われる損害保険の一種です。任意保険に加入している場合は、こちらの契約者たる地位の承継手続きも行う必要があります。自動車保険には、「等級」があり、運転歴や事故歴などにより保険料が異なりますが、同居の家族であれば相続であっても等級が引継ぎできる保険会社もあるため、相続するメリットが生じ得ます。自賠責保険と同じく自動車名義の変更が終わってからになりますが、等級引継ぎの点も含めて、保険会社又は保険代理店へ相談してください。

<面倒な時には、自動車販売店(ディーラー)か行政書士へ代行依頼を!>
上記のように自動車の名義変更は、申請期限も「15日以内」と短く、事前に車庫証明書が必要になるなど、意外と煩雑な手続きであったりします。
売却を予定している場合は、付き合いのあるディーラー(自動車販売店) や売却を依頼する中古車販売店等が手配してくれる場合もありますが、単純に承継したい場合は、行政書士へ相談されるとよいでしょう。車両の持ち込みが必要のない場合で、戸籍関係も既に揃っている状態であれば、自動車保管場所証明書の取得も含めて概ね税別3~5万円の行政書士報酬となります。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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