『相続実務のツボとコツ』

5-13 未登記家屋の名義を変更する手続きって何?


<不動産登記制度とは>
土地及びその定着物のことを「不動産」と言います(民法第86条第1項)。この不動産については経済的な価値も大きく、国民の権利の保全を図り、取引の安全と円滑に資することを目的として「不動産登記法」が定められており、「登記事項証明書」を法務局で請求すれば、誰が所有者で、どういう現況(地積や床面積、建物の構造や地目など)なのかなど、「誰であっても」自由に確認することができるように公示されています。

本来、新築した建物や表題登記がない建物の所有権を取得した方は、その所有権を取得した日から1か月以内に「法務局」に対して「表題登記申請」を行わなければなりません(不動産登記法第47条第1項)。ところが、建築した際に、この法律を知らなかったり、知っていても申請しなかったり、なんらかの事情で登記がされていない建物が存在します。これが未登記家屋です。相続手続き実務においては、この「未登記家屋」は日常的に目にするものであり、特段珍しいものではありません。

<未登記家屋の承継手続き(原則)>
未登記のままになっている家屋が発見された場合には、原則的には、承継した相続人が(又は土地家屋調査士に依頼して)表題登記申請を行い、完了後に同人が(又は司法書士に依頼して) 所有権保存登記申請を行います。

前述のとおり、不動産登記法第47条では、建物の表題登記申請は「義務」とされているため、未登記家屋を相続した相続人が、法務局へ表題登記申請及び所有権保存登記を行うことが望ましいです。また、承継した「未登記家屋」を第三者へ売却したり、抵当権などの担保を設定してお金を借りたりする場合は、それらの権利を明確に表示するために、やはり建物表題登記及び所有権保存登記をする必要性が生じます。

しかし、このような処分行為を行う予定がなく、逆に近い将来、「取り壊し(解体)」を予定している場合などにおいて、法的に義務付けられた登記申請をすることなく、「未登記家屋」の状態のまま「名義」変更を行うことが相続手続き実務では珍しくありません(もちろん良し悪しは別ですし、筆者としては原則通りの登記を推奨しております)。

<固定資産税の課税対象である場合(=非課税物件以外)は、「家屋補充台帳」に名義が記載されている>
まずは未登記家屋か否かの見分け方を知りましょう。その1つの方法として「固定資産税」があります。たとえ「登記」がされていなかったとしても、「家屋」が現存していれば、著しく価値が低いために免税されていたり(免税点制度)、宗教施設であり非課税になっていたりする場合などは例外として、原則として「固定資産税」が課税されます。

 

その場合、毎年4月~5月にかけて、その年の1月1日時点の所有者に対して、市町村役場の固定資産税課や市税事務所から「納税通知書」及び「課税明細書」が郵送されてきます。この「課税明細書」を見たときに「家屋番号」がついていれば「登記されている家屋」、家屋番号が付いていなければ「未登記家屋」であるとの判
別が可能です。

「課税明細書」での家屋番号の有無の確認の結果、「未登記家屋」であると推測ができたら、固定資産税を管轄する市区町村役場の担当課に確認してみるのが確実です。もし家屋番号が付いていなかったとしても、登記されている建物の増築部分などの「附属部分」であるときは、登記されている建物に関して登記名義の変更手続き(相続による所有権移転登記等)がなされれば、付随して相続人名義に変更される場合があります。

一方、完全に独立している家屋が「未登記」である場合は、「家屋補充課税台帳(未登記家屋台帳)記載事項変更届出」(書類の名称は市区町村によって差異があります)を提出します。

これがいわゆる「未登記家屋の承継(名義変更)手続き」となり、この手続き後には、(1月1日を基準として)新たな相続人に対して固定資産税の課税が通知されることとなります。

なお、市区町村によって違いはありますが、「家屋補充課税台帳(未登記家屋台帳)」上の名義は、「所有者」という表現ではなく、「登録者」や「登録名義人」と表示されることが多く、民法上の所有者ではなく、「納税義務者」のことを指します。あくまで所有者を公示する「登記事項証明書」とは異なるため、民法上の「所有権(者)」であるとの証明にはなりません。そのため、第三者に対して自らの所有権を主張するためには、やはり原則どおり、「法務局への表題登記申請及び所有権保存登記申請が必要になる点に注意が必要です。

◎用語の解説
・建物表題登記:「登記」されていない建物について、初めて登記簿の「表題部」を新設し物理的状況(所在・種類・構造・床面積および所有者の住所・氏名)を明らかにする登記のことを言います。不動産登記法上は、義務とされていますが、実務上はしばしば未登記となっています。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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