『相続実務のツボとコツ』

5-10 「住宅ローン」の残高を残して亡くなった場合の注意点は?


<「住宅ローン」とは>
一般的に、居住用不動産の購入に対する金融機関の貸し付け(住宅取得者の借り受け)のことを「住宅ローン」と言います。「住宅金融支援機構」のデータによれば、平均借入期間は概ね25年前後(単純平均)で推移しており、例えば35歳でマイホームを購入した場合、60歳前後(定年前後)で返済を終える方が多いです。

 

このように長期間に及ぶ借り入れということもあって、60歳以降に亡くなった場合でも、住宅ローンの完済前に相続が発生することは珍しくありません。特殊な契約のようですが、「金銭消費貸借契約」であり、いわゆる「借金(=金銭債務)」となり、相続の対象となります(相続人に支払い義務が発生します)。

 

<「団体信用生命保険」とは>
「団体信用生命保険」とは、上記「住宅ローン」の契約者(返済者)が返済中に死亡してしまったり、所定の「高度障害状態」になってしまったりしたときに、「住宅ローン」の残債務を「死亡保険金」で完済する生命保険契約のことを言います。大多数の民間金融機関においては、住宅ローン貸付の際の「条件(※加入義務)」となっていますが、例えば「フラット35」という住宅ローンを提供する「住宅金融支援機構」においては、団体信用生命保険(機構団体信用生命保険)の加入は任意となっています。あくまで「生命保険」ですから、例えば「3年以内に悪性新生物(がん)で手術・入院」している場合などは加入できない等の条件があります。

<住宅ローンを残して亡くなった場合の注意点>
「住宅ローン」の残高を残したまま亡くなった場合の注意点は、次の通りです。

 

①団体生命保険に「加入済みか否か」及び「保険金が支払われるか否か」
加入していたか否か不明確な場合は、「住宅ローン」を借りている金融機関に電話をして確認してみましょう。また加入している場合は、「保険事由」に該当し、きちんと保険金が支払われるか否かを確認しましょう。なお、加入時の「特約」によっては、生前に「がん」等と診断された段階で支払いが不要になる契約もあります。

②団体信用生命保険に加入しておらず、残債務について承継が必要な場合の手続き
前述の通り、「団体信用生命保険」に加入済みの場合であり、かつきちんと保険金にて完済される場合は問題がありませんが、団体信用生命保険に加入しておらす、かつ相続資産等で弁済をしない(できない)場合は、(金融機関が認める) 相続人が債務を承継する手続きを行います。一般的には、住宅ローンを使って購入した土地や建物の承継者が「住宅ローン」も承継しますが、法律上は「債務の承継」については相続人間だけの遺産分割協議(合意)で決まるものではないため、債権者である金融機関と調整が必要です。なお、担保権(住宅ローンの場合はほとんどが「抵当権」)を設定している場合の、「債務者」は登記事項ですので、被相続人から相続人である新しい債務者に変更する旨の不動産登記手続きも必要となります。このあたりは、「債権
者」たる金融機関側から案内がありますので、まずは金融機関(債権者)に速やかに相談するようにしましょう。

③住宅ローン以外の債務の有無
住宅ローンは団体信用生命保険のおかげで完済されたとして、他にも借金がないか心配という方もいらっしゃいます。そこで、「債務の調査方法」について紹介します。なお、以降説明する方法で調査ができるのは「金融機関」や「(貸金業登録をされている正当な) 貸金業者」への債務の調査になります。ご親族や友人、いわゆる「090金融」などの「ヤミ金融」については調査対象外ですのでご注意ください。

 

<債務の調査方法:信用情報の開示請求>
次の3つの機関すべてに対して、「信用情報開示請求」を行います。相続人からの請求の場合は、相続関係を証明する書類が必要となります。具体的な請求方法や添付書類はそれぞれの機関のホームページから確認できます。

①一般社団法人全国銀行協会
https://www.zenginkyo.or.jp/

 

②株式会社日本信用情報機構 (JICC)
https://www.jicc.co.jp/

 

③株式会社シー・アイ・シー(CIC)
https://www.cic.co.jp/

 

「債務調査」を行うには、上記の3つの機関への信用情報開示請求が基本的な方法ですが、簡易的には、亡くなられた方の「通帳の取引履歴」を見て、定期的な返済があるかないかをチェックする方法もあります。一般的に、お金を借りている場合は、毎月1回以上の返済がある場合が多いですので、通帳の記録を見てそのような動きがないかを入念に確認します。

 

なお、借入れがある方は現預金が残っていない方がいため、現預金がちゃんと残っているような場合では、残債務がある借り入れはないことがほとんどです。

 

なお、固定資産税や所得税などの滞納の有無については、税務署や市区町村の税務課にてチェック (納税状況に関する証明書の発行依頼) が可能です。これら公的な債務については、滞納状況によっては、不動産に対して「差押え」がされている場合があり、そのような場合は「登記事項証明書」から確認することが可能です。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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