遺言、相続に強くなる!

4-2 自筆証書遺言作成のポイント


遺言書を作るときに最低限押さえておきたいこと
●用意するもの
・筆記用具:消えにくいもの。黒いボールペンが使いやすい。
・用紙:罫線入りで少し厚みがあるもの。
・封筒:内容が透けないものが良い。
・印鑑:認印でもよいがインク内蔵型は×。実印がベスト。
●字はていねいに書く
せっかく遺言書を書いたのに、将来、文字が読み取れず無効になったということのないように、特に人の名前や生年月日、不動産や預貯金の情報などは正確・ていねいに書くようにしましょう。また、作成の日付は、「令和○年○月○日」まで、はっきりと書いてください。
●下書きをする
自筆証書遺言を書き間違えたときの訂正方法は複雑で、やり方を守らなければ、訂正の効力が生じません。複数個所を書き間違えた場合は、最初から書き直したほうが安心です。
●なるべく単純な内容にする
法律をあまり知らない人の場合、複雑な内容にすると間違いが生じやすくなるので、なるべく単純な内容にするようにしましょう。
とはいえ、あまり単純すぎて財産の内容が特定できない場合は、将来、相続手続きの際に困るので、不動産や預貯金など主要な財産については内容を記載するのが望ましいといえます。
[文例]
△  私の全財産を配偶者の○○に相続させる。
○私は、私が所有する以下の不動産及び預貯金を含むすべての財産を配偶者の○○に相続させる。
(財産を具体的に記載する)
●相続人や受遺者が特定できるように書く
「花子ちゃんに○○を相続させる」「友人の佐藤さんに○○を遺贈する」など、遺言書の文面から財産を承継させる相手が特定できない場合は、将来、相続手続きができません。遺言書を書いた人にとっては自明のことでも、銀行や法務局の担当者にとっては、誰のことかわからないからです。相続人や受遺者が特定できるように、氏名はフルネームで正確に書いてください。
また、同姓同名がいる可能性があるので、氏名のあとにかっこ書きで生年月日も記載します。家族以外に遺贈する場合は、連絡先がわからないと困るので、住所も書きましょう。
●「相続させる」と「遺贈する」を使い分ける
すでにのべましたが、相続人に対しては「相続させる」、それ以外の第三者に対しては「遺贈する」と書くのが基本です。この2つの言葉は、法的な効果が異なるので、使い分けなければなりません。
特定の財産について「相続させる」と書くと、遺産分割方法を指定したことになります。つまり、相続が発生した瞬間、その遺産については遺産分割が行われて、指定された相手に所有権が移るということです。遺産が不動産なら、他の相続人や遺言執行者の手を借りずに、指定された相続人がひとりで相続登記を行うことができます。
一方で、「遺贈する」と書いた場合は、不動産の登記は受贈者ひとりではできず、相続人全員または遺言執行者とともに行う必要があるので、注意が必要です。
<預貯金の書き方>
●預貯金は口座ごとか割合で相続させる
預貯金は、「預貯金をすべて相続させる」と書くこともできますし、口座ごとに誰に相続させるかを指定したり、「3分の1ずつ相続させる」と割合で指定することも可能です。
「口座のうち50万円を相続させる」などと金額を指定すると、残高が足りない場合に困るので、金額は書かないほうがいいでしょう。
[文例]
私は、私が有する〇〇銀行〇〇支店の普通預金(口座番号〇〇〇〇)のすべてを、妻○○に3分の1、長男に3分の2の割合で相続させる。
<ここに注意!>
遺言書があっても預貯金をおろせない場合がある!
せっかく遺言書に預貯金のことが書かれていても、金融機関によっては、相続トラブルをおそれて、預貯金の解約や引き出しには相続人全員の同意を求めてくる場合があります。自筆証書遺言でなく公正証書遺言にしたり、弁護士を遺言執行者に指定するなど、遺言書の信頼性を高める工夫をすることで、取り扱いが変わることがあるかもしれません。
<有価証券の書き方>
株式の場合は、その会社の「会社名・所在地・株式数」のほかに、取扱金融機関名も書くといいでしょう。また、株式以外に、証券口座にさまざまな金融商品を保有している場合は、「○○証券会社○○支店取扱い株式その他金融資産の全部」などと書くこともできます。
[文例]
・私は、以下の株式を含むすべての金融資産を換価換金処分のうえ、長男〇〇〇〇、二男〇〇〇〇に各2分の1の割合で相続させる。
株式会社ぎひょう工業(本社所在地〇〇〇〇、〇〇証券〇〇支店に預託)1,000株<不動産の書き方>
●所在地や番地は正確に書く
不動産については、通常の住所(住居表示)ではなく、登記簿上の所在地や番地を記載しないと将来、相続登記ができない可能性があります。法務局で登記事項証明書を取得したり、インターネットの登記情報サービスを
利用するなどして、正確な情報を取得しましょう。

もし、私道の有無など不動産の全体像がよくわからない場合は、市役所等で「名寄帳」を取得すれば、その地域での本人名義の不動産がすべて調べられます。県外にある場合は、郵送でも取得できます。
[文例]
1 不動産
(1) 土地
所在 新宿区市谷左内町OOT目
地番 20番30
地目 宅地
地積 100平方メートル●マンションの記載方法
マンションの登記情報は記載項目が多く、どこまで遺言書に記載するか迷うかもしれません。その場合は、遺言書に登記事項証明書を添付する方法にすればいいでしょう。

[文例]
1棟の建物の表示
所在 新宿区市谷左内町OOT目
建物の名称○○マンション
専有部分の建物の表示
家屋番号 〇〇
建物の名称 102
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 1階部分56.00平方メートル
敷地権の表示
所在及び地番 新宿区市谷左内町〇〇丁目
地目 宅地
地積 1100.00平方メートル
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 1000分の80
●共有している不動産の記載方法
現在、第三者と共有している不動産を遺言書に記載する場合は、「遺言者の共有持分一切」などと書くといいでしょう。
[文例]
私は、私の有する下記不動産の共有持分のすべてを、私の妻〇〇〇〇に相続させる。

所 在 〇〇市〇〇町〇O一T目
地 番 〇〇番〇〇
地 目 宅地
地 積   〇〇平方メートル
遺言者の共有持分 2分の1

●不動産はなるべく共有にさせない
子どもが数人いると、つい、「不動産を全員で共有させれば公平だろう」と単純に考えがちです。しかし、当面は問題がなくても、将来子どもたちが亡くなり、孫が相続するなどして共有者が増えると、不動産の維持管理や売却の際の意思統一が難しくなり、トラブルが起きやすくなります。不動産は1人に相続させ、他の相続人には預貯金など別の財産を相続させるなどしてバランスをとることを考えてみてください。
[文例]
・私は、私が所有する以下の不動産及び預貯金を私の長男に相続させる。(不動産と預貯金の記載は省略)
・私は、私が所有する以下の不動産を私の二男に相続させる。(不動産と預貯金の記載は省略)
●不動産を売却して相続させるのは難しい
自宅マンション・賃貸アパート・駐車場など、複数の不動産を所有している場合は、相続発生後すべてを売却して換金し、そこから諸費用を差し引いた金銭を複数の人で分けるという方法も考えられます。
ただし、この方法は将来、不動産の売却に時間がかかったり、売却できない可能性もあるなど、実行が難しいという問題があります。希望する場合は、専門家に相談し、十分検討してからにしましょう。
[文例]
遺言者の所有する下記不動産を売却し、その売却代金から遺言者の一切の債務を弁済し、遺言執行のための費用を控除した残金を、以下のとおり相続させる。
(不動産の表示は省略)
妻〇〇〇〇 2分の1
長女〇〇〇〇 2分の1

●こまごました財産はどうする?
遺言書には、主に、不動産や、預貯金などの金融資産を記載するのが一般的です。それ以外でもそれなりに価値の高い財産、たとえばブランド品のバッグや美術品、宝飾品などを記載したい場合は、対象物を特定できる情報(ブランド名や形状など)を遺言書に記載するといいでしょう。自動車の場合は、登録番号や車名・種類・型式・車台番号などを記載します。

[文例]
遺言者は、遺言者が所有する下記の絵画を、友人である〇〇〇〇(住○○、平成〇年〇月〇日生)に遺贈する。

作品名:〇〇〇〇〇
制作者名:〇〇〇〇
種類:日本画
素材:〇〇〇
類型:静物画
サイズ:縦○○センチメートル、横OOセンチメートル
制作年:平成○年〇〇月〇〇日
あまり価値の高くない衣類や書籍、家財道具などについては、遺言書の本文の最後に次のように記載して、特定の相続人に相続させるやり方があります。もし、将来、他の人がそれをほしいと言い出したら、財産を相続した人が「形見分け」という形であげればいいのです。
[文例]
遺言者は、前○項に記載した財産を除く遺言者の所有するその他一切の財産を、長女〇〇〇〇に相続させる。
【One Point】その他一切の財産を相続させる
「その他一切の財産を○○に相続させる」という一文があると、遺言書の作成後、相続発生までに所有することになった財産はすべてその人が相続することになります。もし、不動産など高額なものを買った場合は、あらたに遺言書を書いたほうが、将来相続人の納得を得やすいでしょう。
●相続人が高齢の場合は「予備的遺言」にすると安心
相続人が遺言をする人と年齢が近い場合、相手のほうが先に亡くなる可能性があります。万一そうなった場合は、相手に相続させるはずだった財産は別の人に相続させるように遺言することができます。これを予備的遺言といいます。
[予備的遺言の例]
第1条 遺言者は、遺言者が所有する下記不動産、預貯金、その他一切の財産を妻(昭和○年○月○日生)に相続させる。
(財産の表示は省略)
第2条 万一、遺言者よりも前に又は遺言者と同時に妻○○が死亡していた場合、遺言者は前条記載の財産を、遺言者の長男〇〇(昭和○年○月○日生)に相続させる。
予備的遺言の部分
【One Point】段階的に相続させたいときはどうする?
予備的遺言は、あくまでも次に代わる人を指定するだけです。もし、先祖代々の土地を、「妻→長男→孫」のように承継させたい場合、遺言書では実現できません。このように段階的に承継させたい場合は、家族に土地を信託し、将来は誰に帰属させるかを順番に決められる、「民事信託」の利用を検討するといいでしょう。
<人に知られたくないことは書かない>
遺言書を書き始めると、つい気分が乗ってあれこれ書きたくなるものですが、書きすぎには要注意です。
●家族への不満や家庭内の秘密は書かない
もし、遺言書に家族への不満や家庭内の秘密を書いてしまうと、将来それを見た家族が嫌な思いをするだけでなく、遺言書を金融機関や法務局に提示して相続手続きをするのをためらい、結局、遺言が実現できないことになりかねません。
●付言事項も簡潔に
付言事項も同様に、家族への感謝や遺言をした理由を遺言書の余白に簡潔に書く程度にとどめましょう。
<遺言書を封印してから保管する>
完成した遺言書を封筒に入れることは法律上の要件ではありませんが、誰かに勝手に内容を見られたくないなら、遺言書を封筒に入れてのり付けしてから保管しましょう。あとで遺言書の内容を見返したくなった場合に備えて、封印前にコピーを取っておくといいでしょう。
封筒の表書きには「遺言書」、裏面には日付と名前を書き、「開封しないで家庭裁判所で検認を受けてください」と一言添えると、将来、相続人が迷わずにすみます。
なお、相続人が遺言書の検認(遺言書の現状を確認する手続き)を受ける前に遺言書を開封した場合は、過料が課されることになります。

森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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