『離婚のツボとコツ』

4-2 どういう時に調停にしたら良いでしょうか?


<離婚調停を申し立てるべきか悩んでいます>
離婚について、相手と話し合っています。養育費について話し合ったと思ったら、次の日には離婚するか否かの話に戻ってしまったり、随分と長い間、話がまとまっていません。

私としては、これだけ時間をかけても話がまとまらないのであれば、そろそろ調停を申し立てた方が良いのではないかと思っているのですが、他方で、調停にすると大事になってしまい、今以上に話がまとまらなくなるのではないかという不安もあります。

<進め方のコツ>
●調停を申し立てた方が良い場合
調停を利用して話し合いを進めた方が良い場合というのは、概ね、以下のような場合だと思います。

1つ目は、話し合いの結果をきちんと形に残したい場合です。調停での話し合いの結果は、裁判所が調停調書を作成し、きちんと形に残してくれます。これにより、言った言わないといった水掛け論を防ぐことができます。

もちろん、形に残すだけなら調停調書にこだわる必要はないのですが、調停調書は裁判所が関与して作成されますので、偽造だと言われたり、内容がおかしくて無効だと言われたりする心配がありません。

相手が約束を守らない場合には、その約束の内容によっては強制執行をすることができます。また、履行勧告といって、裁判所職員から、約束を守るように促してもらうという手段をとることもできます。履行勧告は強制執行に比べ、申し立てが簡単な手段としても穏便な方法です。

2つ目は、迅速に解決したい場合です。

調停が始まると、概ね月1回の頻度で期日が指定され、その日に双方が裁判所に呼び出されて話し合いをすることになります。場合によっては、次回期日までに、決断しなければならないことや、参考書類の準備等の課題を設定されます。このような調停の枠組みは、いわゆる締め切り効果をもたらし、迅速な解決に向けて非常に効果的です。

また、相手がこちらの離婚の希望を口先だけだと思っており、まともに取り合ってくれていない場合には、離婚調停の申し立てという行動は、相手に対する強い気持ちの表明になります。

さらに、調停前の話し合いがうまく進んでいなかった理由が、相手が離婚に関する条件を整理しきれておらず、混乱していた点にあった場合には、調停委員が条件の整理を手伝い、相手の希望を明確化してくれます。

その際、まずは離婚をするかどうかについて考え、離婚することが決まったら親権について考える、親権について決まったら養育費について考えるという形で、きちんと順を追って整理してくれます。

例えば、養育費についての話の最中に、離婚をするかどうかについての話、あるいは、慰謝科の話を始めた場合には、すでに話し合いがついた離婚の話に戻ってしまっている、あるいは、子どもの養育費と慰謝料は全く別の問題であることを伝えて、話し合うべき内容をきちんと整理してくれます。

3つ目は、相手の条件が、あまりにも相場や法律の規定からずれている場合です。

そのような場合、まずは、相手に法律相談に行くように提案する、という手段があります。しかし、相手が離婚に積極的でない場合には、暇ができたら法律相談に行ってくる、などといって、そのまま、2・3ヶ月が過ぎてしまうということも少なくありません。

調停を申し立てることによって、期日が指定され、相手としても先延ばしにできなくなりますし(これは、2つ目の理由とも重複します)、調停の席で、調停委員という第三者から、相場や法律の規定が示されることで、相手の意識に変化が起こることを期待できます。

また、相手が、相場や法律の規定を知りつつ、その上でなお大きくずれた主張をしている場合には、残念ながら、2人だけの話し合いでまとまる可能性はかなり低いと思います。そうであれば、訴訟を起こすために、すぐに調停を申し立てるべきです(家族に関する問題については、訴訟を起こす前に、原則として、調停をしなければならないというルールがあります)。

訴訟に至らなくても、調停の中で、このまま譲歩しないで手続を進めれば自分が負けるのだ、という危機感に直面してもらうことができます。そこから話し合いの可能性が生まれる場合があります。

4つ目は、直接の話し合いが困難な場合です。
例えば、DVがある場合等は、直接話し合うことはまず困難ですから、第三者である調停委員を介して話を進める他ありません。

時間稼ぎをしたい、相場からずれていることを確信犯的に主張する、絶対に離婚をしたくない。

そのような相手ほど、調停を利用されたくないため、「調停になっても絶対に行かない」「調停になったら全面的に争う」「調停になったらお前の方が不利」等と不安を煽って、調停を利用させないようにしてきます。

そのような相手の発言は、大抵が脅しです。むしろ、調停の利用なしでは、話し合いがまとまらず、あるいは、こちらにとって極めて不利な条件で話し合いをまとめることになってしまいます。

◎進め方のコツポイント
必要だと思う場合には、調停を申し立てることを恐れないで。

<利用上のツボ>
●調停の申し立て方
原則は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に、調停の申立書を提出することになります。

例えば、夫婦が東京都新宿区で同居していたところ、妻が埼玉県さいたま市で別居を始めた場合を考えたいと思います。妻側から離婚調停を申し立てる場合には、東京都新宿区を管轄する東京家庭裁判所に、夫側から離婚調停を申し立てる場合には、埼玉県さいたま市を管轄するさいたま家庭裁判所に、調停申立書を提出するこ
とになります(事件係という部署に提出することになります。わからない場合は、裁判所入り口の案内で聞いてみてください)。

管轄については、裁判所のウェブサイトの「トップページ」から「裁判手続きの案内」に入っていただき、その中の「裁判所の管轄区域」というページを確認してみてください。

裁判所に提出する調停申立書は、各家庭裁判所の窓口で用紙を配布しているほか、ウェブサイトでも、書式が公開されています。
さらに、申し立てにあたっては、調停申立書と共にいくつかの書類を提出する必要があります。例えば、東京家庭裁判所では、

(1) 申立書
(2) 夫婦の戸籍謄本
(3) 年金分割のための情報通知書(年金分割を求める場合)
(4) 事情説明書
(5) 子についての事情説明書(二人の間に子がいる場合)
(6) 進行に関する照会回答書
(7) 連絡先等の届出書

といった書類を提出する必要があります(申立書以外の書式もウェブサイトで公開されています)。

また、養育費を求めている場合には、自分の年収を証明する資料 (源泉徴収票や数カ月分の給与明細) を、財産分与を求めている場合には、(わかる範囲で)財産に関する資料(預貯金の通帳や保険証券など)を提出すると、調停が早く進みます。

なお、(1)の申立書については、その写しが相手に送られることになりますが、その他の書類(申し立て後、調停中に提出した書類も含みます)は、相手に送られるわけではありません。しかし、相手は裁判所の許可を得て、それらの書類を見たり、コピーしたりすることができます。そのため、相手に見られて困るものがある場合には、相手が見たり、コピーをしたりすることを許可をしないよう、

(8) 非開示の希望に関する申出書

も裁判所に提出しておくことをお勧めします(許可するか否かについては、最終的には裁判所が判断することになります)。

●どの調停を申し立てなくてはならないのか
離婚調停を申し立てる場合、調停申立書に1200円分の収入印紙を貼って家庭裁判所の事件係に提出します。同時に、連絡のための郵便切手を予納 (内訳は、裁判所ごとに異なります。東京家庭裁判所の場合は、100円×2枚・82円×8枚・10円×10枚・5円×2枚の合計966円分とされています。なお、未使用分は事件終了後に
返却されます)する必要があります。
この離婚調停の中では、

(1) 離婚について
(2) 親権について
(3) 養育費について
(4) 離婚後の面会交流について
(5) 慰謝料について
(6) 財産分与について
(7)年金分割について

を話し合うことになります。

また、この(1)~(7) に含まれていないこと、例えば、離婚前別居中(つまり現在)の生活費(いわゆる婚姻費用の分担の請求。1-2節参照) や面会交流に関することは、別に婚姻費用の分担の請求の調停や面会交流の調停を申し立て、その中で話し合うことになります。
なお、その場合には、調停ごとに、

(1)申立書
(2) 戸籍謄本をはじめとする、裁判所が指示する書類
(3) 収入印紙(面会交流の調停の場合、1200円分×子の数が必要になります)
(4) 郵券の予約

等が必要になります。

◎利用上のツボポイント
弁護士や裁判所の窓口・ウェブサイト等を活用してください。

◎用語の解説
・調停 【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続「その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・強制執行:調停等で決まった約束を相手が守らない場合に、国家権力が強制的に約束を守らせる手続の総称。例えば、差押えがこれにあたる。
・差押え:例えば、相手方が調停等で決まった養育費を支払わない場合に、相手の勤務先や預金先の銀行に対して、相手への給与の支払いや預金の払い出しを禁止した上で、申立人に支払わせる強制執行の方法。なお、相手の勤務先や実際に預金口座のある支店を特定して申し立てる必要がある。
・履行勧告:裁判所で決まった養育費の支払いや面会交流の実施等が守られない場合に、申出により、裁判所が相手に対し、養育費の支払いや面会交流の実施を促す制度。詳細については、2-10節参照。
・期日:裁判所において、調停手続や審判手続などが行われる日のこと。
・慰謝料:精神的な苦痛に対する損害賠償(金銭請求)。詳細については、3-1節参照。
・配偶者間暴力(DV): ドメスティック・バイオレンス(domestic violence) 。一般的には、婚姻関係や内縁関係のある相手に対して行使される暴力のことであるが、最近では、婚姻関係や内縁関係のある相手に限らず、交際相手に対する暴力も含む概念として理解されるようになってきている。また、暴力の内容についても、物理的な暴力に限られず、心理的な暴力や経済的な暴力も含む概念として理解されるようになってきている。なお、上記は、あくまでも社会的な認識の解説であり、必ずしも「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(いわゆるDV保護法)」の定義とは一致しない。
・年金分割:婚姻期間中の厚生年金記録等を二人の間で分割し合う制度。詳細については3-12節参照。
・財産分与:婚姻中に夫婦で形成した財産を、離婚に伴い分配・清算する手続き。詳細については、3-2節参照。
・親権【親権者】 : ①子どものしつけや日常生活の世話 (監護教育)と②子どもの代わりに契約や財産の管理 (法定代理人)をする権限【その権限を持つ者】。詳細については、2-1節参照。
・面会交流:離婚や別居により子どもと離れて暮らしている親が、子どもと会うこと。詳細については、2-11節参照。
・婚姻費用:夫婦が共同生活を送るために必要な費用。簡単に言うと生活費。いわゆる養育費も含まれる。詳細については、1-2節参照。
・離婚事由:裁判で離婚が認められるために必要とされる事実。民法770条に定めがある。詳細については、1-1節参照。

【コラム】俺は調停には行かないからな!? ~相手が調停に来なかった場合~
「調停なんか申し立てても、絶対に俺は裁判所になんか行かないからな!」と言われたのですが、大丈夫でしょうか、という相談を受けることがあります。結論から言うと、相手が調停に来なくても、離婚することはできます。
調停は話し合いの手続きです。そのため、相手が調停に来ない場合には調停を成立させることはできません。
しかし、相手が調停に来ない場合でも、調停を不成立とした上で、離婚訴訟を起こすことができます。そして、この離婚訴訟においては、相手が裁判に出て来なくても、法廷で離婚事由を証明することさえできれば、離婚の判決を得ることができます。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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