『離婚のツボとコツ』

4-1 弁護士に相談するのはどのタイミングがいい?


<もっと早く相談できていれば>
ずっと、妻と離婚調停をしてきました。妻の側には弁護士がついていたのですが、向こうが提案してくる条件に納得がいかず、ついに調停が不成立になりました。妻の側の弁護士から離婚訴訟を起こされ、先日、裁判所に行ってきたのですが、法廷でのやりとりがさっぱりわからず、これはまずいとおもって、自分も弁護士に相談に行きました。

 

<進め方のコツ>
●早い時点で弁護士に相談する
かつては、離婚をするかどうか決めてから相談に来ないと、露骨に嫌な顔をする弁護士もいたようです。しかし、今はそんな時代ではありません。

そもそも、離婚後の生活がどうなるのかについてのイメージが持てない状態では、離婚を決断することはできないと思います。離婚後の生活について具体的なイメージを持つために、離婚すると法律的にどうなるのかを相談してから、離婚を決断したい人は少なくないはずです。

 

離婚をするかどうか迷っている段階から、弁護士が力になれることは数多くあります。

 

さらに、離婚に関する話し合いを進める中で、

 

(1)決めなければならないこと、今決めなくてもよいことを整理する(「はじめに」参照)
(2)話し合いが平行線になってしまった場合に、対案を提案する (3-8節参照)
(3)相手の主張を冷静に整理し、また、相場を示すことによって話し合いがこじれることを防ぐ
(4) 特に個別性が高い、離婚に関する問題について、当該事案に適した念書の文面を提案する

といった形で力になることもできます。

 

その意味で、早い時点から弁護士に相談をしながら離婚に関する話し合いを進めていくことによって、むしろ迅速に離婚を成立させることができます。

極端な例を挙げると、自分で調停を申し立ててみたけれど、何だか調停委員に自分の言っていることがうまく伝わらない気がするから相談に来た、あるいは、調停では話し合いがつかず、訴訟を起こしたいので相談に来た、というケースもあります。

しかし、調停を申し立てる、訴訟を起こす、というのは、手段にしか過ぎません。離婚後の「新生活」というゴールに向かって、どのような種類の調停を申し立てるのか、そもそも調停という手段を選択すべきなのかという点から、すでに戦略的な判断が必要になります。

 

調停の最中に相談を受けたものの、もはや有利に話し合いを進めることができる状態ではなくなっていたというケースもありました(調停は、入り方がとても大切です。4-3節参照)。また、訴訟の最中に相談を受けたものの、こちらの主張を裏付ける証拠はなく、しかも、相手も感情的になっていて、今更話し合いをすることも難しいというケースもありました。

 

●なぜ、数ある専門職の中で弁護士への相談を勧めるのか
離婚するか否か、親権者を誰にするのか、養育費はいくらなのか。離婚にあたっては、様々な問題について話し合うことになります。これらの問題について、自分としてはお互いに納得しているという認識だったのに、念書などに残そうとしたところ、相手に拒否される(実はお互いに納得していなかった)、というケースは少なくありません。

このように、話し合いがこじれてしまった場合、本人の代わりとして相手と直接交渉し、また、調停等の裁判手続きに同席することができるのは、弁護士だけです。

そして、話がこじれてしまった時点で、改めて弁護士に相談するとなると、事情や経過をまた最初から説明する必要があります。弁護士の側にとっても、事件処理については少なからず癖のようなものがあり、他の人が途中まで進めた事件を引き継ぐのは、意外とやりにくかったりします。

 

◎進め方のコツポイント
早い時点で弁護士に相談しておいて損なことはありません。

 

<利用上のツボ>
●弁護士の報酬について
弁護士に支払う報酬は、

 

(1)法律相談料
(2) 着手金
(3) 実費
(4) 成功報酬」
(5) 日当

 

といった項目で構成されていることが一般的です。

 

ただ、現在、弁護士の報酬は自由化されていて、項目や金額は弁護士ごとに異なります。

 

(1)法律相談料
法律相談料とは、相談のつど、相談に対する対価として支払うもので、30分5000円(税別)としている弁護士が多いように思います。あくまで依頼関係がない場合の相談への対価であり、離婚について依頼した後の打ち合わせの際に、別途相談料を請求する弁護士はいないと思います。最近では、相談料を請求しないという弁護士もいるようです。

 

(2) 着手金
着手金とは、事件を依頼した際に、依頼と同時に支払うものです。注意していただきたいのは、弁護活動の結果(裁判の勝ち負け)に関わらず(結果と関係するのは (4)の成功報酬)、弁護活動それ自体の対価として支払うお金だということです(よく、弁護士は負ける事件を受けたがらない、と言われます。これは、弁護士が関与しても依頼者に何のメリットも提案できない事件を受任すると、お金を頂戴するだけになってしまう可能性が高いという判断に基づくものです。したがって、負ける事件であっても、弁護士が関与することによって、その負け方を依頼者にとって好ましい方向に変化させることができ、かつ、その変化が依頼者にとって着手金を支払うに値するものだと思っていただけるのであれば、依頼を受ける弁護士がほとんどではないかと思います)。

また、依頼者の都合で、弁護士を解任する場合なども、返金されない場合がほとんとだと思います。

注意していただきたいのは、その着手金にどこまでの費用が含まれるのか、というところです。

 

離婚の場合、
(a) 相手との直接の交渉
(b) 離婚の調停
(c) 離婚の裁判 (家庭裁判所)

 

という順で進んでいくのが一般的ですが、その着手金で対応してくれるのが、(a)~(c)のどこまでなのか、仮に (a)までの場合、改めて(b) を依頼する場合にはいくらかかるのかなどは、事前にきちんと確認された方が良いと思います。

 

期間を区切って受ける契約や、時間報酬制の契約でない限り、契約の範囲内であれば、事件が長引いても追加で着手金を請求されることは(契約書に特約でもない限り)ありません。

(3) 実費
実費とは、例えば、裁判所に申し立てを行う際に納める費用や、裁判所への交通費等、事件処理にあたって支払う必要のある経費のことです。他にも、官公庁からの書類取得費用や、書類郵送費用なども含まれます。

 

このようなお金は、事件が長引くと必然的に増えていくことになります。ただ、遠方の事件を依頼している場合でもない限り(遠方の事件の場合、交通費や宿泊費を負担していただくこともあるため)、万単位で増えるようなことはないと思います。

(4) 成功報酬
成功報酬とは、例えば、離婚が困難な事案において離婚を勝ち取った場合にいくら、親権者となることが困難な事案において親権者となった場合にいくら、慰謝料を回収した場合にその何%、財産分与で取得した財産の何%、といった形で定めます。
契約時に事前に定め、その結果が実現された場合に支払う報酬です。結果が実現されなかった場合には、請求されません。

(5) 日当
日当とは、弁護士が調停等で裁判所に出頭した際に支払うものです。そもそも請求しない弁護士もいますし、3回目の出頭から請求するという弁護士もいます。さらに、遠方の裁判所に出頭する場合にだけ請求するという弁護士もいます。

日当については、出頭するたびに発生するものですので、事件が長引くと増える可能性があります。

 

相談者と話していてよくいただく質問が、この後さらに支払うお金が発生しますか、というものです。例えば、着手金固定、成功報酬固定、日当不要、という契約であれば、事件が長期間にわたることがあっても、実費以外の部分が増えることはない、ということになります。

ただ、しつこいようですが、最近は弁護士報酬も自由化されており、様々な料金体系の事務所があります。実際に依頼する弁護士に、きちんと確認してみてください。

◎利用上のツボポイント
基本的な構造は押さえつつ、自由化が進んでいるためきちんと確認を!

 

◎用語の解説
・調停【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続【その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。
・念書:いわゆる契約書のこと。これ自体は法律用語ではない。内容によって、和解書、離婚協議書等と題されることもある。
・親権【親権者】:①子どものしつけや日常生活の世話(監護教育)と②子どもの代わりに契約や財産の管理(法定代理人)をする権限【その権限を持つ者】。詳細については、2-1節参照。
・慰謝料:精神的な苦痛に対する損害賠償(金銭請求)。詳細については、3-1 節参照。
・財産分与:婚姻中に夫婦で形成した財産を、離婚に伴い分配・清算する手続き。詳細については、3-2節参照。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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