『離婚のツボとコツ』

3-7 不貞の慰謝料は離婚しないと、請求できないのでしょうか?


夫が不貞をしました。
子どものこともあるし、今すぐ離婚をするつもりはありません。ただ、夫の不貞相手からはきちんと慰謝料を取っておきたいです。また、今後も夫が同じようなことを繰り返すのであれば、子どものことがあるとはいえ、やはり離婚を考えたいので、その準備として夫からもきちんと慰謝料を取っておきたいです。

 

<話し合いのコツ>
●請求すべきか否か
不貞があった場合、離婚するか否かを問わず、配偶者、配偶者の不貞相手、いずれに対しても謝料請求を行うことができます。

しかし、離婚をしない理由が、配偶者との関係を良好なものに改善していきたい、いうものである場合、不貞相手に対する肥料請求の進め方はかなり難しくなっできます。なぜなら、不貞相手に対する思謝料請求が配偶者に知れると、夫にとって悪影響が出ることが少なくないからです。

 

もちろん、不貞相手への慰謝料請求によって悪化するような夫婦関係であれば、離婚するべきか否かについて、もう一度考えてみる必要があるのかもしれません。

 

そのようなケースでは、口先では申し訳ないと言っていても、不貞に関して責任を感じていない場合も少なくなく、将来同じことを繰り返す可能性があるからです。

 

しかし、冒頭のケースのように、子どもにとっての父親という存在、子育てのための経済力、という観点から、離婚を選択しにくい場合もあると思います。離婚を前提とせずに、不貞相手に慰謝料請求を行う場合には、夫婦関係の悪化という事実上の不利益が生じ得ることを認識した上で、そのようなリスクを負ってまで請求すべきか否かを考えていくことになります。

 

●不貞相手に請求すると決めたら
冒頭のケースとは異なり、妻が不貞に気付いたことに夫は気が付いておらず、しかも、妻は今後の婚姻生活への影響を考えて、不貞に気付いたと夫に知られないまま不貞相手に慰謝料請求をしたい、あるいは、不貞に気付いたこと自体は夫に知られたとしても慰謝料請求のことは知られないまま不貞相手に慰謝料請求をしたい、というケースを考えたいと思います。
この場合、

 

(1)慰謝料の金額
(2)慰謝料の支払い方
(3)夫への求償の制限 (求償については3-5節参照)
(4)慰謝料請求の件を夫に秘密にする約束
(5)夫への接触の制限
(6)清算条項(今回の不貞の件について、妻と不貞相手との間ではこれで全て解決とすること)

という内容で話し合いをまとめることが考えられます。

 

この場合の和解書のサンプルについては、以下の「和解書1」を参照してください。
また、実は、慰謝料を取ることよりも、不貞相手が夫ときちんと別れてくれることが一番の希望である場合には、

(1)夫と別れてくれるのであれば、今回に限り慰謝料の支払いを免除する
(2) 再び夫と不貞に及んだ場合には、きちんと慰謝料を支払ってもらう

 

という内容で話し合いをまとめることが考えられます。
この場合の和解書のサンプルについては、「和解書2」を参照してください。

 

ちなみに、各サンプルには、赤文字で解説が付けてあります。赤色文字部分を読んでいて難しいなと思われた方や、自分のニーズにきちんとマッチしたものを作成したいという方は、弁護士に相談された方が良いと思います。

 

<和解書1>

和解書
甲  カエル美(カエル男の不貞相手)
乙  カエル子(カエル男の妻)
は、本日,以下の通り合意するとともに、その確認のため,本和解書を2通作成し、各自保管することとする。

 

第1条
甲は、乙とカエル男が婚姻関係にあることを知りながら、カエル男との不貞行為に及んだこと(以下,「本件」とする。)を認め,そのことを深く謝罪する。
*必要に応じて期間などを特定し、「本件」の中身を具体化します。

 

第2条
甲は、乙に対し,本件に関する慰謝料その他の損害について,自己の負担部分として,金100万円の支払義務があることを確認する。
*「自己の負担部分として」の記載がないと、全体として100万円の損害だったと解釈され、乙がカエル男に慰謝料請求をしようと思った場合に,悪影響がでる可能性があります。

 

第3条
甲は、前条の債務につき、平成27年9月より平成28年1月まで毎月末日限り金20万円を、下記口座に振り込み送金して支払う。振込手数料は甲の負担とする。
かえる銀行 雨宿り支店
普通 13579
カエル子
(カエルコ)
*契約書としては定番の記載方法ですが、一般の方からみると分かり難い記かもしれません。平成27年9月より平成28年1月までの5ヶ月間,毎月月末までに金20万円を支払います、という内容です。限りという表現は大雑把にいうと、「までに」という意味ですので、当月分をその月の1日に支払っても構いませんし、極端な話、いきなり全額を支払っても(繰上げて支払っても)構いません。
他方で、月末が休祝日の場合、翌月に着金するような振り込みでは期限に間に合っていないということになります。

 

第4条
甲が,前条の支払いを2回以上怠りその額が40万円に達したときは,当然に期限の利益を失い、甲は乙に対し,第2条の金員から既払金を控除した残金及びこれに対する期限の利益を失った日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を,前条記載の口座に直ちに振り込み送金して支払う。
*期限の利益、というのは、お金を分割払いできる権利のことです。2回以上滞納し、しかもその滞納金額が40万になった場合には、分割払いを認めず,残金を一括して支払ってもらうという内容になっています。
具体的な事案にあてはめてみると,平成27年9月,10月と,1円も支払わなかった場合には、10月の支払日である10月31日の経過により,2回滞納し、滞納金額が40万円に達したことになるため、甲は期限の利益を失います。したがって,11月1日から,乙は甲に対して,100万円を一括で支払うよう請求することができます。また,年5分の遅延損害金も請求できます。
別の例で、9月末日に5万円,10月には支払いがなく, 11月末日に10万円の支払いがあった場合,10月末日の時点で、すでに2回滞納していますが(20万円支払う約束で20万円満額を支払えなかったことが,「怠り」とカウントされます),この時点での滞納額は,合計35万円のため、甲が期限の利益を失うことはありません。11月の滞納をもって、滞納が3回でかつ滞納額合計が40万円を超える45万円に達したことから、甲は期限の利
益を失うことになります。この場合は、12月1日から,乙は甲に対して,85万円(100万円-5万円(9月既払分) - 10万円(11月既払分))を一括で支払うよう請求することができます。また,85万円に対して,年5分の遅延損害金も請求できます。

第5条
甲は,本件について,名義の如何を問わず,カエル男に対し、金銭の請求をしない。
*注意していただきたいのは、この条項を根拠に、カエル男が、甲に対して請求してくるなと言うことはできないという点です。あくまで,甲がカエル男に請求してきた時に、乙が甲に対して、カエル男へのその請求は約束違反だよね、と言うことができるに過ぎません。ややこしいのですが,このような和解(契約)の効果は,原則として,当事者間(甲と乙の間)でしか効果を生じません。そのため、甲と乙の間でなされたこの和解を根拠に,甲でも乙でもない(甲と乙から見れば第三者である)カエル男が、甲に対して請求してくるな、と言うことはできないのです。
このような「請求をしない」という一方的に放棄なら甲と乙以外の間でも効果を生じさせて(カエル男にも主張させて)構わないのではないかと思う方もいらっしゃると思いますが、あくまで当事者間(甲と乙の間)でしか効果を生じないのです。

 

第6条
甲と乙は,本和解の内容及び本和解成立の経緯について,本和解成立後,第三者に口外しない。
* この規定により、一定の抑止力を期待することはできます。ただ,実際にこの条項を使おうと思うとなかなか困難も伴います。どういうことかというと,まず,口外したことに対するペナルティが定められていないからです。では,仮に,ペナルティを定めたら安心かというと,そういうわけでもありません。相手に対してペナルティを発動するためには,「本和解日成立後」に「口外」したことを証明する必要があるためです。例えば,いつの間にか乙が甲に対して慰謝料請求したことが知れ渡っていたとしても,甲に,乙から慰謝料請求の内容証明郵便を受け取った際に相談した友人から漏れたんだ,と弁解されてしまったら,「本和解日成立後」に「甲」が「口外」したことを証明することは,かなり困難です。
このような口外しないという条項のことを、いわゆる秘密保持条項といい,ネットなどで和解書の雛形をみても、気楽に使用されています。しかし,実際には、個別具体的な事案ごとに,使用する事態を想定して,「~という事態があった場合には、甲が口外したものと看做(みな)す」等の詰めた規定を置いておかないと、結局は使えないことにもなりかねません。
とはいえ、ペナルティと共に、詳細に定めようとすると、相手も,(口外するつもりはなくても) 漠然とした不安から,そのような内容での合意に拒否的になってきます。そうであれば、発動するのが困難なペナルティを期待するよりも、一定の抑止力を期待してシンプルな条項をおく、というのもひとつの話し合いのツボかもしれません。

第7条
甲は、本和解成立後1ヶ月以内にカエル男との不貞関係を解消し、その後、面談・電話・電子メールその他手段の如何を問わず、連絡を取らない。
*いきなり連絡を取らないという形ではなく、不貞関係を解消した上で、となっています。これは,現在不貞関係が存する以上,いきなり連絡を取らないという形にすると、カエル男が甲に詰め寄るなどして、結果的に甲が本和解成立の経緯について話さざるを得なくなったりするためです。もちろん、シンプルに、今後一切連絡を取らない,とだけしておいて、不貞関係解消のための連絡は当然に許される例外だ,という考え方もあります。しかし、当然に許される例外というのは、一度意識されると、どんどん自分勝手な解釈で増えていき(その解釈が法的にみて正しいかはさておき),結果として、せっかく定めた条項が骨抜きにされるケースも少なくありません。例外は、可能な限り具体的に明示できるに越したことはありません。
特に、カエルとカエル男が職場の同僚だったりすると,今後も業務上の接触は避けられないわけですから、事案に応じて具体的な定めを置く必要が生じてきます。

 

第8条
甲と乙は、本件について,本和解書に定めるほか,何らの債権債務も負わないことを相互に確認する。
*清算条項と呼ばれるもので、極めて例外的な場合を除いて,ほぼ全ての和解契約書の最後に置かれている条項です。簡単に言うと、お互い和解書に定めたこと以上のことは相手に請求できません、という条項です。例えば、この和解契約書の内容にて,甲と乙の間で和解契約が成立した場合には、甲が乙に100万円を支払い終わった後に、さらに乙が甲に対して、今回(=本件)の不貞の慰謝料を請求することはできない、ということになります。

平成27年8月31日
甲 東京都港区南青山(略)
カエル美(印)
乙 西京都山区北赤川(略)
カエル子(印)

 

<和解書2>
和解書
甲 カエル美(カエル男の不貞相手)
乙 カエル子(カエル男の妻)
は、本日,以下の通り合意するとともに,その確認のため,本和解書を2通作成し,各自保管することとする。

 

第1条
甲は、乙とカエル男が婚姻関係にあることを知りながら、カエル男と不貞行為に及んだこと(以下,「本件」とする。)を認め,そのことを深く謝罪する。

第2条
甲は、乙に対し,本件に関する慰謝料その他の損害の賠償として,金200万円の支払義務があることを確認する。

第3条
乙は、甲の前条の債務を免除する。但し、甲が第4条の規定に違反した場合には、この免除は効果を失うものとする。
*一旦,慰謝料の支払いを免除し、甲が第4条の規定に違反した場合(=再び不貞に及んだ場合)には、慰謝料を支払ってもらうという内容になっています
なお、この感謝料は、和解成立時に支払うわけではなく,第4条の規定に違反した場合に支払うに過ぎないため、勢い,第2条に定める金額を高くしてしまいがちです(「今後,不貞をするつもりがないのだからいくら
でも問題ないでしょ」ということです)。しかし、あまりに高額な場合、和解が無効になるリスクもあるため、注意してください。

第4条
甲は、本和解成立日以後,以下の行為を行わない。
(1) カエル男と性的な関係を持つこと
(2) カエル男と二人きりで会うこと
(3)(略)
* (1)は当然のことですが、可能であれば、事案ごとに(1)に至る前段階の行為を、例えば(2)のように、具体的に禁止しておく方が良いと思います。一度は性的な関係があった2人ですから,疑われないような行動を要
請することも合理的なことです。仮に,和解成立日時点で,乙が甲とカエル男との間の性的な関係を証明できる証拠を持っていたとしても、その証拠は,本和解成立日以後に甲とカエル男が性的な関係を持ったという証拠にはなりません。そして,一度不貞が発覚し、このような和解書を交わしたにも関わらず性的な関係を持とうとする場合には,以前にも増して(以前ばれた教訓も活かして),証拠を残さないようになります。
そうなってくると、例えば、甲とカエル男が2人きりでドライブをしている姿をこの友人が目撃した場合等、おそらくまだ性的な関係が続いているとは思うけれど、性的な関係の存在を証明できず,結果として,甲が第4条(1)に違反していることを証明できない、ということが起こってきます。そのため,(2) のような行為を禁止する必要性があります。
ただ,甲とカエル男が職場の同僚だったりすると,(違反の場合には慰謝料を支払うことにもなるため)、乙にとって証明しやすい禁止行為の定め方は難しくなってきます。
余談ですが,第4条に違反した場合に、一度免除した慰謝料を請求するという条項ではなく,罰金的にお金を支払うという条項にした場合,その条項の有効性について,裁判所は厳しい立場であるように感じています。

 

第5条
甲と乙は、本和解の内容及び本和解成立の経緯について,本和解成立後,第三者に口外しない。

 

第6条
甲と乙は、本件について,本和解書に定めるほか,何らの債権債務も負わないことを相互に確認する。

 

平成27年8月31日
甲 東京都港区南青山(略)
カエル美(印)
乙 西京都山区北赤川(略)
カエル子(印)

 

●配偶者に請求すると決めたら
相談の中で、今回に限り不貞の慰謝料を免除するが、次に不貞があった際には、自分に有利に離婚できるという内容の和解書を目にすることが多々あります。
例えば、

 

(1)必ず離婚に応じる
(2) 高額な養育費を支払う(相場の2倍等)
(3) 高額な慰謝料を支払う(通常の不貞で500万円等)
(4) 有利な財産分与 (全ての財産を分与する等)

 

というような内容の和解書です。

 

結論から言うと、このような内容の和解書を交わすのは、あまり良い方法ではないと考えています。

 

もちろん、次に不貞があった際に、配偶者が和解書の通り応じてくれる場合には問題ありませんが、配偶者が争う態度を示した場合、裁判所は(1)~(4)いずれについても、和解書の存在について配慮しつつも、和解書の内容そのままの結論は取らないように思うからです。

むしろ、今回に限り慰謝料を免除するという内容の和解書を交わして、心機一転婚姻生活を継続し始めたものの、結局夫婦関係がギスギスしてきたので、配偶者に新たな不貞はないけれどやはり離婚したい、と思った場合、その和解書が、「謝罪を受け入れて不貞を許したのではないのか(離婚事由や慰謝料金額への悪影響)」、「不貞の慰謝料は免除したのではないのか (慰謝料金額への悪影響)」という形で、あなたの足を引っ張ることもあります。

和解書を交わすのであれば、次に不貞があった際には、自分としてはどうしたいのか、何を確実に確保したいのかを明確にして、それをきちんと確保できるような和解書を弁護士に作成してもらってください。あるいは、次に不貞があった際に、すぐに別居して新生活を営めるように、今回きちんと慰謝料をもらっておく(特有財産になります)のも、良い方法だと思います。

 

◎話し合いのコツポイント
離婚するのでなければ、慰謝料を請求するリスクも検討してください。
ニーズを反映した和解書を作成するために、場合によっては弁護士の利用を。

 

<法律上のツボ>
●離婚に至らなくても慰謝料は請求できる
慰謝料は、「故意又は過失によって権利又は法律上保護される利益を侵害」された場合に請求することができます (3-1節参照)。そして、不貞そのものが、配偶者としての権利、あるいは婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するものですから、不貞によって離婚に至らなくても、配偶者及び配偶者の不貞相手に対して慰謝料を請求することができます。

 

もちろん、不貞によって離婚に至ったのか、離婚に至ることはなかったのかで、認められる慰謝料の相場は違ってきます(3-4節参照)。

さて、ここでややこしいのは、不貞に関係して、配偶者に対しては2種類の慰謝料を請求することができる(可能性がある)ということです。

1つは、不貞そのものに対する慰謝料の請求です。

 

もう1つは、配偶者の不貞によって離婚することになってしまった場合の、離婚すること自体に対する慰謝料(離婚自体慰謝料と表現することもあります)の請求です。こちらについては、離婚に至らない場合には、当然請求することはできません。

ただ、不貞に対する慰謝料と、離婚自体慰謝料の2種類の慰謝料が請求できるからといって、単純に2倍の慰謝料を請求できるわけではありません。

例えば、2年前に不貞があり、その際にはきちんと慰謝料を支払ってもらい、その後、不貞以外の配偶者の問題が原因で結局離婚したような場合には、新たに離婚自体の慰謝料の請求が認められる余地があるかもしれません。

他方で、不貞についての慰謝料を支払ってもらった直後に、改めて離婚自体慰謝料を請求した場合、離婚自体の精神的苦痛と不貞についての精神的苦痛はほぼ同一であるという判断となり、結論として、離婚自体慰謝料の請求は認められない可能性が高いのではないかと思います。

 

●どのように請求するのか(配偶者の不貞相手に請求する場合)
まず、配偶者の不貞相手に対して請求する場合には、内容証明郵便等で請求することが一般的です (3-5節参照)。

その上で、話し合いがつかない場合には、管轄のある地方裁判所(基本的には、自分の住所地を管轄する裁判所を選択するケースが多いと思います)に訴えを起こして、訴訟をすることになります。

 

なお、請求額が 140万円を超えない場合には、管轄のある簡易裁判所に訴状を提出することになりますが、例えば、請求額が140万円だと、裁判所における審理の結果、裁判官が慰謝料の金額は200万円だ、と思ったとしても、140万円を支払え、という判決しか出ませんので、注意してください。

 

あるいは、簡易裁判所に民事調停を申し立てる、という手段もあります。民事調停の場合は、請求金額に関わらず簡易裁判所に申し立てを行うことになります。同じ調停でも、配偶者に対して離婚調停を申し立てる場合とは窓口が違いますので、注意してください。

 

よく、調停は専門家を頼まなくても何とかなる、と言われていますが、実際には、

 

(1) 相手の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てることになるため、相手が遠方に住んでいると、調停が平日しか行われないことと相まって出頭が負担となる
(2) 強制力がなく、あくまで話し合いでの解決を目指す手続のため、相手が話し合いに応じる意向がないと成立しない
(3) そのため、話し合いを上手く進めていく必要があり、むしろ専門的な技術が必要(4-3節参照)
(4)話の進め方を誤ると、逆に話がこじれて相互に感情的になってしまい、本来まとまる話もまとまらなくなる

という難しさがあります。

 

●どのように請求するのか(配偶者に請求する場合)
離婚しないという前提で、配偶者に対して慰謝料を請求する場合、まずは2人で話し合いをすることをお勧めします。話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てる、あるいは、いきなり地方裁判所に訴えを起こすという手段を取ることが考えられます(離婚の中で慰謝料請求をする場合の法的手続については、3-1節参照)が、離婚をしないという前提であれば、話し合い以上の手段を取ることは、あまりお勧めできません。

そもそも、ここで話し合いがまとまらないようであれば、同じような夫婦間のトラブルが繰り返される可能性は高く、やはり離婚そのものを検討すべきようにも感じられます。

 

◎法律上のツボポイント
離婚に至らなくても不貞の慰謝料を請求することができます。
話し合いでまとまらなかった場合には、裁判手続を利用することになります。

 

◎用語の解説
・慰謝料:精神的な苦痛に対する損害賠償(金銭請求)。詳細については、3-1 節参照。
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・財産分与:婚姻中に夫婦で形成した財産を、離婚に伴い分配・清算する手続き。詳細については、3-2節参照。
・特有財産:夫婦の一方が、婚姻前から有していた、あるいは、婚姻中に夫婦の協力とは関係なく手にいれた財産。財産分与の対象にならない。
・内容証明郵便:相手に送付した郵便の内容を、郵便局が証明してくれる郵便。文書の枚数等にもよるが、1回差し出すにあたり、概ね2000円程度の費用がかかる。慰謝料を請求する際などに用いられるが、慰謝料の請求にあたり、常に内容証明郵便による必要・実益があるわけではない。しかし、内容が証明されることから、正式な請求であること(さらには差出人の強い気持ち)を示すために用いられることが多い。
・調停 【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続【その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。

 

【コラム】不貞慰謝料の金額の交渉にあたって
不貞の慰謝料の相場は概ね200万円程度ですが、1人でこれを全額支払った場合には、負担部分に応じて不貞相手に求償することができます(3-5節参照)。そのため、慰謝料の金額の交渉にあたり、相手から求償をしないことを条件に、財料の全額を負担部分に応じて減額して欲しいという主張(大抵、半額にして欲いという主張)がなされることがあります。

200万円という金額は大金で、相手に支払い能力がないというケースは少なくありません。また、配偶者の不貞相手から慰謝料を全額回収したとしても、不貞相手から配偶者に求償権が行使されると、あなたが配偶者と離婚するつもりがない場合には、結局同じ財布に慰謝料が入り、そこから求償分を支払う(家計は1つのことが多いと思います)ことになります。

こちらにとっても、どうせ回収できなかったり、話がこじれたりするよりも、100万円の回収+将来の紛争の芽を摘む、という選択は合理的です。とはいえ、こちらから求償権の制限ありきで話を進めると、相手に離婚するつもりがないことを見透かされ、慰謝料はもっと低くなるのではという反論を受けることになります。そのような場合には、離婚するか迷っているので念のためですであるとか、養育費をきちんと支払ってもらうために、求償権の制限を通じて配偶者を経済的な破綻から守るためです、等の再反論をすることになります。

 

話は変わりますが、配偶者の不貞相手に慰謝料請求をすると、配偶者が「慰謝料を請求するなんて最低」(不貞をしていた妻)、「俺が慰謝料を全額支払う」(不貞をしていた夫)と言い出すことがあります。これらの発言から「まだ、不貞相手とつながっているのか!?」(財謝料請求をしていることを知っているというのは、結局はそういう意味です)あるいは、「まだ、相手を庇うの!?」という話になり、より一層夫婦間の不和が広がるケースは少なくありません。

不貞をした側で、今後、配偶者との関係を良好にしたいと思っている場合には、自分の発言の持つ意味に充分注意してください。「俺が慰謝料を全額支払う」と言うくらいなら、黙って不貞相手にお金を渡したほうがマシです。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

 お問い合わせ
contents
↓応援ポチ感謝です↓
にほんブログ村 士業ブログ 行政書士へ
様々な法律知識