遺言、相続に強くなる!

3-4 相続税がかかるかどうか確認する


相続税というと、自分には無縁だと思っている人が多いのではないでしょうか。従来、相続税が課税されるのは相続発生件数の4%程度でしたが、2015年1月1日以降、相続税の基礎控除額が引き下げられた結果、1年間で8%台に増加したといいます。

一般家庭では相続税の心配はないと思われがちですが、将来本当に相続税がかかる可能性がないか、念のために確認しておくと安心です。特に、東京23区などの都市部で不動産を所有している人は、注意が必要です。

●相続税は基礎控除を超えてはじめて課税される
相続税は、遺産から葬式費用や債務を差し引くなどして求めた金額(正味の遺産額)が、基礎控除を超えた場合に課税されます。
基礎控除とは、簡単にいうと、財産がここまでなら相続税がかからないという金額のことです。たとえば、相続人が3人の場合、以下のように、正味の遺産額が4,800万円を下回っていれば、相続税はかかりません。

●遺産が高額でも相続税が安くなることがある
一見すると、正味の遺産額が基礎控除を上回る場合でも、相続税法上の各種の特例を利用すると、結果的に課税されなかったり、税額が軽減されることがあります。ただし、これらの特例は相続税の申告期限までに遺産分割されることが要件となっているので、スムーズに遺産分割できないと利用できない可能性があります。

●基礎控除の計算方法
計算式:3,000万円+600万円×法定相続人の数

●配偶者控除
「配偶者控除」は、配偶者が相続した正味の遺産額が1億6,000万円または法定相続分のどちらか高いほうまでであれば、相続税がかからないという特例です。たとえば、正味の遺産額が3億円で、配偶者の法定相続分が2分の1の場合は、下記のように1億6,000万円まで非課税となります。

1億6,000万円>法定相続分1億5,000万円
⇒1億6,000万円か法定相続分のどちらか高いほうまでは税金がかかりません

●小規模宅地の特例
遺産のうち預貯金などの金融資産には、相続税上の特例が特にないため、そのままの金額で評価されますが、不動産についてはさまざまな特例があるため、結果として評価額が低くなり、相続税があまりかからないことが多いものです。代表的なものが、「小規模宅地等の特例」です。

これは簡単にいうと、故人が生前、住居や事業に使用していた土地を相続した場合、要件を満たせば、土地の評価額を50~80%減額できるというものです。たとえば居住用の土地については、故人と同じ家屋(二世帯住宅も可能)に同居していた人が相続し、相続税の申告期限まで保有・居住を続けていることが要件となります(配偶者の場合は、同居していなくても構いません)。もし、故人が亡くなるまで介護施設に入っていた場合でも、自宅を第三者に賃貸していなければ特例を受けられる可能性があります。

●節税対策は事前によく調べて慎重に
さまざまな特例を利用しても相続税がかかりそうな場合は、節税対策を検討することになります。相続人への生前贈与や、生命保険を使った節税対策がポピュラーですが、読者の皆さんも、これまでにさまざまな節税対策を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

ただ、生半可な知識でやると将来相続人が困った目にあいかねないので、しっかりと調べたうえで、税理士に相談するなどして慎重に行うようにしてください。よくある節税対策は、次のようなものです。

●贈与税の基礎控除の範囲内での暦年贈与
年間110万円までなら贈与税がかからないから、毎年子どもや孫にその範囲内で贈与しよう。

<ここに注意!>
贈与税の基礎控除は年間110万円なので、110万円までなら贈与税がかからないのが原則です。しかし、毎年、特定の相手に110万円ずつ贈与を続けていると、税務署に、「最初からまとまった金額をあげるつもりだった(定期贈与)のではないか」と疑われてしまい、贈与税が課されるおそれがあります。また、通帳を親が管理している場合は名義預金と思われる可能性もあるので、注意が必要です。
なお、子どもに生前贈与をした後、3年以内に親が亡くなると、贈与した金額は相続税の対象になります(生前贈与加算)。節税対策はまだ親が元気なうちに、十分時間をかけて行うようにしましょう。

●子どもや孫への一定目的の贈与
子どもや孫にまとまった額の教育資金や結婚資金を残してあげたい

<ここに注意!>
相続人ではない孫に遺贈した場合、相続税が通常の2割増しになります(孫を養子にした場合も同じ)。
また、遺贈の場合、子どもや孫がお金を必要とする時期にタイミングよく相続が発生するとは限らないので、必要なときに有効活用してほしい場合は、遺言書によるのではなく、贈与の目的に応じて税法上の特例を利用した生前贈与をするのがいいでしょう。たとえば、教育資金(上限1,500万円)や結婚・子育て資金(同1,000万円)の「一括贈与の非課税制度」、「住宅資金贈与の非課税の特例」(同3,000万円)などがあります。

【One Point】相続は節税以外のことも考慮して
税理士に節税対策を相談すると、当然ながら税金を最小限に抑えるためのことを最優先にした回答がなされます。それをそのまま実行した場合、将来何らかの不都合が生じないか検討したほうがいいでしょう。たとえば、相続税の基礎控除額を増やすために孫と養子縁組した場合、将来、養子と仲違いしたとしても、簡単に養子縁組を解消することはできません。遺産相続については、税理士だけでなく弁護士や司法書士など他の士業からのアドバイスも受けて、複数の視点から検討することが大切です。

【One Point】一代飛ばして相続させれば節約になる?
将来すぐにまた相続が発生するんだから、配偶者ではなく子どもに財産を相続させたほうが費用を節約できるんじゃないかな?

確かに相続が発生すると、相続税だけでなく、不動産の名義変更にともなう税金や手数料もかかるため、将来近いうちにまた相続が発生しそうな場合は、配偶者ではなく、子どもに相続させたほうが費用を節約できるとも考えられます。

しかし、片親が亡くなった時点(一次相続)では、配偶者に対する優遇措置があるため、残された配偶者がたくさん財産を相続したとしても、あまり相続税がかからない可能性が高いのです。

それに対し、残された配偶者が亡くなった時点(二次相続)では、配偶者に対する優遇措置が受けられないため、相続税が高額になる可能性があります。費用を節約したいときは、一次相続・二次相続でかかる相続税や登記費用をよく検討してからのほうがいいでしょう。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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