『離婚のツボとコツ』

3-3 私が原因で離婚する場合には何も請求できないのでしょうか?


<このままでは子どもと共に路頭に迷ってしまいます>
私の不貞が原因で、協議離婚することになりました。相手には、今すぐ家から出て行ってくれと言われています。さらに、慰謝料も請求されています。もちろん、不貞については責任を取らなくてはならないと思っています。ただ、子どもは私が育てることになっており、このままでは、子どもを路頭に迷わせてしまいます……

<話し合いのコツ>
●養育費について
離婚についての責任があなた自身にある場合、慰謝料を支払う義務があります。しかし、財産分与や(あなたが子どもと一緒に暮らす場合) 養育費は、離婚についての責任の有無とは関係なく請求することができます。

実際に養育費を請求するにあたっては、あくまでも養育費は子どものためのもので、その支払は2人の間の事情に影響されない、ということをきちんと伝えて支払ってもらうことになります。とはいえ、理屈としてはそうでも、実際に非がある側としては、なかなか強く言いにくいかもしれません。

そのような場合には、自分の言っていることが、少なくとも法律上は正しいということを相手に理解してもらうために、相手に法律相談に行って来てもらう、という方法もあります。また、調停を利用して、調停委員という第三者に仲裁してもらうという方法もあります。

なお、養育費の請求は、離婚後にすることもできます (3-13節参照)。ただし、離婚後に養育費の話し合いをすることは、あらゆる面でデメリットが多く、どうしても今すぐに離婚だけでも成立させたいという場合を除き、あまりお勧めしません。

●財産分与について
財産分与は、婚姻中に形成した財産が対象となりますので (3-2節参照)、細かいことを言えば、全ての預貯金の口座を確認し、保険の解約返戻金を保険会社に問い合わせ、勤務先に社内積立金額を確認し、所有株式の時価額を調べ、不動産の価値を発定し、さらに家財道具をどうわけるのか、などを考えることになります。

これらを厳密に行おうとすると、とてつもない手間がかかります。離婚に伴う慰謝料や財産分与は、離婚後に請求することもできますが (3-13節参照)、一般的には、離婚の時に一緒に決めてしまうことがほとんどです。離婚することは決めたのに、財産分与や慰謝料の清算が終わらないからいつまで経っても離婚が成立しない、ということになってしまっては、お互いにとってストレスだろうと思います。

そのような場合には、概算で話をつけてしまうことも考えられます。

例えば、慰謝料と財産分与の金額が概ね同じくらいになると予想されるのであれば、慰謝料と財産分与について、お互いに請求し合わない、という解決方法も考えられます。特に、相手の方に、財産分与のための調査が手間だ、早く離婚を成立させたい、慰謝料の金額について話し合いをするのがストレスだ、という気持ちが強くある場合には、予想される慰謝料と財産分与の額の間にそれなりに(慰謝料の方が高いという)差があっても、お互い請求し合わない、という形で決着する可能性は少なくありません。

なお、概算で話をつけるという提案は、可能な限り早い時点でした方が良いと思します。相手が概算での解決に応じてくる典型的な理由は、

(1) 慰謝料請求や財産分与のための事務手続が面倒
(2)早い時点では具体的な金額の目処がつきにくい(概算での解決に伴う損を実感しにくい)
(3) 金額などについて争いたくない(最後くらい気持ちよく別れたい)
(4)早く離婚したい

といったものであり、時間が経過すれば経過するほど、相手が概算での解決に応じるメリットは失われていきます。

もちろん、早い時点では、こちらも正確な予想を立てることはできません。それでも可能な限り正確な予想を立て、そして最後は思い切ることによって、より有利な条件で離婚を成立させることができるかもしれません。早期に可能な限り正確な予想を得るためにも、早い時点で弁護士に相談してみると、結果として迅速に離婚に関する話し合いがまとまるかもしれません。

もちろん、きっちり決着をつけることにメリットを感じる性格の方もいらっしゃるため、相手の性格を考えながら、話し合いの進め方を考えていくことになります。

◎話し合いのコツ ポイント
養育費を請求しにくい場合には、弁護士や調停を上手く利用して。
手間をかけずに早期に決着できるということ自体が交渉材料になり得ます。

<法律上のツボ>
●同じお金の問題でも、請求を認める趣旨が違う
離婚の際に話し合うべき金銭問題は、簡単に言うと3つあります。養育費、慰謝料、財産分与です。

また、離婚の際に話し合うべき問題は、大きく分けて、2人の間の問題と、子どもの問題の、2つの種類の問題に分けることができます。

養育費の問題は、今後、子どもが健やかに育っていくために必要なお金を、親としてどう負担していくのか、という子どもの問題です。どちらのせいで結婚生活が破綻するに至ったのかという、2人の間の問題に関する事情には、影響されません。

実際には、養育費を管理するのは一緒に暮らしている親であり、子どものためのお金とは思いにくく、釈然としない気持ちもあるかもしれません。しかし、例えば、親が不貞した場合には養育費を支払わなくてよいとすると、親の責任を子どもに転化することになってしまいます。

そのため、冒頭のケースのような場合であっても、相手に養育費を請求することができます(2-5節参照)。

他方で、冒頭のケースのような場合、あなたの不貞で相手は精神的苦痛を受け、また、離婚に至っているのですから、相手はあなたに対して慰謝料を請求することができます。とはいえ、慰謝料と養育費とを相殺することは認められていません。すなわち、あなたが慰謝料として合計100万円、1月あたり10万円を10回支払うということになり、相手には毎月10万円の養育費を支払ってもらうといった形で話し合いがついた場合に、最初の10ヶ月間は養育費を支払ってもらえないということはありません。

さらに、法律上は、あなたが感謝料の支払いを滞納しても、相手が養育費の支払いを止めることはできません。

最後に、財産分与とは、簡単に言ってしまうと、婚姻中に形成した財産は、2人のう制度です。あなたが、10年前からずっと不貞をしていて家にも寄り付かなかった、というのであれば話は別ですが、不貞をしながらもきちんと家計にお金を入れていた場合、あるいは、内助の功に努めていた場合には、あなたも財産の形成に一役買っているわけですから、当然、財産分与を請求する権利があります。

あなたの不貞という行為の金銭的な責任は、あくまで、慰謝料という枠内で問題になります。
とはいえ、財産分与については、これを請求した上で、話し合いにより、慰謝料の一部または全部と、合意による相殺をすることになることが多いと思います。

◎法律上のツボポイント
一見、同じお金に関する請求権ですが、離婚の話し合いに当たっては違いに注意して。

【用語の解説】
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・慰謝料:精神的な苦痛に対する損害賠償(金銭請求)。詳細については、3-1 節参照。
・財産分与:婚姻中に夫婦で形成した財産を、離婚に伴い分配・清算する手続き。詳細については、3-2節参照。
・調停【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続【その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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