遺言、相続に強くなる!

3-2 遺言書に書けること、書けないこと


もしかするとあなたは、遺言書のことを、書けば何でも実現する「魔法の紙」のように思っていないでしょうか?しかし実際には、遺言書に書けば何でもその通りになるわけではありません。たとえば、「私の死後、長男は私の事業を継ぐように」と書いても法的な効果が生じないため、長男はその通りにする必要はないのです。

●書けるのは、「遺産」と「人」に関すること
遺言書に書いて効果があるのは、おおざっぱにいうと、「遺産分けに関すること」、「人に関すること」の2つです。ここでは主なものをご紹介します。

●遺産分けに関すること
①相続分の指定(民法902条)
相続人がどれだけ遺産を相続するかという割合(相続分)を自ら指定できます。これを「指定相続分」といいます。たとえば、配偶者の法定相続分が2分の1の場合に、それを3分の2やゼロにしたりできます。
もし、そのことにより配偶者の遺留分が侵害された場合、配偶者は他の相続人に対して遺留分を請求することが可能です。

【ポイント] 相続分を指定・・・・・…法定相続分と違う割合で遺産分けできる

「文例]
遺言者は、遺言者の一切の財産について、妻に6分の4、長女に6分の1、長男に6分の1の割合で相続させる。
※具体的に誰が何を相続するかは、3人が話し合って決めることになります。

②遺産の分割方法の指定
「長男に不動産と預貯金を相続させる」というように、相続人に対して、遺産の分割方法(割り振りかた)を指定できます。
このように、特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言書がある場合は、相続人全員による遺産分割協議をする必要がなく、原則その人1人で不動産の名義変更や預貯金の解約が可能になります。

[ポイント] 分割方法を指定……原則、相続人全員での遺産分割協議は不要

「文例]
遺言者は、別紙遺産目録記載の不動産を、長男○○に相続させる。
・遺言者は、遺言者の有する〇〇銀行支店の預貯金すべてを長男○○に相続させる。
※具体的に誰がどの遺産を受け取るべきかを記載します。
③遺贈
遺贈は、遺言により死後、特定の人に財産を無償であげることです。相続人・相続人以外の人、個人・法人など、相手を問いませんが、相手が相続人の場合は、「遺贈する」ではなく、「相続させる」と書くのが通常です。そこで、以下の事例では相続人以外を念頭に置いて説明します。なお、遺贈する人を「遺贈者」、相手を「受遺者」と呼びます。・特定遺贈
遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類あります。特定遺贈は、特定の財産を遺贈することです。死後、財産の所有権は受遺者に移転します。不動産の遺贈の場合、名義変更のための登記は、受遺者単独では行えず、相続人(または遺言執行者) と共同で行う必要があります。

[文例]
・内縁の妻に全財産を包括して遺贈する。
・全財産につき、友人○○と友人△△に2分の1ずっ遺贈する。
•包括遺贈
包括遺贈とは、目的物を特定せず、「全財産」や「全財産の2分の1」など、一定の割合を指定して財産を遺贈することです。誰がどの財産をもらうのか具体的に決まっていないので、遺産分割協議で決めます。
[文例]
・〇〇市〇〇町○番地の土地を遺贈する。
・〇〇銀行○○支店の普通預金(口座番号〇〇)をすべて遺贈する。
OnePoint 遺贈の注意点
包括受遺者は相続人と同じ権利や義務をもつため、借金がある場合はそれも引き継ぐことに注意が必要です。
●人に関すること
①推定相続人の廃除
遺言により、特定の相続人に財産を相続させないようにすることができます。ただし、単に「財産を相続させない」と書いても効果はありません。また、遺言書でその人以外に全財産を相続させることも可能ですが、その場合は遺留分の侵害が問題になってしまいます。もしその人に遺留分もあげたくないという場合は、「推定相続人の廃除」をすれば相続人でなくならせることができます。
ただし、廃除は相続人に大きな不利益をもたらすので、単に、その人が嫌いだからという理由では認められません。日頃から遺言者に対して暴力を振るう・暴言を吐く・借金を肩代わりさせるなどの問題行動を繰り返し、「廃除しても無理はない」と思われる理由が必要です。
廃除の方法は、本人が生前、家庭裁判所に申し立て 遺言書に書いて死後、遺言執行者が申し立てることになります。証拠集めの必要があるので、事前に弁護士に相談することをおすすめします。また、生前のうちに廃除が認められた場合、その後、行状が改善したなどの理由で、廃除を取り消すように遺言することもできます。
②子どもの認知
法律上、結婚(入籍)していない男女の間に生まれた子どもを「非嫡出子」といいます。この場合、父親が子どもを認知すると法的な親子関係が生じ、子どもが父親の財産を相続できるようになります。生前に認知することが難しければ、遺言により認知することも可能です。この場合は、死後、遺言執行者が市役所に認知の届出を行う必要があります。
③遺言執行者の指定
これまで何度も出てきた遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことです。せっかく遺言書を書いたのに、相続人がその内容を無視して勝手なことをしないよう、しっかりと遺言を執行してくれそうな人を遺言執行者に指定しましょう。
未成年者と破産者以外は、誰でも遺言執行者になれます。受遺者を指定することも可能ですが、認知や廃除など専門的な知識が必要な遺言をする場合は、弁護士を指定したほうが安心です。
④祭祀の主宰者の指定
仏壇・仏具やお墓、家系図などを引き継ぐ人を「祭祀の主宰者」といい、遺言で指定できます。おそらく、お葬式で喪主をつとめる人が祭祀の主宰者に指定されることが多いでしょう。もし、葬儀後に費用を誰が払うかでもめた場合は、喪主が支払うことになる可能性が高いので、祭祀の主宰者にはその分、財産を多めに相続させるといいかもしれません。
⑥未成年後見人の指定
夫を亡くした妻が小学生の子どもを育てているなど、未成年者の親権者になっている人が、将来、自分の死後に子どもを託す相手(未成年後見人)を遺言で指定できます。
未成年後見人は、その子どもの法定代理人として、監護養育、財産管理、契約等の法律行為を行います。ひとりではなく複数人でもよく、個人ではなく法人を指定することも可能です。もし未成年後見人だけでは不安なら、さらにその人を監督する人(未成年後見監督人)も指定できます。いずれも死後、遺言執行者が家裁に申し立てを行います。

森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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