『相続実務のツボとコツ』

3-14 相続税対策で気を付けなければいけないことはありますか?


<相続税対策の王道「生前贈与」で失敗しないためのポイント>
「生前贈与」で失敗しないため、特に気を付けておきたいポイントを2つご紹介します。

①贈与契約書の作成などをしっかりと行っておくこと
前節で解説した通り、贈与という行為は、財産を「あげた」「もらった」という両者の意思表示があって成立する契約です。したがって、親が子ども名義の預金口座を開設し、勝手にお金を預けていても、それは被相続人の財産(名義預金)として扱われ、相続税が課税される可能性が高いです。また、子どもに知らせずに財産を移転させたとしても、それは「もらった」という受諾がないため、「贈与」が成立しません。

そのため、贈与を行うときは、贈与契約書の作成等、しっかりと証拠づくりを行っておく必要があります。なお、3-7節で110万円贈与のデメリット等を解説していますので、あわせてご確認ください。

②不動産の贈与を行うなら建物だけにしておくこと
土地や建物のうち、贈与を行うなら建物のみにしておいた方が良い場合が多いです。なぜなら、土地について小規模宅地等の特例を受けられるのは「相続又は遺贈」に限られており、土地を贈与した場合は小規模宅地等の特例の適用を受けることができないからです(租税特別措置法第69条の4第1項)。

また、たとえば賃貸用不動産(貸しアパート等)を子どもに贈与する場合においても、相続税対策においては、やはり一般的に建物のみを贈与することが望ましいです。なぜなら、不動産の賃貸収入を生み出すのは、土地ではなく居住部分である建物だからです。

不動産の賃貸収入があると被相続人にどんどん財産が溜まっていき、亡くなる際にかかる相続税も多額になっていきます。そのため、不動産の賃貸収入を生み出す建物を早期に子どもに贈与し、相続税の上昇を抑えるケースがあります。

ただし、贈与するのは賃貸用不動産のうち建物だけにしておき、土地は相続で子どもに移転させる方が、税負担が少なくすむことが多いです。なぜなら、3-7節で解説した通り、基本的に相続税より贈与税の方が高いこと、また、3-3節で解説した通り不動産取得税と登録免許税が、相続より贈与の方が多額にかかるという特徴があるからです。

<二次相続を考えていないケース(配偶者に財産をわけすぎたケース)>
配偶者が相続によって財産を取得した場合、「配偶者の税額の軽減」によって、1億6,000万円までの金額であれば相続税の負担なく配偶者に財産を遺すことができます。

これを利用し、相続が起こった際、子どもがいるにもかかわらず、配偶者に全財産を移転させて相続税の支払いを抑えるケースがあります。しかし、その場合、配偶者がいくら財産を持っているかも検討すべきポイントです。なぜなら、夫婦ともに高齢であれば、夫もしくは妻が亡くなった後、すぐにその配偶者(妻もしくは夫)が亡くなるという2回目の相続 (二次相続)が起こる可能性があるからです。

相続税は、亡くなった時点の財産が多ければ多いほど多額にかかる税金です。夫が全財産を妻にのこした場合、夫の死亡にかかる相続税は、配偶者の税額の軽減によって生じない (0円) かもしれません。

しかし、その後に妻が死亡した場合、妻がもともと持っていた財産に、夫の財産が加わった金額を基準にして、妻の死亡による相続税が課税されます。妻が亡くなったときは、夫の財産+妻の財産に対して相続税
が課税されるため、夫の相続時に相続税が課税されなかったとしても、妻の相続の際(二次相続)に多額の相続税がかかる可能性があります。

したがって、配偶者が高齢の場合は二次相続まで踏まえ、夫婦2人の相続税のトータルを考えた方が良いでしょう。

<孫に遺言で財産を遺すケース>
遺言によって財産を孫に遺す場合、通常、相続税の二割加算の対象になります(相続税法第18条)。二割加算とはその名の通り、相続税の支払いが二割増える取り扱いです。子どもが存命であるにもかかわらす孫に財産を遺贈した場合、世代を飛び越して1回分の相続税の負担を免れることになるため、二割加算の取り扱いによって相続税の負担が増えることになります。

したがって、もし孫に財産をのこしたい場合は、亡くなったときに遺言で財産をあげるのではなく、生前にコツコツ贈与を行っておく方が、少ない税負担で孫にお金をわたすことができます。

ただし、孫にも財産をあげていると、孫がいない子どもから、「私もその分お金が欲しい」と言われたり、老後の生活資金が危うくなる可能性もあります。相続税の節税は、生活資金に余裕がある場合にのみ行うことが重要です。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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