『相続実務のツボとコツ』

3-13 税務調査って何をどこまで確認されるの?


<税務調査って何?>
税務調査というのは、税務署の調査官が、提出した申告書の内容に漏れや誤りが無いか確認しに来る手続きのことを言います。

相続税の税務調査は、国税庁のデータによると、相続税申告のおよそ10件に1件の割合で行われています。一般的には財産額が多ければ多いほど税務調査が来る可能性は高くなりますが、たとえば過去に被相続人が子どもに贈与をしている場合は、その確認のための調査が行われるケースもあり、税務調査の有無は必ずしも財産額によって決まるものではありません。なお、相続税の税務調査は、相続税の申告が終わったあと1年2年ぐらい経過してから来るケースが多いです。

相続税の税務調査が行われた場合、85.7%と高い確率で申告書の内容について誤りを指摘されています。税務調査によって財産の申告漏れなどが発覚すると、本来支払うべき税金と、追加で罰金(加算税)を支払うことになるため、相続税の申告書を作成する際は、税理士に包み隠さず情報を話し、財産の申告漏れが無いようにしなければなりません。

<税務調査では何を確認されるの?>
税務調査は、一般的に調査官2名体制、朝から夕方まで1日がかりで行われます。世間話などから相続人に質問を始め、亡くなった方やその家族の生活状況などを探り、調査に必要な情報の収集が行われます。また、金庫の中身の確認や、タンスの引き出しの中の確認を要求されることもあります。

ちなみに、税理士に申告書の作成を依頼したとしても、税務調査の中で財産の申告漏れが出てくることも少なくありません。なぜなら、相続人から税理士に伝えていなかった情報や、亡くなった方が妻や子どもにどんな財産があるかを伝えていなかったため、相続人も把握しきれていなかった情報が税務調査の中で出てくることがあるからです。

特に税務調査で指摘されやすい事項としては、「名義預金」が挙げられます。名義預金とは、簡単に言えば、家族名義の預金口座のうち、実質的に亡くなった方の財産であるものを言います。たとえば、次のような預金です。

名義預金の一例
・子どもや孫のために預金口座を開設してお金を預けていたが、子どもや孫がその預金口座の存在を知らなかった場合
・子どもの預金口座を開設してお金を預けていたが、通帳や印鑑の管理を亡くなった親が行っていた場合

こういった預金は、口座名義が子どもや孫のものであっても、亡くなった親の財産として取り扱われます(つまり、相続税がかかります)。なぜなら、預金口座を親が作っただけであり、贈与が成立していないからです。民法第549条では、「贈与」について、次の通り規定しています。

「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生する。」

親としては「子どもの財産として貯金した」、「子どもに贈与した」という認識であっても、子どもが預金口座の存在を知らなかったり、通帳の管理を親が行っている状況であれば、子どもによる贈与の受諾が行われていないと考えられます。そのため、単に子ども名義の預金口座を作ってお金を預け入れただけでは、その預金は親の財産として扱われ、相続税が課税されます。

このような名義預金は相続税の申告で漏れやすく、税務調査の指摘事項として上がりやすい項目です。税務署も様々な確認方法をもっていますが、たとえば、贈与契約書を税務調査が入る直前に偽造したとしても、調査官によって筆跡の確認や印鑑の印影の確認が行われてしまいます。その際、印鑑の空押しで印影が写る場合、最近使用したと推定され、名義預金等の判定を行う際の材料とされることもあります。

もちろん、偽造した場合には重加算税といって、特に重い罰金が課せられる可能性がありますので、絶対にやってはいけません。

<贈与の事実はハッキリとさせること>
名義預金を回避するためには、親族間であっても贈与契約書の作成を行う等、贈与の事実をハッキリとさせることが大切です。

贈与は、「あげた」「もらった」の、両者の意思表示があって始めて成立する契約です。親の死後、贈与に関する証拠がなく、子どもや孫に贈与の説明も行っていない状況では、贈与が成立していることを証明するのはむずかしいでしょう。

贈与を行う際は、子どもや孫と話し合いを行い、贈与契約書の作成を行うと良いでしょう。また、預金通帳や銀行印の管理も子どもや孫に行ってもらうことが望ましいです。事前に税理士等の専門家に相談し、ケアしておくと良いでしょう。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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