『相続実務のツボとコツ』

3-11 相続税対策はいつから始めるべきか?


<相続税対策はいつから始めるべきか?>
相続税対策は、亡くなってから行うものではありません。生前に、かつ、認知症になる前に行う必要があります。相続税の対策方法には、3-4節で解説した通り、生前贈与、不動産の購入などの方法があります。

これらの方法は、当然ながら生きているうちにしかできませんが、加えて言えば認知症になる前に行わなければなりません。なぜなら、民法第3条の2で、次の通り定められているからです。

「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」

認知症になってしまうと意思能力が認められないため、法律行為に制限がかかってしまいます。生前贈与をできず、遺言書を書くことも、不動産の売買契約を結ぶこともできません。認知症となった方の法的サポートを行うため成年後見人(参照。2-2節)をたてるケースはありますが、後見人は、認知症となった人(被後見人)の財産の管理の役割があります(民法第858条)。

そのため、生前贈与については被後見人の財産を減らす行為のため認められず、また、不動産の売却について家庭裁判所の許可が必要になったり、ハードルが高くなります。したがって、相続税対策は認知症になる前に行わなければなりません。

<65歳以上の約4人に1人が認知症又は予備軍>
「厚生労働省が今和元年6月20日に公表した資料に基づくと、「65歳以上高齢者のの4人に1人が認知症の人又はその予備群」とされており、今後も増加が見込まれています。

「65歳以上の4人に1人が認知症又は予備軍というと、身近に感じられるのではないでしょうか。もちろん、65歳未満の方でも認知症になる可能性があり、70代、80代になれば認知症になる確率はどんどん高くなります。70代、80代になってから相株について考えようと思っていても、認知症になってしまえば対策を行うことができなくなってしまいます。

そのため、60代であっても、定年退職し、老後の財産状況に見通しが立ったのであれば、遺言書の作成や相続税の節税などの対策を考えても早すぎることは無いと言えます。

<相続税対策は、若いうちに行ったほうが効果が大きい>
相続税対策は、若いうちに行った方が節税効果が大きいです。たとえば、現金の110万円贈与による相続税対策を行う場合、1年間では110万円しか贈与を行うことができませんが、10年間続けた場合は110万円×10年で1,100万円。20年続けることができれば2,200万円を、相続税・贈与税の負担なく、子どもや孫に移転することができます。

このように、相続税対策を始める年齢が若ければ若いほどとれる方法も多く、相続税の節税効果を大きくすることができるため、早めに取り組むことが重要です。

なお、一度若いうちに遺言書を書いたとしても、歳を重ねてから書き直したいと思った場合には、遺言の撤回を行い、再度書き直すことができます(民法第1022条、民法第1023条第1項)。したがって、60歳、65歳と若いうちに遺言書を書いたからといって、それに必ずしも縛られるということではありません。一度、今の気持ちを整理して仮の遺言書を書き、後からまた書き直せば良いのです。

※1 厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について(参考資料) 令和元年6月20日」
https://www.mhlw.go.jp/contentr12300000610mmf)


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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