『離婚のツボとコツ』

3-10 生命保険は財産分与でどう扱われるの?


<こんなケース>
離婚を考えていますが、家や車、預貯金などといった財産は、特にありません。
ただ、私は結婚前から生命保険に入っており、結婚した時点での解約返戻金は10万円、現在の解約返戻金は30万円です。

 

<話し合いのコツ>
●意外と取り扱いが難しい
生命保険をはじめとする保険商品は、財産分与にあたって、解約返戻金相当額の預貯金と同じように取りっていくことになります。ただ、解約返戻金は、あくまで保険を解約した時に支払ってもらえるお金にすぎず、今すぐ自由にできるお金ではありません(もちろん、契約者貸付という制度はあります)。

 

そして、保険は、一度解約してしまうと、再度加入することができなかったり、再度加入することができたと
しても保険料が上がってしまう可能性があります。資産運用としてみた場合の条件も悪くなります。

 

そのため、財産分与の際には、保険を解約しない代わりに、解約返戻金相当の財産を取得した、という扱いにすることも少なくありません。

このように、保険を解約しない方法もある、ということを知っていただいた上で、離婚の際に改めて考えていただきたいのは、「なぜその保険に入っていたのか」です。保険は高い買い物です。仮に、月1万円の保険料を30年間支払うのであれば、その支払い総額は360万円にもなります。保険は、漠然とした不安から闇雲に入るべきものではありません。きちんとライフプランニングをし、そこで明らかになったリスクに積えるために入るべきものです。婚姻中と離婚後では、自分のライフプランも備えるべきリスクも、大きく変化しているはずです。

財産分与の話し合いの中で、今加入している全ての保険について、そのまま加入し続けたい、という希望を持たれる方もいらっしゃいます。離婚後の生活に対する不安も大きいはずですし、その気持ちはよく理解できます。しかし、保険に加入し続けるということは、保険料という固定費が生じ続けることを意味します。そして、あくまで一般論ですが、共働き夫婦や専業主婦・主夫は(すなわち専業主婦・主夫家庭の、収入を得ていた側以外は)、離婚により、以前より生活が苦しくなる場合がほとんどです。

 

適切な保険への加入は人生のリスクを軽減してくれますが、過剰な保険への加入は、生活費を圧迫することになり、かえって人生のリスクを増すことになります。

現在入っている保険が、離婚後も本当に必要なものなのか、さらには、離婚によって、必要な保険が別途生じていないか、きちんと専門家に相談された方が良いと思います。

 

◎話し合いのコツポイント
離婚後もその保険が必要か、よく考えて!

 

<法律上のツボ>
●保険は預貯金と同じ扱い
保険は、財産分与にあたって、解約返戻金相当額の預貯金と同じように取り扱っていくことになります。

とはいえ、結婚前から加入している保険について、結婚前に積み立てた部分は婚姻期間中に夫婦の協力で形成した財産ではありませんので、財産分与の対象とはなりません。

例えば、冒頭のケースであれば、30万円(現在の解約返戻金。基準時については本節のコラム参照) - 10万円 (結婚した時点での解約返戻金) = 20万円が夫婦の協力て形成された部分ということになります。したがって、20万円が財産分与の対象財ということになります。

保険を解約するのであれば、保険会社から受け取った30万円の解約払戻金の中から、財産分与の対象となる20万円の半分である10万円を相手に渡すことになります。

また、保険を解約しないのであれば、財産分与の対象となる20万円の半額の10万円を相手に支払うことになります。他に財産分与の対象となる預貯金が20万円あるということであれば、そちらを全部相手に取得してもらうということになりますが、冒頭のケースでは、他に財産分与の対象となる財産がないということですので、自分の特有財産から10万円を支払うことになります。

ちなみに、解約返戻金の発生しない、いわゆる掛け捨て型の保険は、財産分与の対象とはなりません。

生命保険の財産分与にあたっては、解約返戻金の金額を知る必要があります。また、離婚に伴い、受取人を変更する必要もあるかもしれません(離れて暮らすことになる子どもがいる場合に、その子どもを受取人にするというのも素晴らしい選択肢だと思います)。

解約返戻金の金額の確認や、受取人変更等の事務手続きのためには、その保険に加入した時のプランナーや、代理店に問い合わせる必要があります。解約返戻金の金額がわからないと財産分与の話し合いを進めることができず、結果として、離婚に関する話し合いが長引いてしまいます。

 

できるだけ早く問い合わせるようにしてください。

 

稀に、解約返戻金の金額を教えて欲しいと告げると、解約しない方が得ですよと言われ、解約返戻金の金額を教えてもらえない場合があります。そのような場合には、解約するしないに関わらず、財産分与の計算のために、結婚した時点と現在の解約返戻金の金額の確認が必要なのだということを伝えてください。

 

◎法律上のツボポイント
ブランナーや代理店に出来るだけ早く問い合わせを!

 

◎用語の解説
・財産分与: 婚姻中に夫婦で形成した財産を、離婚に伴い分配・清算する手続き。詳細については、3-2節参照。
・特有財産:夫婦の一方が、婚姻前から有していた、あるいは、婚姻中に夫婦の協力とは関係なく手にいれた財産。財産分与の対象にならない。

【コラム】財産分与の基準時
日常生活を送っていれば、手元のお金は減ったり増えたりします。また、本節で扱っている生命保険の解約返戻金は、保険料を支払っている期間が長くなれば長くなるほど増えていきます。

このように、夫婦の財産は常に変動します。そのため、財産分与にあたっては、一定の日を基準にして清算を行う必要があります。A銀行の預金は最後に記帳した半年前の残高で清算を、B銀行の預金は最近記帳した際の残高で清算を、というわけではなく、その基準日時点の残高で清算を行うことになります。

 

そして、財産分与が婚姻期間中に夫婦の協力で形成された財産の清算であることから、その基準日は、離婚時あるいは別居時のいずれか早い時点(要するに、協力関係が解消された時点)とすることが一般的です。

 

例えば、平成27年4月1日に別居し、平成27年9月31日に離婚した場合には、平成27年4月1日時点での預金残高や解約返戻金を基準に財産分与を行う、ということになります。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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