『入管法の実務』

3-1 上陸審査手続


外国人の上陸パターンは、大きく以下の5類型に整理できます。

【外国人の上陸パターン】
A 査証免除国の外国人が、「短期滞在」の在留資格で入国しようとする場合
⇒出入国港で入国審査官に対して上陸許可申請

B 査証免除国の外国人が、「短期滞在」以外の在留資格で入国しようとする場合(再入国許可を得ている場合を除く。)
⇒入国管理局に対して在留資格認定証明書交付申請→ 在留資格認定証明書を添付して、在外日本公館に対して査証発給申請→ 査証を受けた旅券及び在留資格認定証明書を提示して、出入国港で入国審査官に対して上陸許可申請

C 査証免除国以外の外国人が、「短期滞在」の在留資格で入国しようとする場合
⇒在外日本公館に対して査証発給申請→ 査証を受けた旅券を提示して、出入国港で入国審査官に対して上陸許可申請

D 査証免除国以外の外国人が、「短期滞在」以外の在留資格で入国しようとする場合(再入国許可を得ている場合を除く。)
⇒入国管理局に対して在留資格認定証明書交付申請→ 在留資格認定証明書を添付して、在外日本公館に対して査証発給申請→査証を受けた旅券及び在留資格認定証明書を提示して、出入国港で入国審
査官に対して上陸許可申請

E 再入国許可を得ている場合
→再入国許可証印を受けた旅券を提示して、出入国港で入国審査官に対して上陸許可申請
※本図における「再入国許可」には、みなし再入国許可を含みます。

Eの場合は、特段の厳格な審査なしに最も容易に上陸できます。
Bの場合は、入国管理局に対しての在留資格認定証明書交付申請(法7の2) が最も重要であり、在留資格認定証明書が交付されれば、通常は問題なく上陸できることになります。

Cの場合は、在外日本公館に対しての査証発給申請が最も重要であり、査証が発給されれば、通常は問題なく上陸できることになります。

Dの場合は、入国管理局に対しての在留資格認定証明書交付申請が最も重要であり、在留資格認定証明書が交付されれば、通常は問題なく上陸できることになります。

(1) 入国審査官による上陸審査
日本国に上陸しようとする外国人は、原則として、出入国港において入国審査官の上陸審査を受けなければなりません(法61・312)。入国審査官の行う上陸審査は、不法入国者、上陸拒否事由該当者及び入国目的に疑義
のある者等、日本国にとって好ましからざる外国人の上陸を阻止し、公正な入国管理(法1参照)を行うために行われます。

日本国に上陸しようとする外国人は、上陸審査を受け、旅券に上陸許可の証印(法9I)を受けることによってはじめて合法的に上陸することができます。上陸審査を受けない外国人は、合法的に上陸することができず、許可を受けないまま上陸すれば不法入国又は不法上陸に該当し、退去強制(法2412) 及び刑事罰(法7OI02)の対象となります。

(2) 上陸のための条件
外国人が上陸を許可されるためには、入管法7条1項により以下の4つの条件(「上陸のための条件」)を満たさなければなりません。それぞれの条件について、後記2で詳述します。

① 旅券及び査証の有効性
有効な旅券で、日本国領事官等の査証を受けたものを所持していること
(法710.61本文・31①)

②活動の非虚偽性、在留資格該当性及び上陸許可基準適合性
申請に係る活動(日本で行おうとする活動)が偽りのものでなく、かつ、日本で行おうとする活動が、入管法に定める在留資格のいずれかに該当すること。また、上陸許可基準の適用のある在留資格については、その基準
に適合すること(法71②)

③在留期間の入管法施行規則の規定への適合性(在留期間適合性)
滞在予定期間が、在留期間を定めた入管法施行規則の規定に適合すること(法71③)

④上陸拒否事由非該当性
入管法5条1項で定める上陸拒否事由に該当しないこと(法710)

ア上陸拒否事由に該当しない者についての羈束性
入管法9条1項の「しなければならない」との文言及び入管法施行規則6条の2第5項本文の「交付するものとする」との文言から明らかなとおり、上陸許可及び在留資格認定証明書の交付は、要件を満たす以上は必ず許可(交付)しなければならない(すなわち、許可しない裁量はない)という意味で羈束行為です(東京地判平21・10・16判タ1337・123)。これらの手続において、法令が明示する要件以外の要件(条件)の設定は一切ありえません(審査要領)。

「外国人から認定証明書交付申請を受けた法務大臣等は、当該外国人の本邦において行おうとする活動が7条1項2号に規定する在留資格に係る上陸条件に適合している場合には、当該外国人が同項に定める同号以外の
上陸の条件に適合しない場合を除き、認定証明書を交付しなければならないのであって、この点に裁量の働く余地はない。」と明言した上記の東京地裁平成21年10月16日判決は確定しており、上陸拒否事由(法5I)に該当しない外国人に係る在留資格認定証明書交付処分一般に射程が及ぶ極めて重要な裁判例です。入管法7条1項に規定される上陸のための条件(法7の2Iの在留資格認定証明書交付の要件)には、在留期間更新許可(法21IⅡ)や在留資格変更許可(法20IⅡ)とは異なって、(狭義の)相当性の存在が含まれていません。

素行不良等、狭義の相当性がないことを理由に、在留期間更新不許可処分や在留資格変更不許可処分を受けたときに、(いったん単純出国した上で、) 在留資格認定証明書交付申請を試みることがあるのは、同申請に係
る審査に当たっては、狭義の相当性の存在が要件とならないからです。

イ 上陸拒否事由に該当する者についての裁量性
上陸拒否事由に該当する外国人に係る在留資格認定証明書交付処分については、入管法施行規則6条の2第5項ただし書が、外国人が入管法7条1項4号に掲げる条件に適合しないこと、すなわち同法5条1項各号のいずれかに該当することが明らかな場合には、在留資格認定証明書を交付しないことができると規定しています。そのため、上陸拒否事由に該当する外国人に係る在留資格認定証明書交付処分は羈束行為ではなく、法務大臣等が、家族の結合等の「特別の理由」(規1の21②参照)を考慮して在留資格認定証明書を交付するか否かの判断については、裁量が認められます(東京高判平26・12・10 (平26(行コ) 301)裁判所HP、東京地判平24・10・2(平24(行ウ) 103) WL.JP、東京地判平26・7・10 (平25(行ウ) 235) 裁判所HP、東京地判平26・11・19 (平25(行ウ)358) WLJP)。

もっとも、当該上陸拒否事由に対する評価や上陸拒否の特例(法5の2)の適用あるいは上陸特別許可(法121)を受けるべき特別の理由であると申請人によって主張される事情の判断において一定程度の裁量が法務大臣等に認められるとしても、平等原則の要請から、法務大臣等は、在留資格認定証明書交付申請に対する処分において、上陸拒否事由該当者に対し不合理な区別取扱いをすることは許されません。

よって、どのような類型の上陸拒否事由該当者に対して在留資格認定証明書を交付するかに係る黙示的な裁量基準(第2章第15節上陸特別許可・上陸拒否の特例第6参照)が存在している場合には、合理的理由なく当該裁量基準に反してなされた不交付処分は、平等原則等を介して、法務大臣等の裁量の逸脱・濫用として違法となります(山脇康嗣『入管法判例分析』26頁(日本加除出版、平成25年))。さらに、黙示の裁量基準であっても実務上確立していれば、最高裁平成27年3月3日判決(民集69・2・143) の射程範囲が及ぶと解されます。

したがって、特段の事情がないにもかかわらず当該基準に反して不交付とされた処分は、同判例に照らしても違法と解されます。なお、東京地裁平成26年7月10日判決(平25(行ウ) 235) 裁判所HP)は、「特定上陸拒否事由がある場合における在留資格認定証明書の交付が、上陸の拒否の特例を法務大臣が認めるに当たっての前提要件の一つとされていることに照らすと、上陸拒否の特例を認める判断がされるべき事情があるにも関わらず、在留資格認定証明書の交付を行わないことによって上記要件を充足させないことは許されないものというべきであり、かかる場合においては、上記証明書を交付しないことが裁量権の範囲の逸脱又はその濫用になる」と判示しています。

これは、上陸拒否の特例を認める判断がされるべき事情がある場合に、在留資格認定証明書の交付を行わないことは、裁量権の逸脱・濫用となるとしたものであり、法務大臣等は、将来出入国港において上陸拒否の特例を認めるべき場合には、在留資格認定証明書を必ず交付しなければならないことになります。

この判示によれば、法務大臣等は、在留資格認定証明書交付申請に係る審査に当たって、上陸拒否の特例を適用すべき事情があるか否かを判断しなければならない義務を負うことになります。

上記判示部分は、控訴審たる東京高裁平成26年12月10日判決(平25(行コ)301) 裁判所HP)において変更(削除)されています。同控訴審判決が、原部の上記判示部分を削除した理由は、出入国港において法務大臣等が「特別の理由」(規4の21②) があると認めて上陸拒否の特例の適用をするかどうかの判断と、法務大臣等が上陸拒否事由者に在留資格認定証明書を交付(現4の21②「外国人に法第7条の2第1項の規定により証明書を交付するかどうかの判断は、異なりうると考えたことによると解されます。

しかし、ある特定の上陸拒否事由に該当することを踏まえて在留資格認定証明書が交付された場合(現4の21②「外国人に法7条の2第1項の規定により証明書を交付した場合)には、出入国港において、他の上陸拒否事由に該当しないこと等を(念のため)確認するだけで、特段の審査をせずに、上陸拒否の特例を適用して
上陸許可しています(審査要領)。審査要領においては、特定事由に該当することを踏まえて在留資格認定証明書の交付を受けた者が上陸申請を行い、特定事由に係る入管法7条1項4号以外の上陸許可要件に該当している
と判断した場合には、原則として、上陸拒否の特例の対象とすることの相当性(法5の2)があると認め、特定事由のみによっては上陸を拒否しないこととすると記載されています。

よって、出入国港において法務大臣等が「特別の理由」(規4の21②) があると認めて上陸拒否の特例の適用をするかどうかの判断と、法務大臣等が上陸拒否事由者に在留資格認定証明書を交付(規Aの21②「外国人に法第7条の2第1項の規定により証明書を交付するかどうかの判断が異なることは、複数の上陸拒否事由が客観的に存在し、しかもそれが在留資格認定証明書交付申請に係る審査時点では判明していなかったという極めて例外的な場合を除き、ありえません。したがって、原審たる東京地裁平成26年7月10日判決の上記判示は正しいと解されます。

(3)上陸のための条件の主張立証責任
上陸審査に当たって、上陸のための条件に適合することの主張立証責任は、外国人側にあるとされています(法7II)。この点、通常の場合は、有効な旅券、査証及び在留資格認定証明書を入国審査官に提示すれば、特段の立証活動なしに上陸は許可されます。

しかし、場合によっては、それらを提示していても、入国審査官に活動の非虚偽性や在留資格該当性を疑われ
たり、あるいは、実は上陸拒否事由にあたる者なのではないかという疑いを抱かれたりして、特別審理官による口頭審理(法9V・101)に回されることがあります。

このような疑いを抱かれ、特別審理官による口頭審理に回されてしまった場合は、代理人として弁護士を依頼する時間も事実上なく(弁護士は、入管法10条3項により、当該外国人の代理人として、口頭審理に当たって、証拠を提出し、証人を尋問することができますが、外国人が空港等でいきなり予想外に口頭審理に回された場合に、弁護士を依頼する時間は実際上ありません。なお、行政書士は、特別審理官の許可を得れば、入管法10条4項の「知人」として口頭審理に立ち会えますが、弁護士法72条により代理人にはなれないので、証拠の提出、証人尋問は認められません。)、また、十分な通訳も必ずしも確保されていないのが通常です。

したがって、来日する外国人は、自己の防御のため、上陸のための条件に適合していることの立証資料とすべく、在留資格認定証明書交付申請の際に入国管理局に提出した資料一式のコピーを持って来日するべきです。

また、当該外国人の受入機関(雇用先等)の担当者が空港に迎えに来ておくことが望ましいです(迎えに来ている受入機関の担当者の携帯電話番号等を来日外国人にあらかじめ伝えておき、上陸審査に当たってトラブルが発生したときは、すぐに電話をかけるよう、あるいは特別審理官にかけさせるように指示しておきます)。

上陸のための条件に適合することの主張立証について行政見解は、次のように解しています。すなわち、「逐条解説』261頁は、「上陸審査を受ける外国人は、上陸条件に適合していることについて、単に上陸条件に適合し、ていることを主張するだけでは足りず、客観的な資料に基づき、社会通念上合理的な疑いを入れる余地のない程度にこれを証明しなければならない。(中略)入国審査官が上陸条件に適合しているとの心証を得ない限り、本項(筆者注:入管法7条1項)に規定する立証がなされたとはいえず、その外国人は上陸の許可を受けられない。すなわち、右の立証がなされない場合には、その不利益は上陸の申請をした外国人に帰する」とします。しかし、口頭審理において事実上代理人として弁護士を選任する機会もなく、十分な通訳も必ずしも確保されていない状況で、完全に外国人側にのみ立証責任を課したのでは、公正妥当な判断が得られない可能性があります。

よって、適正手続(憲31)の観点から、外国人側が有効な査証や在留資格認定証明書等という証拠を提出した場合には(証拠提出責任)、上陸のための条件に適合することは推定され、同条件の適合性の立証責任は転換され、その結果、国側が適合しないことを立証しなければならなくなると解すべきです。

そもそも査証や在留資格認定証明書は、国側が審査の上で、その者の在留資格該当性を証明したものです。また、上陸拒否者のデータは国側が保有し、上陸拒否事由に「あたらない」ことの外国人による立証は困難であり、上陸拒否事由に「あたる」ことの立証を国側にさせた方が適切であることを考えると、この見解は正当化されうると解されます。

(4) 上陸手続における在留資格認定証明書の重要性
上陸のための条件のうちで最も根幹的な要件といえる、入管法7条1項2号に規定する在留資格該当性及び上陸許可基準適合性については、原則として、在留資格認定証明書(法7の2)を出入国港で入国審査官に提出することによりその立証があったものとして扱われます(審査要領)。

また、入管法7条1項1号に規定する査証の有効性の条件との関連においても、在外公館への短期査証以外の査証発給申請では、在留資格認定証明書が最も重要な立証資料となります。したがって、外国人が日本に入国しようとする際には、「短期滞在」の在留資格で入国する場合を除き(「短期滞在」の在留資格については、入管法7条の2第1項かっこ書により、在留資格認定証明書の制度の適用はありません。)、実務的には、在留資格認定証明書の交付申請が極めて重要な手続となります(ただし、「短期滞在」以外でも、ワーキングホリデーに係る「特定活動」等、在留資格認定証明書なしに査証申請するのが一般的である場合も、ないわけではありません。)。

(5) 査証(いわゆるビザ)
日本国に上陸しようとする外国人は、原則として有効な旅券を所持していることのほかに、所持する旅券に査証を受けていなければなりません(法710)。

査証は、その外国人の所持する旅券が権限ある官憲によって適法に発給された有効なものであることを「確認」するとともに、当該外国人の日本国への入国及び在留が査証に記載されている条件の下において適当であるとの「推薦」の性質を持っています。

「短期滞在」の在留資格で上陸許可を受けようとする場合、査証免除国・地域の外国人であれば、査証は必要ありませんが、査証免除国・地域の外国人以外の場合には、日本の空港等における上陸審査の際に、「短期滞在」の査証が必要となります(法71①)。なお、査証を発給することは外務省の所掌事務です (外務省設置法413)。査証については、後記2(2) イで詳述します。

(6) 上陸許可基準
日本国に入国を希望する外国人は、入管法で定める在留資格のいずれかに該当する必要がありますが、さらに一部の在留資格については、どのような具体的条件を満たせば実際に入国が許可されるのかが法務省令により
定められています。これを上陸許可基準といいます(法71②)。

上陸許可基準が定められている在留資格については、同基準に適合しない場合は原則として上陸できない(在留資格認定証明書が交付されない)仕組みになっているため極めて重要なものです。具体的な基準は、基準省令において在留資格ごとに定められています。

(7) 上陸拒否事由
日本国にとって上陸を認めることが好ましくない外国人の類型が上陸拒否事由です。具体的には、①保健・衛生上の観点から上陸を認めることが好ましくない者、②反社会性が強いと認められることにより上陸を認める
ことが好ましくない者、③日本国から退去強制を受けたこと等により上陸を認めることが好ましくない者、④日本国の利益又は公安を害するおそれがあるため上陸を認めることが好ましくない者、⑤相互主義に基づき上陸を認めない者という類型の外国人が日本国への入国を拒否されます(法7I0・51)。

上陸拒否事由に該当する外国人が上陸を認められるためには、上陸拒否の特例(法5の2) の適用又は上陸特別許可(法121) を受ける必要があります。

外国人が上陸拒否事由に該当する事実があるのに、偽りその他不正の手段により、上陸拒否事由に該当しないものとして上陸許可等を受けたことが判明した場合には、法務大臣は、その者が現に有する在留資格を取り消
すことができます(法22の4I ①)。

(8) 特別審理官による口頭審理
外国人が出入国港において入国審査官による上陸の審査を受けた結果、入管法7条1項に規定される上陸のための条件に適合していると認められなかった場合には、特別審理官に引き渡され口頭審理を受けることになります(法9V・101)。

口頭審理の結果、特別審理官により上陸のための条件に適合すると認定された外国人には、直ちに上陸が許可されますが(法10 VIⅡ)、上陸のための条件に適合しないと認定された外国人は(法10X)、特別審理官の認定に服する(法101) かあるいは異議を申し立てる(法11) かを選択することができ、認定に服した場合には退去命令が出されます(法101)。

また、異議を申し立てる場合には認定の通知を受けた日から3日以内に法務大臣に異議の申出を行うことができます(法111)。

口頭審理の結果、特別審理官により上陸のための条件に適合すると認定されることは、実務上あまりありません。したがって、誤って特別審理官による口頭審理に回されてしまうことのないよう、在留資格認定証明書交
付申請等の事前準備を適法かつ的確に行っておく必要があります。

なお、東京地裁平成21年7月24日判決((平21(行ウ)123) 裁判所HP)は、特別審理官から、入管法7条1項2号所定の上陸のための条件に適合していないとの認定を受けた外国人が、退去命令に基づき出国した後に提起した、上陸のための条件不適合認定処分取消請求訴訟及び違法確認訴訟の訴えの利益の存否について、日本から出国した以上、当該外国人が再び日本に上陸しようとするときは、改めて上陸審査を受けなければならず、仮に、上記認定処分が取り消され、又はその不適法であることが確認されたとしても、もはや当初の上陸申請に基づく上陸許可がされる余地はないから、両訴訟のいずれも訴えの利益がないと判示しています。

外国人が出入国港において上陸のための条件の適合性に疑義を持たれ、口頭審理が行われる場合のうち、特に、これまで秘していた入管法5条1項4号等に該当する過去の有罪判決歴や入管法5条1項9号に該当する退去強制歴が発覚した場合等には、何とか仮上陸の許可(法131) が得られるよう交渉するべきです。

そして、一刻も早く弁護士等に相談した上で、法務大臣による上陸特別許可の裁決が得られるよう、有利な主張立証(配偶者や子等の家族の結合を必要とする生活状況、法令違反に係る反省、法令遵守の誓約等)を準備すべきです。実務上は、仮上陸の許可がなされている場合には、上陸特別許可が認められる可能性が相当程度あります。

(9) 法務大臣による裁決
法務大臣は、特別審理官により上陸のための条件に適合しないと認定された外国人からの異議の申出があったときは、その異議の申出に理由があるかどうか、すなわち、外国人が上陸のための条件に適合しているかどう
かを裁決します。裁決の結果、「理由あり」とされた場合には直ちに上陸を許可されますが(法111V。法務大臣により「理由あり」の裁決がなされることは、上陸特別許可の場合(法121参照)を除いて実務上ほとんどありません。)、「理由なし」とされた場合には日本からの退去を命じられ(法11 VI)、退去命令を受けた外国人が遅滞なく日本から退去しない場合には、退去強制手続が執られます(法245の2)。

なお、法務大臣は、異議の申出に「理由がない」と認めた場合でも、特別に上陸を許可すべき事情があると認められるときは、その外国人の上陸を特別に許可(上陸特別許可)できることになっています(法121)。例え
ば、かつて不法滞在等により退去強制され、いまだ上陸拒否期間(法519)が経過していない外国人が、「日本人の配偶者等」の在留資格で上陸しようとする場合に、人道上の見地から上陸を特別に許可される場合等があります。上陸特別許可については第2章第15節で詳述します。

また、平成21年入管法改正により、入管法5条の2、入管法施行規則4条の2で上陸の拒否の特例が設けられ、上陸拒否事由に該当する特定の事由がある場合であっても、法務大臣が相当と認めるときは、入国審査官、特別審理官、法務大臣と三段階の手続を経る上陸特別許可を行わずに、入国審査官限りで上陸許可をできるようになりましたが、これについても後述します。

(10) 退去命令
日本国への上陸を拒否され退去命令を受けた外国人は、速やかに国外に退去しなければなりませんが、航空機で到着した外国人乗客が上陸を拒否された場合、その者が折り返し便として同じ航空機に乗って出国すること
は時間的制約等から困難なケースが多く、便の都合によっては翌日以降の至近便出発まで日本国内にとどまることが必要となります。

そこで、入管法13条の2は、特別審理官又は主任審査官が、期間を指定して到着した出入国港の近くのホテル等の施設にその外国人がとどまることを許すことができることとしています。なお、この場合は上陸許可等を受けていないので、許可なくとどまることができる施設外に出ていくと不法上陸(法24②) として退去強制事由に該当します。

また、施設内にとどまる場合であっても、指定期間を超えてとどまるときには、退去命令違反(法245の2)として退去強制事由に該当します。

退去命令を受けた外国人が次回来日するとき、過去に退去命令を受けたことがあること自体を直接の理由として上陸を拒否されることはありません。退去命令を受けたこと自体は入管法5条の上陸拒否事由とされていな
いからです。

もっとも、退去命令を受けたということは、上陸審査において上陸のための条件に適合していると認められなかったということですから、次回来日する際には上陸のための条件に適合していることを自ら十分に主張立証する必要があります。次回来日の際には、いわば「マイナスの推定」が及んでの上陸審査をされると考えておいた方がよいでしょう。

なお、退去命令は退去強制手続とは異なるため、退去命令を受けたこと自体によって、退去強制された者に適用される5年間の上陸拒否期間(法5I◎ロ)の適用を受けることはありません。ただし、麻薬、大麻、覚せい剤等を不法に所持する者、銃砲刀剣類、火薬類を不法に所持する者として退去命令を受けた場合には、1年間の上陸拒否期間の適用を受けます(法519イ68)。

以下、外国人が日本に上陸するための具体的な手続きについて、入管法7条1項1号ないし4号に規定される各「上陸のための条件」に即して、順に説明します。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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