『離婚のツボとコツ』

2-9 収入が下がってしまって養育費が支払えません


<順調に養育費を支払っていたのに>
いろいろともめてしまい、結局、調停で離婚をしました。調停では、相手を親権者と定め、私が養育費として毎月10万円を支払うことになりました。今まできちんと毎月10万円の養育費を支払ってきたのですが、先日、会社で大きな失敗をしてしまい、閑職に飛ばされることになりました。当然、給料も大きく下がることになり、今後、養育費をきちんと支払っていけるかどうか、とても不安な状況です。

 

<話し合いのコツ>
●養育費は支払い続けることが大事
養育費は、きちんと稼げているからこそ払えるものです。収入が減ったにもかかわらず、今までと同額の養育費を支払うために無理にダブルワークをして、体を壊し、どちらの仕事も辞めることになってしまっては、結局、養育費を支払うことができなくなってしまいます。

 

養育費が支払われなくなると、子どもの生活に大きな影響を与えます。無理をした結果、養育費を全く支払えなくなってしまうくらいなら、きちんと支払い続けられる金額への減額に応じてもらえるよう相手にお願いする方が、子どものためになるはずです。

また、あなたが養育費の減額の申し入れを受けた側であれば、養育費の支払いを長期的に確保するという観点(そして、本当に相手の年収が下がっているのであれば、相手からの養育費減額の調停の申し立てにより最終的に養育費が減額される可能性がある、という観点) から、減額に応じるのか否かを検討してみてください。

 

●減額の交渉には根拠を示して
減額の交渉にあたっては、正確な収支のわかる家計簿 (食費や光熱費、携帯代の下3桁が「000」みたいな、ドンブリ勘定のものではだめです!)を示して交渉するのもひとつの方法だと思います。

 

実際、家計簿を示した結果、相手に相場以下の養育費で納得してもらったというケースもあります。
もちろん、家計簿を示すことにはリスクも伴います。

以前、相手が示してきた家計簿に、多額の浪費が認められ、それなら今まで通りの養育費を支払えるはずだよね、という結論になったことがあります。逆に、十分切り詰めている家計簿に対して、重箱の隅をつつくような指摘をしてくる相手もいます。

 

◎話し合いのコツポイント
子どもにとって大事なことは、養育費がきちんと支払われ続けることです。
家計簿は減額の交渉に役立つこともあります。

 

<法律上のツボ>
●養育費はお互いの経済力に応じて負担すべきもの
調停とは、裁判所が関与する公的な手続きです。そこで決まった養育費の金額は、調停調書という公的な書類に記載されます。裁判所が作成した公的な書類に、月10万円支払いますと記載されてしまうと、今後、変更することはできないように思ってしまうかもしれません。

しかし、養育費は、経済力に応じて負担するのが原則ですから、収入などに大きな変化があった場合には、改めて調停を申し立てるなどして、養育費の金額を変更してもらうことは可能です。なお、経済力に応じて負担するということは、自分の収入が減ったり、相手の収入が増えた場合には、自分から養育費減額の調停を申し立てることができる一方で、自分の収入が増えたり、相手の収入が減った場合には、相手から養育費増額の調停を申し立てられる可能性もあるということです。

養育費の減額または増額の調停で話し合いがつかなかった場合には、審判手続になり、新たな養育費の金額について審判官(=裁判官)が決定することになります。

なお、もともとの養育費の金額が、口頭での約束であったり、自分たちで私的に作成した念書等の形で残されている程度の場合はさておき、公証役場で作成する公正証書や、裁判所が作成する調停調書や決定などの、強制執行できる形 (2-10節参照)で残されている場合、相手との養育費減額の合意についても、調停調書等の形で残すか、少なくとも口約束ではなく書面の形で残しておかないと、相手が減額なんて知らないと、突然強制執行をかけてきた場合に厄介なことになります。

◎法律上のツボポイント
増額が認められます。
一度裁判所で決まった養育費であっても、その後の経済力の変化に応じて減額・増額が認められます。

 

【用語の解説】
・調停 【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続【その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。
・親権【親権者】: ①子どものしつけや日常生活の世話 (監護教育)との子どもの代わりに契約や財産の管理(法定代理人)をする権限「その権限を持つ者】。詳細については、2-1節参照。
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・審判手続:調停で話し合いがつかなかった場合等に行われる手続。審判官(=裁判官)が結論 (養育費の金額等)を決める手続であり、一般にいう訴訟のようなもの。ただし、訴訟と異なり、非公開である。
・決定【決定書】:審判手続における審判官(=裁判官)の結論 【結論と理由が記載された書類】。例えば、話し合いがつかない場合に、分担すべき婚姻費用の金額についてなされる。一般の方がイメージする判決に相当する。
・念書:いわゆる契約書のこと。これ自体は法律用語ではない。内容によって、和解書、離婚協議書等と題されることもある。
・公正証書:公証役場で、公証人(検察官や裁判官のOB / OGが多い)による意思確認の上で作成される書類。詳細については、2-10節のコラム参照。
・強制執行:調停等で決まった約束を相手が守らない場合に、国家権力が強制的に約束を守らせる手続の総称。例えば、差押えがこれにあたる。
・差押え:例えば、相手方が調停等で決まった養育費を支払わない場合に、相手の勤務先や預金先の銀行に対して、相手への給与の支払いや預金の払い出しを禁止した上で、申立人に支払わせる強制執行の方法。なお、相手の勤務先や実際に預金口座のある支店を特定して申し立てる必要がある。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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