『会社設立のポイント』

2-8-(2) 「目的」を決めるときに気をつけること


●将来行う可能性がある事業や業務はあらかじめ入れておくことも検討する
設立登記のときには、設立後すぐに行う業務だけでなく、今後行うかもしれない業務や興味がある業務なども目的に入れておきましょう。目的を追加・変更するためには変更の登記が必要となり、その際に登録免許税3万円と登記をする手間がかかってしまいます。
「目的」に書いてあるからといって、その業務を必ず行わなくてはいけないわけではありません。後々の手間や費用を考えると、設立のときにある程度幅広く記載しておくことをお勧めします。ただし、借入れや預金口座開設時に支障が出ることもあるので(80頁参照)、むやみやたらに盛り込むのは避けましょう。

●ひらがな、カタカナ、漢字で記載する
使用できる文字は日本語の文字にかぎられ、原則としてローマ字は使用できません。例外的に「CD」や「Tシャツ」といった一般的に使用されている用語については、ローマ字を使うことができます。

●登記上の目的と業法上の規制を区別する
目的の記載がある程度抽象的であっても登記はできますが、そのような表現を使って登記した会社に対しては、各種の業法上の許認可が下りない可能性があるので注意が必要です。
また、ほかの業種との兼業が禁止されている業種もあり、その場合に目的として両方の事業が記載されていると、「この会社は兼業をする気だな」ということになりかねません。どのような記載が必要か、どのような記載は避けるべきか、監督官庁へ事前に確認しておきましょう。

※ 許認可の申請自体は、登記が完了してから行います。
例)
×「派遣業」 ○「労働者派遣事業」

※「派遣業」では抽象的すぎるので、より具体的な記載にしました。実際に上記のような例はありましたが、記載の表現については監督官庁に確認しましょう。

●預金口座開設や借入の観点から考える
融資希望の場合、下表にある業種をすぐに行わないのであれば、それを「目的」から外しておくことをお勧めします。「目的」に記載されていても、その事業を実際に行わなければ融資審査には影響しないようですが、無用の誤解を避けるためです。また日本政策金融公庫は非対象業種を明示していないものの、これに準じた対応を行っているようです。

<東京信用保証協会>
農林、漁業、性風俗関連特殊営業、金融業など
※詳しくは、保証協会ホームページ「信用保証対象外業種一覧」参照。ちなみに、近年、マネーロンダリングなどの関係で新規の法人口座開設や設立後の融資の審査が厳しくなっています。特に融資を検討している場合は、定款の目的に記載する事業も絞って怪しまれないようにする対策を講じておくほうが賢明です。

●数はあまり多くならないようにする
実は、法律上「目的」の数に制限はないので、いくつ記載してもかまいません。しかし、あまりにもたくさんの目的を書いていると、第三者から見て「この会社はいったい何をメインの業務にしている会社なんだろう?」「本当にこんなにたくさんの業務を行っているのだろうか?」と不信感を持たれることになりかねません。新規の取引先が「与信審査」を行うときには、「登記事項証明書」を取って、こうしたポイントも確認されます。何でも屋にならないように気をつけましょう。
多いところだと目的の数が20個を超えている会社もありますが、中小企業ならおおむね3~10個くらいの記載にしておくのが無難です。

●最後に「前各号に附帯または関連する一切の業務」と記載する
新しい業務を行う場合でも、これまでの目的に記載した業務と関連したものであれば、「前各号に附帯または関連する一切の業務」に含まれるので、改めて目的の変更登記をする必要がありません。便利な表現なので、必ず入れるようにしましょう。

●本業とは関係のない業務も「目的」に入れることができる
不動産業を本業とする会社の「目的」に、「飲食店の経営」や「インターネットを利用した通信販売業」といったものが入っていても差し支えありません。本業以外のことも「目的」に入れてかまいませんが、一貫性
のない「目的」ばかりをたくさん記載していると、前述したように取引先から不審に思われる危険性があり、融資に影響することもあります。

●同業他社の「登記事項証明書」を見てみよう
これまでの注意点に気をつけながら、まずは会社の目的を「決定事項チェックシート」に広く浅く書き出してみましょう。書き方で迷ったら、同じ業種ですでに登記されている会社を参考にするとよいでしょう。
「事業目的」は、ホームページに掲載している会社もあります。ホームページに掲載されていなければ、法務局の窓口でその会社の「登記事項証明書」を取ってみましょう。会社の商号と本店がわかれば、誰でも1通600円で登記事項証明書を取ることができます。インターネットの登記情報提供サービスで登録情報を確認することもでき、その場合は少し安く見ることができます。
登記事項証明書は、登記がどういうものかイメージをつかむのにも最適です。勉強のため、登記をする前に、同業他社の登記事項証明書を取ってみるとよいでしょう。

●目的例や書籍を参考にする
本書では、業種ごとの目的例を掲載しています。
もっと詳しい情報を知りたい場合は、主に司法書士などの専門家向けですが、目的例が多数掲載された「事例集」のような書籍も販売されて、いるので参考にするとよいでしょう。

●事前に法務局へ相談に行く
せっかく登記の申請をしたのに「目的」が認められず、登記を取り下げなければならなくなっては大変です。
法務局には無料の相談窓口があり、登記ができるかどうかを事前に相談することができるのでぜひ利用しましょう。法務局の窓口は、大きく分けて、まず「不動産登記」と「法人登記(会社登記)」に分かれており、さらに「登記申請をする窓口」と「相談窓口」に分かれています。
登記相談は、通常、予約制になっています。予約先電話番号に事前に電話をして予約を取ってから、予約した相談日時に法務局に行きます。
飛び込みでの相談を受けている法務局もありますが、予約優先になっているので当日の相談は受けてもらえない可能性があります。法務局によってはしくみが多少異なるので、詳細は管轄の法務局に問いあわせてください。相談窓口は、特に会社の決算時期前後の3~6月にかけては混雑していることがあるので注意してください。
相談に行くのは、目的の記載のしかたを含めてひととおり定款を作成し終わったあと、定款認証をする前が最もよいでしょう。なお、相談時間は決まっているので(おおむね30分程度)、あらかじめ不明な点や質問事項を整理しておきましょう。
法務局へ行ったついでに登記申請のときに必要となる「印鑑届出書」「印鑑カード交付申請書」の所定の用紙をもらっておくとよいでしょう。

●まとめ
・将来行う可能性がある事業も入れておく
・許認可を必要とする事業かどうか確認する
・迷ったら同業種の会社の「目的」を参考にする
・「目的」の判断に迷ったら、登記をする前に法務局へ相談に行くとよい


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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