『相続実務のツボとコツ』

2-7 信託はいつ終わる?


<信託の終了事由>
信託にはいくつかの終了事由があります。

①委託者と受益者が合意したとき
委託者と受益者の合意によって、いつでも信託を終了させることができます。なお、委託者が既に死亡等している場合でも、受益者のみで信託を終了させることはできません。

②信託行為で定めた事由が生じたとき
「父(母)の死亡」「受益者が20歳になったら」等、信託行為において、あらかじめ信託の終了事由を定めておくことができます。

③信託目的を達成したとき、又は達成できなくなったとき
信託は、受託者が一定の目的達成のために、信託財産を管理・処分するためのものであるため、目的を達成するか、又は達成が不能となった場合は、信託は終了します。

④受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき
信託の本来の趣旨は、受託者が受益者のために、信託財産を管理・処分するためのものであるため、受託者と受益者が同一人である状態では所有権と変わりません。そのため、1年を経過したときに信託は終了します。

⑤受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年問継続したとき
受託者が欠けている状態では、信託財産の適切な管理・処分が見込め、受益者の権利が守られないため、上記同様に、1年を経過したときに信託は終了します。

⑥信託財産の費用等の償還等に不足している場合において、受託者が信託を終了させたとき
受託者が信託事務を処理するために必要な費用は、原則、信託財産から支出します。しかし、信託財産の金銭が不足している場合など、一時的に支出できない場合は、受託者の固有財産から支出することも考えられます。その場合は、信託財産から立て替えた費用の償還を受けるか、又は受益者との間で合意があれば、費用の償還を受けることができます。この費用の償還が受けられない場合で、一定の手続きを経たあと、受託者は信託を終了させることができます。

⑦信託の併合がされたとき

⑧特別の事情による信託の終了を命ずる裁判等があったとき

⑨「信託財産についての破産手続開始の決定があったとき

⑩委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は構成手続開始の決定を受けた場合において、信託契約の解除がされたとき

⑪不法目的で信託がされた場合等において、利害関係人の申立てにより、裁判所が公益確保のために信託の終了を命じたとき

<信託の清算手続き>
信託が終了した場合、受託者は清算受託者として、信託の清算事務を行います。清算事務には、現務の結了(現在の任務の完了)、信託財産に属する債権の取立て、信託債権・受益債権に係る債務の弁済、残余財産の給付があります。信託の終了時に残っていた財産を残余財産といい、この財産の受取人は下記の順に従って帰属します。

第1順位  信託行為において指定された者 (残余財産受益者・帰属権利者)
第2順位  上記の定めがない場合、又は指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合は委託者又はその相続人その他の一般承継人
第3順位 上記により定まらないときには、清算受託者

<委託者の地位は相続されるか>
信託法によれば、委託者の地位は相続の対象とされ(遺言信託を除く)、信託契約において別段の定めをした場合を除き、委託者が死亡した場合は、委託者の地位は委託者の相続人へ承継されると考えられます。ですから、相続により信託の当事者が複雑にならないように、委託者の地位は相続によって承継されない旨を、別段の定めとして規定しておく必要があると考えられます。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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