『離婚のツボとコツ』

2-7 養育費っていつまで支払ってもらえますか?


<子どもも大学を卒業し......>
離婚した時、子どもは3歳でした。その後、小学校に入学し、中学に入学し、高校に入学し、大学に入学し、やっと大学を卒業したと思ったら、そのまま引きこもりになってしまい、それからもう十数年が過ぎました。養育費は、いつまで支払えばよいのでしょうか。

 

<話し合いのコツ>
●子どものライフプランや夢を共有して
子どもがいくつになるまで養育費を支払わなければならないのかについて、相場は、子どもが成人するまでと言われています。より正確には、「20歳になる日の属する月まで」(7月9日に20歳になる子の場合、7月分の養育費までということです。日割りにはしません)です。
とはいえ、我が国の大学進学率は5割程度に達しており、仮に大学に進学した場合には、20歳から卒業までの間、親の援助なしで生活することはなかなか難しいのが実情です。一定の要件のもと、20歳以降の養育費の支払いが認められたケースもありますが、裁判所はほとんどのケースで20歳になるまでと判断しています。

子どもに充実した学生生活を送ってもらうためにも20歳以降卒業までの間の養育費については、相手に自主的に支払ってもらう他ありません。

養育費の支払いは、毎月ただ支払っているだけだと、離れて暮らしている親にとって無味乾燥なものになってしまいます。他方で、この養育費で、子どもの生活や夢を支援しているのだ、という実感が持てれば、無味乾燥なものでなくなります。

一般に、養育費の支払いは長期にわたることが多く、途中で支払われなくなるケースも少なくありません。養育費の支払いが無味乾燥なものでなくなれば、養育費が支払われなくなる可能性も少なくなりますし、子どもの夢や希望に応じた増額にも柔軟に応じてくれるようになるはずです。

 

とはいえ、養育費によって子どもの生活や夢を支援しているという実感は、一朝ータに持てるものではありません。例えば、面会交流がきちんと積み重ねられていると、面会交流の際に、自然と、養育費で買ってもらったものや叶えることができこと、さらには、進路や将来の夢に関する話が出るようになり、結果として、本人のライフプランや夢を、父・母・子の間で共有することができます。

 

ライフプランや夢を共有する中で、夢や生活を支援している実感を持てるようになり、その結果として、養育費の不払いがなくなり、さらには、子どもの夢や希望を叶えるための養育の支払いが得られるようになっていくはずです。

 

余談ですが、離婚すると相手との親族関係は終了しますが、親子の関係は一生続きます。冒頭のケースのような場合は、養育費というよりも、純粋な扶養義務の問題として、何らかの援助をする義務があるかもしれません。とはいえ、30代半ばになっても引きこもっているというケースでは、お金を渡すだけではなく、公的機関に相談した方が良いかもしれません。

 

◎話し合いのコツポイント
養育費の支払を通じて、子どもの生活や夢を支援しているという実感が持てるようにしましょう。

 

<法律上のツボ>
●養育費は未成熟な子に対して支払われる
裁判例には、「養育費とは・・・、監護親が非監護親に対して請求できるものであるところ、その前提として子が扶養必要状態にあること、即ち、未成熟であることが要件となるのであるから、一般的には成年に達した段階で未成熟子には当たらなくなるものというべき」というものがあります。
この裁判例は簡単に言うと、養育費は、

(1) 未成熟な子の面倒を見ている親が請求できますよ
(2) 一般的には成年に達したら未成熟ではなくなりますよ

 

と言っています。

 

ちょっとややこしくしているのが、未成年と未成熟という概念の違いです。両者はほぼ同義ですが、厳密には異なります。未成年とは20歳未満のこと、未成熟とは独立して生活する能力のない子のことをいいます。

 

例えば、プロ野球選手や、アイドルなどで、独立して生活する収入がある子は、成年であっても成熟子として判断されます。18歳で高校を卒業して、就職した場合なども同様です。

裁判所は、「一般的には20歳になる前までは未成熟である可能性が高いし、20歳を過ぎたら成熟している可能性が高いと考えているよ、もし違うという事情があるならそれを教えてね」 というスタンスだということです。

20歳を過ぎても未成熟子といえる事情について、裁判例は、親や兄弟の状況から判断される家庭の経済的・教育的水準(例えば、父が医師・母が薬剤師・姉が薬科大学に進学しているケースで、現在高校生である子どもについて大学卒業までの養育費が認められた例があります)や、相手の大学進学に関する意向や相手とこちらの資力(進学に賛成だったか、反対だったか。養育費を負担できるだけお金があるのか、こちらの不足分や資金調達の可能性等)、さらに自立を妨げる病気の有無などが考慮されているようです。

 

親判所が、現実に自立できていないことだけでなく、その家庭の教育水準や親の同意・資力などを基準に判断しているのは、どこまでが親の果たすべき責任なのかを慎重に判断したいということの表れなのだと思います。

例えば、他の兄弟全員が経済的事情で大学進学を断念している中、1人の子だけが大学院の博士課程を修了する(おそらく30歳直前くらい)までの養育費を欲しいと言い出した場合に、親が自主的に支払うのであればともかく、法的な義務として支払を強制するとなると、親の果たすべき責任として過大であるという印象を持たれる方は多いのではないでしょうか。

 

他方で、親が、「俺が果たせなかった、発明家になるという夢を果たしてくれ」と言って、以前から子どもの大学院進学を希望しており、かつ、その間の養育費を支払う十分なお金がある場合には、大学院卒業までの養育費を法的な義務として負担させることは、そこまで過大な責任ではない、という印象はないでしょうか。

 

未成熟という言葉は、子の側の事情のような言葉ですが、実際には、個別具体的な事情のもとで、親がどこまでの責任を果たすべきかという、親の側の事情で判断されているように思います。

また、一度、養育費は18歳までと約束したとしても、例えば大学へ進学することになった等の事情の変更に伴い、大学卒業までと変更をお願いすることは可能です。(相手が話し合いに応じてくれれば問題ありませんし、話し合いに応じてくれない場合には、調停などをすることになります)。ただ、先に書いた通り、必ず認められると、いうわけではなく、その時々の具体的な状況に応じて判断されます。

 

◎法律上のツボポイント
どこまでが現の果たすべき責任の範囲か、という基準で判断されているようです。

<用語の解説>
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・面会交流:離婚や別居により子どもと離れて暮らしている親が、子どもと会うこと。詳細については、2-11節参照。
・扶養【扶養義務】:生活費を渡すなどの方法により、生活を援助すること 【その法的な義務】。
・監護者:親権のうち、子どものしつけや日常生活の世話 (監護教育)に関する権限を持つ者。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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