『会社設立のポイント』

2-6-(2) 事務所の賃貸借契約の注意事項


●物件の用途について
賃貸借契約では、物件の用途が「住居のみ」「事務所使用可」などと定められているのが通常です。いわゆるテナントビルに入居するような場合は特に問題ありませんが、自宅の賃貸マンションを事務所に使用する場合や、マンションの一室を借りて事務所にする場合には、賃貸借契約上、その物件を事業目的で使用することができるかどうか確認しなければなりません。住居のみと定められた物件を事務所として使うと、用法遵守義務(借主が、契約またはその目的物の性質によって定まった用法にしたがい、その物の使用および収益をしなければならないという義務)に違反しているとして、家主から賃貸借契約を解除される場合もあるので注意しましょう。

●新規で契約する場合を中心に、契約する際に気をつけたいそのほかの点
①契約の締結時期と賃料の発生時期
一般的には、賃貸借契約の締結の時点から賃料が発生します。しかし、賃貸借契約の締結時期と、実際にその場所で開業する時期とは異なることが多いので、賃料など賃貸借契約の条件を交渉するとき、賃料発生時
期を賃貸場所での開業の時点としてもらえるように交渉してみることをお勧めします。

②賃料の改定について
賃料について、一定期間減額しない、あるいは自動的に増額していくなどの条項が入っていることがあります。しかし、自動的に増額していくような内容の賃貸借契約は、借り手にとってかなり不利なものになり
ます。こういう場合には、少なくとも自動的にではなく、その都度協議により増額するかどうか決定するといった内容に変更してもらうよう交渉することをお勧めします。

③解約予告期間
事業がうまくいけば、今借りている場所を退出して、より広い物件へと移転することも考えられます。こうした場合に問題になるのが「解約予告期間」です。これは、賃貸借契約を解約するのに、いつまでに大家さんにその旨を通告する必要があるかという期間です。事業用の賃貸借の場合、通常3カ月や半年など、この期間が長めに記載されています。
この期間中は、たとえ退出をすませていても、大家さんにこれまでどおりの家賃を支払わなければなりません。そのため、ビジネスの時機に応じてすばやく動くことができなくなります。契約条件を決めるにあたっ
ては、この期間をできるだけ短くしてもらうように交渉することをお勧めします。

④原状回復費
また、退出時によく問題になるのが、原状回復費です。事業用の賃貸借では、個人の住居用の場合と比べ、原状回復義務の負担が大きいのが一般的です。なかには、賃貸借を開始した時期の状態まで、完全に原状回復して返還しなければならないとしている場合もあります。

住居用の賃貸借では、過度に重い原状回復義務は訴訟の場で否定されるケースもありますが、それと比べると、事業用の賃貸借では、一般的に重い原状回復義務の負担が認められる場合が多くなります。予防策として、原状回復についての条項が借り手にどのような負担を課しているのかを具体的に確認しておき、重すぎるようであれば軽減してもらうよう交渉する必要があります。

また、敷金や保証金もどのような条件でいくら返還されるのか(されないのか)が、大家さんによってかなり違います。事業用の賃貸借では敷金や保証金も高額になるので、必ず、契約前に慎重に確認をします。

なお、マンションの1室を事務所用として借りたり、住居兼事務所として借りている場合には、上記の期間よりも契約書上「解約予告期間」が短めに設定されていることが多く、原状回復義務の負担も、通常の住宅の賃貸借契約と同程度の場合もあります。

ただし、この場合、「物件の用途について」で説明した点から注意が必要です。当初から住居兼事務所として借りている場合は契約書にしたがいますが、住居として賃貸したものを事務所として使用しはじめる場合には、大家さんに説明をし、協議しておくことが必要です。そうしないと、「用法遵守義務」違反ということで契約を解除される可能性があります。

そして、事務所用として使用する旨の協議をした際には、解約予告金、原状回復義務の負担についても、テナントビルに近いものにされる可能性があるので、この点についてもしっかり交渉する必要があります。

また、契約書の内容を変更するのですから、後日紛争にならないよう、しっかりと変更内容を確認しておきましょう。新しく契約をするときには、賃料の発生時期などだけではなく、退去する場合も考えて内容を確認しましょう。

すでに賃借してる自宅を事務所に使いたいのであれば、用法遵守義務違反に注意しましょう。法人成りをする場合には、無断転貸の禁止にも注意してください。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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