『離婚のツボとコツ』

2-6 養育費っていくらもらえるのでしょうか?


<離婚したからといって>
婚姻中は、塾・家庭教師・習い事・お受験用の洋服・その他諸々、子どものための費用として、月に50万円くらい使っていました。きちんと明細も残っています。来月には私立小学校の入学金も必要になるのですが、これらのお金は離婚後も負担してもらえるのでしょうか?

 

<話し合いのコツ>
●思ったよりもらえないのが養育費
数字が大きい方がわかりやすいため、お金持ちの家庭を例にしてみます。

 

例えば、自分が無収入で15歳未満の子どもを1人育てていて、相手の年収が給与で2000万円の場合、養育費の相場は、月額20万円程度になります。

もちろん、月額20万円というのは一般的にみれば充分な養育費ですが、年収2000万円の場合、月の給与は手取りで100万円は下らないはずなので、仮に養育費しか収入がないということになると、今後子どものために使えるお金は、婚姻中に子どものために使っていたお金に比べて、相当少なくなります。

 

この落差は、以下の理由により生じます。

 

養育費はその算定式上、子どもの養育費をお互いの収入から一定割合ずつ出し合うという仕組みになっています。そのため、自分が無収入の場合、年収2000万円の家庭ではなく、それより年収が低い家庭を想定して養育費が算定されることになります。その上、養育費には当然、親の生活費は含まれていないため(2-5 コラム参照)、仮に無収入が続くことになると、以前よりも年収が低い家庭を想定して算定された養育費の中から、事実上自分の生活費なども支出せざるを得なくなり、結果として養育費として利用できるお金がさらに減ることになります。

 

これが落差が生じる理由です。もともと世帯収入が多く、かつ、双方の収入の差が大きい場合(例えば専業
主婦の場合)などに生じやすい問題です(このような急激な落差の一時的な緩衝材として機能するのが財産分与 (3-8節参照)という制度です)。

●子どもの選択の幅を広げるために
養育費の相場は、みなさんが思っているより低いケースがほとんどですが、相場より高い金額の養育費の支払いを約束することが禁じられているわけではありません(もちろん、事後的に相手から減額請求をされることはありえます)。

すれ違いによって夫婦が離婚することになっても、そして、親権者でなくなったとしても、親子であることは変わりません(よく、誤解されている方がいらっしゃいますが、親権者でなくなっても、法的には親のままです (2-1節参照))。

もちろん、離婚の原因によっては、離婚相手と二度と関わりたくない、関わるべきでないということもあると思います。

しかし、夫婦のすれ違いなどが原因の協議離婚等の場合には、面会交流 (2-11節参照)を中心に、親子間の関係や、父母間の関係(離婚した相手との、子の父、子の母としての関係)が良好に維持できていることが、養育費の不払いのリスクを減少することにつながります。さらには、養育費の増額や、臨時の援助等につながり、結果として希望通りの進学ができるなど、子どもの選択の幅を広げてくれます。

 

◎話し合いのコツポイント
養育費の相場は、みなさんが思っているより低いケースがほとんどです。
結婚したとしても、父・母としての良好な関係を維持することは、養育費の支払いに良い影響を与えます。

 

<法律上のツボ>
●養育費はいくらもらうことができるのか?
養育費の金額は、お互いの話し合いで定めることになりますが、仮に話し合いがつかず、審判手続で決めるということになると、裁判所が作成した「養育費・婚姻費用算定表」 (http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf) を参考資料として決定されることがほとんどです。そのため、話し合いで定める場合でも、この表の金額が相場になっています。

 

使い方について簡単に説明します。15歳未満の子1人を養育している場合、「表1養育費・子1人表」を使用します。

子どもと一緒に暮らしている親の年収が給与で100万円、子どもと離れて暮らしている親の年収が給与で1000万円の場合は、権利者(子どもと一緒に暮らしている親)の給与100万円と義務者(子どもと離れて暮らしている親)の給与1000万円の交差する部分を見ます。該当部分は8万~10万円のブロックですので、この場合、子どもと一緒に暮らしている親は、毎月8万~10万円の養育費を請求できるということになります(8~10万の中で、いくら、という金額をきちんと決めます)。

また、子どもと離れて暮らしている親の年収が自営で400 万円 (なお、自営業者の場合、確定申告書の「課税される所得金額」に対し、実際支出されていない費用(基礎控除や青色申告控除等)を加算して、年収を定めることになります)、子どもと一緒に暮らしている親の年収が給与で100万円の場合は、4~6万円のブロックに該当し、子どもと一緒に暮らしている親は、毎月4万~6万円の養育費を請求できるということになります。

婚姻費用と養育費は混同されがちですが、夫婦の婚姻生活に関する費用(その中には自分の生活費と子どもの養育費も含まれます)の請求が、婚姻費用の分担の請求です。そのため、これに加えて養育費を請求することはできません。

また、婚姻費用には、子どもの養育費のみならず、自分の生活費も含まれますから、全く同じ条件であれば、養育費の方が婚姻費用より低くなります。

ちなみに、この養育費算定表の金額は、公立学校に通うことを前提に算出されているものです。子どもが私立学校に通い始めたことに伴い、例えば、他の兄弟の私立への進学状況 (全員私立なのか、全員公立なのか)、養育費を支払う側の財産状況(お金持ちなのか、苦しい生活を送っているか)、養育費を支払う側の私立進学への意向(当初から大反対だったのか、当初は私立への進学を勧めていたのか)等の事情によって、金額の増額が認められたケースもあります。

■話し合いがつかなかった場合の流れ
もし、2人の間で話し合いがつかなかった場合には、調停という形で、裁判所で話し合いを行うことになります。養育費の金額は、離婚成立前は離婚調停を申し立てて、離婚成立後には養育費請求調停を申し立てて、話し合うことが一般的です。お互い、離婚自体には異存はないものの、養育費の金額について折り合いがつかず、もっぱら養育費の金額を話し合うために離婚調停が申し立てられることも少なくありません(もちろん、養育費の金額を決めずに離婚することもできますが、あまりお勧めできません)。

調停を申し立てると、裁判所から呼び出しの通知があり、2人で同じ日に裁判所に行くことになります。この際、あらかじめ希望すれば、相手方と鉢合わせることがないような配慮をしてもらえます。

調停は、裁判所の調停室で、2人一組の調停委員(大抵、男女のペアです)に対し、交互に言い分を伝え、間に立って仲裁してもらいながら進めていきます。基本的に、相手と直接話したり、会ったりすることはありません(手続きを主宰する、調停委員や裁判官にもよります)。調停の詳細については4-3節を参照してみてください。

調停における話し合いを経ても話し合いがまとまらない、あるいは、相手がそもそも調停に来ない場合には、審判手続に移行し、こちらが提出した資料等を基に、審判官(=裁判官)が、養育費の金額について判断をしてくれます(まだ離婚が成立していない場合には、養育費を先に決めることができないため、調停を不成立とした上で離婚訴訟を起こす必要があります)。

 

養育費を支払えという決定が確定すると、相手の財産や預貯金を差押える等の強制執行ができるようになります。ちなみにこの場合の養育費の金額は、特段の事情がない限り、算定表の金額とほぼ同程度の金額になります。

このように、相手が駄々をこねて話し合いができない場合でも、一応、養育費を定めて回収することはできます。ただ、2-5節にも書いた通り、強制執行で回収するとなると、なかなか大変です。

◎法律上のツボポイント
話し合いがつかない場合、特段の事情がない限り、算定表通りの金額に決まります。

 

◎用語の解説
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・財産分与:婚姻中に夫婦で形成した財産を、離婚に伴い分配・清算する手続き。詳細については、3-2節参照。
・親権【親権者】:①子どものしつけや日常生活の世話(監護教育)と②子どもの代わりに契約や財産の管理 (法定代理人)をする権限【その権限を持つ者】。詳細については、2-1節参照。
・面会交流 :離婚や別居により子どもと離れて暮らしている親が、子どもと会うこと。詳細については、2-11節参照。
・審判手続:調停で話し合いがつかなかった場合等に行われる手続。審判官(=裁判官)が結論(養育費の金額等)を決める手続であり、一般にいう訴訟のようなもの。ただし、訴訟と異なり、非公開である。
・決定【決定書】:審判手続における審判官(=裁判官)の結論 【結論と理由が記載された書類】。例えば、話し合いがつかない場合に、分担すべき婚姻費用の金額についてなされる。一般の方がイメージする判決に相当する。
・婚姻費用:夫婦が共同生活を送るために必要な費用。簡単に言うと生活費。いわゆる養育費も含まれる。詳細については、1-2節参照。
・調停「調停調書]:裁判所における、非公開の話し合いの手続【その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。
・強制執行:調停等で決まった約束を相手が守らない場合に、国家権力が強制的に約束を守らせる手続の総称。例えば、差押えがこれにあたる。
・差押え:例えば、相手方が調停等で決まった養育費を支払わない場合に、相手の勤務先や預金先の銀行に対して、相手への給与の支払いや預金の払い出しを禁止した上で、申立人に支払わせる強制執行の方法。なお、相手の勤務先や実際に預金口座のある支店を特定して申し立てる必要がある。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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