『会社設立のポイント』

2-5-(1) 資本金はいくらにすればよいか


会社法施行により、資本金が1円でもよくなりました。だとすると、資本金は1円でよいということになりますが、果たしてそうでしょうか?

会社を設立することの目的のひとつに、社会的信用を得ることがあります。会社法施行前は、株式会社を設立するのに最低1,000万円の資本金が必要でした(例外あり)。そのため、個人事業と比べて信用力がアップしました。しかし、1円で会社をつくれるようになったことで、「株式会社」というだけでは信用を得られない時代になったともいえます。

そうなると、資本金をいくらにしたらよいのか悩んでしまうと思うので、そのあたりを見ていきます。

①税金面から考えてみる
≪消費税
資本金によって、消費税の課税開始時期が変わってきます。
資本金1,000万円未満(1,000万円ではダメです!)で会社を設立すると、設立後2年間は消費税を納めなくてもいいことになります。たとえば、お客様から預った消費税(売上金額にかかる消費税)100万円、支払った消費税70万円(仕入れや経費にかかった消費税)の場合、100万円から70万円を引いた30万円を国に納めなくてはなりません。

しかし、資本金1,000万円未満の会社であれば、設立第1期と第2期(第1期における事業年度開始の日から6カ月間の課税売上高もしくは給与額が1000万円以下の場合)の消費税が免除されます。

ただし、資本金の額に関わらず1年目に多額の設備投資を行うなど、預かった消費税より支払った消費税の方が多い場合は、その多く支払った分だけ還付してもらえる手続きがあります。

≪法人住民税の均等割
会社が赤字であっても、毎年納めなくてはならない税金として「法人住民税の均等割」があります。
この税金は資本金によって変わってきます。たとえば、従業員が50人の場合、資本金が1,000万円以下であれば7万円ですが、1,000万円超になると18万円に上がります。

②運転資金面から考えてみる
資本金は会社設立後、事業を運営していくのに大事な元手となります。会社の設立時には資本金を一度銀行に預けますが、この預けた資本金を「使ってはいけないのでは?」と考える人もいます。でも、そんなことはありません。資本金はいったん預けたあと、それを自由に開業資金や運転資金に回すことができます。

通常、会社を設立してすぐに取引先から入金が潤沢にあるということはほとんどありません。ここでもし資本金が1円だったとしたら、取引先から入金がないかぎり、開業したその日からペンを1本買うこともできないことになります。資本金が300万円でも500万円でもあれば、その資本金を必要経費に充てることができます。

業種にもよりますが、初期費用+設立時から3~6カ月程度の経費(運転資金 = 必要経費)を資本金と設定することが1つの目安になります。そうすれば、取引先からすぐに入金がなくても、安心して事業を運営することができます。

③借り入れ・融資面から考えてみる
会社設立の際、開業資金の全額を借り入れることは、まず厳しいと考えてください。借り入れを申し込んだ場合、融資担当者はまず資本金を見ます。資本金が1円だったら、融資担当者からすると、上記の②で説明したように、事業が安定して運営できるのか懸念材料の1つとなってしまいます。逆に必要経費(②参照)を熟考したうえで資本金を決めていれば、融資担当者もそれだけ安心して融資を検討することができます。

④許認可面から考えてみる
業種によっては、許認可を受ける条件として資本金が決められている場合があるので、事前に確認しておきましょう。

⑤決算書の観点から考えてみる
会社は事業年度ごとに決算書を作成します。その際、資本金があまりにも少ないと、赤字を少しでも出してしまったら、債務超過(経営破綻状態)になります。
たとえば、資本金が50万円で1期目の利益がマイナス100万円だった場合、50万円の債務超過になります。債務超過になった場合、前頁の融資の話にもつながりますが、いざ借り入れをしようと思っても、融資したお金が戻ってこない可能性が高い会社に誰もお金を貸そうとは思いませんから、非常に厳しくなります。
この場合、資本金を300万円ぐらいにしておけば、当面の運転資金を見込んでも債務超過の状態を避けやすくなります。

⑥信用面から考えてみる
資本金は会社の規模や信用力を見る大事な指標です。会社を設立して登記をすると、資本金は「登記事項証明書(登記簿謄本)」に記載され、誰でも見ることが可能となります。もちろん資本金だけで信用が決まるわけではありませんが、日本ではまだまだ資本金によって会社の印象が決まる慣習が残っています。

ただ事業を行ううえで、取引先やそのほかの関係者が資本金をあまり問題にしないような場合は、少ない金額で設立してもよいでしょう。このあたりはライバル企業や同業他社の資本金を参考にしたりしながら、②の運転資金を考慮したうえで、多めに資本金を用意したほうといった判断もできます。

●まとめ
・資本金は1,000万円未満にする
・初期費用と3~6カ月分の運転資金を1つの目安にする
・許認可の必要な事業によっては最低資本金が決められていることがあるので確認する


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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