『離婚のツボとコツ』

2-5 養育費ってどういう時にもらえるのでしょうか?


<養育費なしという約束で離婚したのですが・・・>
離婚の際、親権のことでとても揉めました。それでも私が強く親権を希望し、結果的に養育費はなし、という約束で私が親権者となりました。

ただ、現在、経済的に辛いのは事実です。このような場合でも、養育費を支払ってもらうことはできますか。

<話し合いのコツ>
●まずは、話し合いを
冒頭のケースのような場合でも、養育費を請求することはできます。

ただ、最初に確認しておかなければならないのが、養育費をもらえる権利があるということと、実際に養育費の支払いが得られることは全く別のことだ、ということです。

どういうことかというと、裁判所で、仮に月10万円の養育費を支払え、という決定が出たとしても、この養育費は、例えば国が責任をもって相手から取り立ててくれたり、相手が支払えない場合に国が立て替えてくれたりするものではありません。

したがって、裁判所が、月10万円の養育費を受け取る権利があると認めてくれても、この10万円は、相手が自主的に支払ってくれない場合には、自分で取り立てる必要があります。具体的には、裁判所に督促してもらったり(履行勧告といいます)、相手の預貯金や給与などを差押えることになります。

この差押えというのが曲者で、預貯金や給与を差し押さえるには、どこに預貯金があるのか、相手が今どこに勤めているのかを知っている必要があります。もしわからなければ、自分で調べる必要があります。

相手が資産家で、家や車を持っていたり、転職しにくい職業である場合にはあまり問題は生じないのですが、預貯金をはじめとする財産もなく、パート勤務だったりすると、預貯金を差押えすることはできないし、やっと給与を差押えてもその職場を辞めてしまう(その場合には、今回の差し押さえで回収できなかった養育費については、新たな職場を探して改めて差押えし直さなくてはならない)、ということもありえます(実際に、差押えされるたびに職場を辞めて転々とする人もいます。また、もちろん養育費を支払わない相手が悪いのですが、裁判所から差押えの通知が届いたことで、会社に居づらくなって辞めてしまう人もいます。ごくまれに、太っ腹な社長が出てきて、滞納分を本人に貸し付ける形でこちらに支払ってくれたりすることもあります)。

なお、例えば、税務署に電話をして、「元旦那が養育費を滞納しているので、差押えのために今の勤務先を教えてください」と言っても、教えてもらうことはできません。

さらに、例えば、相手が生活保護を受けている場合、生活保護費は差押えができませんから、養育費を支払ってもらうことはほぼ不可能です。

このように、裁判所が養育費をもらえる権利があることを認めてくれても、相手が自主的に払ってくれない場合にはいろいろとややこしい手続きをとる必要がありますし、その上で養育費が回収できない場合も少なくありません。

最初から自主的に支払ってもらうことが困難なケース(DVによる離婚など)もあります。そのようなケースでは、毅然とした対応を行うしかありません。しかし、一般的なケースでは、支払いが長期間にわたるという養育費の性質からも、可能な限り自主的に支払ってもらえる関係を構築しておいた方が、きちんと養育費の支払を得られる可能性が高まると思います。

そしてきちんと養育費が支払われることによって、子どもの選択の幅は広がり、また、様々な経験をすることができるようになるはずです。

冒頭のケースのような場合、まずは周囲の協力を得て、きちんと相手に親としての自覚を持ってもらえるように働きかける方が、結果としてきちんと養育費を得ることができるかもしれません。

◎話し合いのコツポイント
支払ってもらえる関係づくりが、養育費を得る近道です。

<法律上のツボ>
●養育費はどういう場合に請求できるのか?
養育費は、子どものための費用を双方の経済力に応じて負担するというものですから、実際に子どものための費用をしているのであれば、相手に請求することができます(金額については2-6節参照)。

病気で働けない、自分の収入だけでは育てられない、といった例外的な場合にのみ請求できる権利ではありません。「お前が親権者になることを希望して連れて行ったんだから自分で全部出せ」という相手の発言は、厳しい言い方をすると、親の自覚を欠く無責任な発言です。

冒頭のケースでは、親権者になることを認める代わりに養育費はなし、という約束になっています。しかし、養育費はいらないと合意した場合や、極端に低い金額での合意が扶養を受ける権利を処分したと言えるような場合には、その合意自体が無効になる可能性があります。

また、不倫の果てに子どもを連れて出た側が親権者になった場合でも、相手(不倫された側)に養育費を請求することはできます。

この結論には納得できない、という相談をいただくことがあります。心情的にはとてもよくわかりますが、養育費はあくまで子どものためのお金です (子どもが小さいうちは、結局お金の使途を決定するのは親のため、そう思いにくい気持ちもよくわかります。ただ、渡したお金の中から、子どもの食費や生活費が出ているのもまた事実です)。

離婚の際は、二人に関する問題と、子どもに関する問題という、2つの問題について考えることになりますが、法律は、この2つの問題を基本的に別次元の問題として取り扱います。

◎法律上のツボポイント
養育費は、ほとんどの場合、請求できます。

◎用語の解説
・親権【親権者】:①子どものしつけや日常生活の世話 (監護教育)と②子どもの代わりに契約や財産の管理(法定代理人)をする権限「その権限を持つ者】。詳細については、2-1節参照。
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・決定【決定書】: 審判手続における審判官(=裁判官)の結論 【結論と理由が記載された書類】。例えば、話し合いがつかない場合に、分担すべき婚姻費用の金額についてなされる。一般の方がイメージする「判決に相当」する。
・審判手続:調停で話し合いがつかなかった場合等に行われる手続。審判官(=裁判官)が結論(養育費の金額等)を決める手続であり、一般にいう訴訟のようなもの。ただし、訴訟と異なり、「非公開」である。
・履行勧告:裁判所で決まった養育費の支払いや面会交流の実施等が守られない場合に、申出により、裁判所が相手に対し、養育費の支払いや面会交流の実施を促す制度。詳細については、2-10節参照。
・差押え:例えば、相手方が調停等で決まった養育費を支払わない場合に、相手の勤務先や預金先の銀行に対して、相手への給与の支払いや預金の払い出しを禁止した上で、申立人に支払わせる強制執行の方法。なお、相手の勤務先や実際に預金口座のある支店を特定して申し立てる必要がある。
・配偶者間暴力(DV): ドメスティック・バイオレンス(domestic violence) 。一般的には、婚姻関係や内縁関係のある相手に対して行使される暴力のことであるが、最近では、婚姻関係や内縁関係のある相手に限らず、交際相手に対する暴力も含む概念として理解されるようになってきている。また、暴力の内容についても、物理的な暴力に限られず、心理的な暴力や経済的な暴力も含む概念として、理解されるようになってきている。なお、上記は、あくまでも社会的な認識の解説であり、必ずしも「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(いわゆるDV保護法)」の定義とは一致しない。
・扶養 【扶養義務】:生活費を渡すなどの方法により、生活を援助すること 【その法的な義務】。
・慰謝料:精神的な苦痛に対する損害賠償(金銭請求)。詳細については、3-1節参照。
・財産分与:婚姻中に夫婦で形成した財産を、離婚に伴い分配・清算する手続き。詳細については、3-2節参照。

【コラム】離婚後に、離婚相手に生活費を請求できるのか?
離婚後に、相手に継続的に生活費を請求することはできません。
例えば、婚姻中であれば、婚姻費用の分担の請求として生活費を請求することができます。また、離婚後であっても、2人の間に子どもがいて、かつ、実際にその子どもに関する費用を支出しているのであれば、本節のとおり、子どもの養育費を請求することができます。
しかし、別れた2人は、離婚と同時に法的には赤の他人になります。そのため、お互いに対して、身分の生活費を請求することはできません。
そうは言ってもいきなり……という場合に、事実上生活費としての機能を果たすのが、慰謝料や財産分与です。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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