『離婚のツボとコツ』

2-4 やっぱり私が親権者になりたいのですが・・・


<子どもと一緒に暮したい!>
離婚する時は、とにかく離婚したい一心で、親権者を相手とする離婚届にサインをしました。その後、子どもと面会交流を重ねていくうちに、段々と子どもと一緒に暮したい気持ちが強くなってきました。

実は、相手は半年後から海外に転勤することが決まっており、しかも、その国はとても治安が悪いそうです。できれば子どもをその国に連れて行って欲しくないと思っています。

<話し合いのコツ>
●事前に話し合いをした上で調停の申し立てを
離婚の際は、夫婦の話し合いで親権者を定めることができましたが、一度定めた親権者を変更する場合には、2人の話し合いだけで親権者を変更することはできません。家庭裁判所に親権者変更の調停を申し立てる必要があります(調停で話し合いがつかないと審判手続に移行します)。

必ず調停をしなくてはならないとはいえ、事前に話し合いができている方が、調停の進行もスムーズです。相手との話し合いが可能であれば、事前に話し合ってみてください。

例えば、離婚後に親権者が重篤な病気になり、およそ子どもを養育できるような状態ではなくなった場合、調停段階において、親権者が親権者変更に応じなかったとしても、最終的には、審判によって親権者変更が認められる可能性は高いと考えられます(当然、その他の事情や、親権者でない側の事情にもよります)。とはいえ、審判まで進むとなると、それなりに時間もかかり、その間、調停・審判手続という負担を負う両親にとっても、養育を受けられない子どもにとっても、好ましい状況ではありません。その意味で、事前の話し合いがうまくできていれば、親権者変更をスムーズに実現し、好ましい状況を早期に実現することができます。

もっとも、裁判所は、調停にあたり、親権者でなくなる方が親権者になる方に脅されている可能性はないか、今、親権者を変更することが本当に子どものためになるのか等を考慮しますので、2人の間で話し合いがついている場合でも、一回目の調停の期日で、すぐに、調停が成立する、ということはないと思います。

なお、親権者変更を希望する理由の伝え方によっては、相手は、親権者として失格だと言われているように感じたり、人格を否定されているように感じることがあります。

誰しも、親失格だと言われれば、強く反発し意固地になってしまいます。病気のために養育ができない状態を責めるのではなく、重篤な病気であれば養育できるような状態でないことは当然であること、今のように負担でがんじがらめの状況であれば誰もが病気になりうること、だからこそ負担が多い今の状況を改善しない限り病気も軽快しないこと、その負担軽減のために親権者を変更したいと考えていること等を伝えてみてください。
ただ、虐待が疑われる等、状況が逼迫している場合には、まずは専門職に相談しておいたほうがよいと思います。

◎話し合いのコツ ポイント
相手を責めるのではなく、負担を分かち合うというスタンスで話し合ってみて。

<法律上のツボ>
●裁判所は子どもの環境を頻繁に変えることに消極的
親権者変更は、2人の話し合いのみで行うことはできず、調停を申し立てる必要があります。調停を申し立てると、離婚調停等で親権者を定める時と同様に、家庭裁判所調査官が調査を行い、報告書・意見書を作成します。

親権者を変更すると、子どもの環境が大きく変わることになるため、裁判所は、現在、子どもを取り巻く環境が良い状態で安定している場合には、積極的に親権者を変更しようとはしません(2-1節参照)。そのため、変更の必要性について明確な説明ができない場合は(やっぱり一緒に暮らしたくなった等)、相手が変更について反対しているのであれば、変更が認められることはまずないと思います。

逆に、病気により子どもの養育に支障を来している、子どもに対して虐待がある、親権者ではないけれど長く一緒に暮らしている等のケースでは、相手が変更についに反対していても、親権者の変更が認められているようです(ただ、親権者変更の判は、個別的な事情を考慮するため、あくまで一般論としてです)。

冒頭のケースの前段のように、一緒に暮したい気持ちになってきた、という理由だけでは、親権者変更は難しい可能性が高いと思います。ただ、後段のような海外転勤、しかもとても治安が悪い危険地帯への転勤ということになってくると(一概には言えませんが)、親権者変更が認められる可能性は高いと思います。

離婚の際は、調停で親権者について話し合いがつかないと、改めて家庭裁判所に対して離婚訴訟を起こし、その中で親権について判断してもらうことが一般的ですが(2-1節参照)、親権者変更の場合には、調停で話し合いがつかなかった場合、そのまま審判手続となり、審判官(=裁判官)が、親権者変更について判断します。

◎法律上のツボポイント
親権者を変更すべき必要性を主張しましょう。

◎用語の解説
・親権【親権者】:①子どものしつけや日常生活の世話 (監護教育)と②子どもの代わりに契約や財産の管理 (法定代理人)をする権限【その権限を持つ者】。詳細については、2-1節参照。
・面会交流:離婚や別居により子どもと離れて暮らしている親が、子どもと会うこと。詳細については、2-11節参照。
・調停【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続「その話し合いの結果が記載された公的な書類)。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。
・審判手続:調停で話し合いがつかなかった場合等に行われる手続。審判官(=裁判官)が結論(養育費の金額等)を決める手続であり、一般にいう訴訟のようなもの。ただし、訴訟と異なり、非公開である。
・期日:裁判所において、調停手続や審判手続などが行われる日のこと。
・家庭裁判所調査官:家庭裁判所で取り扱われる離婚等の家族に関する事件について、法律以外の観点からも適切な解決を図るべく、心理・教育・福祉の知見を有する専門職として事件に関与する裁判所の職員。

【コラム】ひょっとして、虐待を受けている?
面会交流の際に、子どもの身体に痣を見つけたり、あるいは、子どもが汚い服を着ていたり爪が伸び放題である等衛生面についてケアを受けていないのではないかと思う機会があるかもしれません。

これらが常に虐待の兆候であるわけではありません(例えば、痣は、単に活動的で転んだだけであったり、あるいは、イジメなどの別の問題である可能性もあります)。いきなり大騒ぎをすると、せっかく良好に面会交流を行えていた関係が悪化してしまいます。

また、実際に虐待であった場合には、虐待親自身も、自分の虐待に対して罪悪感を持っているケースがほとんどです。虐待を責められたことによって追い詰められてしまい、かえって虐待がエスカレートしたりしますから、適切な方法による介入が必要になります。

そのため、虐待かなと思うような事情があった場合には、相手を問い詰めるより、児童相談所などの専門機関に相談し、助言を受けてください。

その上で、相手には、

「最近困っていることや手伝えることはないかな」

と声をかけてあげてください。もちろん、実際に相談した専門機関が、すぐに介入すべき、という場合であれば、そうしてもらうべきです。

虐待している親も、虐待は悪いことだという認識は持ちつつも、シングルという過酷な育児環境・就労条件のもとで、誰からも支援を得られなかった結果、虐待に及んでしまっているケースがほとんどです。

責めるよりも、まずは適切な支援を提供することが、結果として子どもを虐待から救うことにつながります。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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