『相続実務のツボとコツ』

2-2 成年後見制度って?


<成年後見制度とは?>
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方について、後見人といわれる代理人が、本人を法律的に支援していく制度のことをいいます。社会生活を送ることが困難であるとか、物忘れの症状が進み、家族の判別もつかなくなってしまったなどの状況下では、本制度の活用を検討していくことになります。

後見人の職務は本人の財産管理や契約などの法律行為に関するものに限られており、食事の世話や実際の介護など事実行為は、後見人の職務ではありませんので、あくまで法律的な支援者ということになります。

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度(任意後見制度は後述)の2種類があり、法定後見には後見、保佐、補助の3つの種類があります。いずれも、本人の財産管理など法律的なサポートを目的としており、判断能力の程度によって後見開始の申し立てを行うことになります。

後見は、本人(自ら)やその配偶者、四親等以内の親族等が、後見人選任の申し立てを家庭裁判所へ行うことで開始します。後見人が、家庭裁判所の監督の下で本人の財産を管理していきますので、選任された役見人は、速やかに財産目録を作成し、以後、随時家庭裁判所へ状況の報告を行う等して、財産管理事務を遂行します。

また、後見人は、本人を代理して、本人の所有不動産を売却したり、施設入所のための契約を行うことができます。なお、本人が自分の財産を自由に処分できるとなると、例えば、判断能力が不十分な状態では、悪質なセールスなどから自分の財産を守ることが期待できないため、本人が交わしてしまった契約は、原則として一方的に、取消すことが可能です。

<法定後見制度と任意後見制度の違い>
任意後見制度とは、本人が元気なうちに、あらかじめ自分の判断能力が低下したときに備えて代理人(任意後見人)となる者と公正証書で任意後見契約を締結しておき、自分の生活や療養看護、財産管理に関する事務についての代理権を付与しておく制度です。

任意後見は、本人の判断能力が低下したときに、一般的には任意後見受任者が家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申し立てることにより開始します。以後、任意後見人は、任意後見監督人の監督の下で、任意後見契約で決めた事務について適切な保護・支援を行います。

任意後見制度では、本人に自己決定権を尊重する観点から、法定後見制度に優先して適応されることになっています。したがって、本人が元気な状態のときに、あらかじめ自分が任意に選んだ代理人に代理権を付与し、選任しておくことができます。

法定後見制度では、後見人となるべき者の決定は、本人の財産状況や親族の状況を勘案して、最終的には家庭裁判所の判断で行うため、子や孫などの親族が成年後見人とする申し立てをしても、その通りに選任されるとは限りません。

実際のところ、7割ほどは司法書士や弁護士など、親族以外の職業後見人が就いている実態があります。一方で任意後見制契約は、あくまで契約ですので、本人の判断能力が低下する前にしておかなくてはなりませんし、代理人の権限は、あらかじめ任意に付与した代理権の範囲に留まりますので、成年後見制度のような、本人を包括的に代理する権限がありません。そのため、本人の認知症等の症状が強く、広く法律的な保護・支援
が必要であれば、成年後見制度の活用を検討すべきでしょう。

<後見制度のデメリット>
①資産の凍結
後見制度は、後見人が本人の為に、本人の財産管理をしたり、契約を行う制度であるため、その事務は、家庭裁判所の監督下で著しく制限されます。相続税対策で不動産の買換えをしたい場合や、アパート建築を行うというのは、専ら相続人の為に行うことであり、制度の趣旨に反していますので行うことはできません。

現金を不動産投資に活用するなどといった投機的な運用も、本人の財産を目減りさせるリスクのあるような行為も後々問題となる可能性があり、事実上困難です。任意後見の場合でも、代理権目録に記載された範囲で無制限に事務遂行が行えるわけではなく、制度趣旨からしても、やはり同程度の制約があると考えるべきです。

このように、最小限必要な範囲での財産管理が可能なため、後見制度を活用すると、事実上の財産凍結
状態となります。本人が本来望んでいたことや、そのご家族が望んでいたことを、後見制度では実現できない可能性があるため、認知症対策として、後見制度の活用が問題となることも少なくありません。

②職業後見人
また、成年後見人が専門家などの職業後見人の場合、全く知らない第三者が本人の財産を管理することになるため、抵抗を覚えることも少なくありません。毎月報酬も発生しますが、職業後見人の報酬の相場は、財産額に応じ、2万円~5万円とされています。成年後見制度は、基本的には本人が亡くなるまで継続し、途中で自由に中止することができませんので、ある程度資金がなければ大きな負担となります。

任意後見契約の場合、任意後見人への報酬は、契約で定めなければ無報酬とすることも可能ですが、任意後見監督人への報酬は家庭裁判所が定めることとなっており、毎月1万円~3万円の報酬が相場となっています。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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