『離婚のツボとコツ』

2-15 相手が子どもを連れて遠くに引っ越すと言っています


<遠くに引っ越されてしまうと、面会交流が大変になる>
離婚についての話し合いの際は、親権者になることにこだわる気持ちもあったのですが、最終的には相手を親権者として、代わりに月2回子どもと面会交流するということを決めて離婚しました。

 

離婚後は、子どもと同じ東京に住んでおり、負担も少なくて済んだため、毎月2回欠かさずに面会交流を行ってきました。

 

ですが先日、相手から、今度転勤で沖縄に引っ越すことになったと言われました。しかも、その次は、ヨーロッパへの転勤もありうると言われました。

 

<話し合いのコツ>
●引っ越す前に相談して、理解を求める
冒頭のケースのような引っ越しは、原則として法律上問題とはならないと考えられます。ただし、事情によっては、親権者変更の理由になることはありえます(2-4節参照)。

とはいえ、遠方に引っ越すということは、離れて暮らしている親にとっては、それだけ面会交流の負担が増すことになります。会いに行くための時間の確保も難しくなりますし、費用も馬鹿になりません。不安や寂しさもあります。

法律上、特に問題がないからといって、事前に相談もせずにいきなり引っ越してしまい、面会交流の日程調整の連絡の際に初めて引越しの事実を伝える、といった感じでは、父母としての信頼関係に間違いなく悪影響を及ぼします。せっかく離婚後から今まで、父母として協働して子どもを育てていく環境をうまく構築できていたのに、その信頼関係が全て水の泡になってしまいます。

 

関係が悪化してしまえば、例えば、今まで順調に振り込まれていた養育費の支払いも滞るようになるかもしれません。もちろん、引っ越すことは、原則として法律上問題となりませんから、引っ越しを理由に相手が養育費を支払わないことは認められません。支払わない場合には、強制執行をすることもできます。ただ、子どものために養育費をきちんと確保しようとするのであれば、可能な限り自主的に支払ってもらえる関係を構築しておくに越したことはありません (2-5節参照)。

引越しが決まった場合には、すぐに、相手に対して引越しの理由と共に報告し、今後の面会交流の方法について話し合うようにしてください。

例えば、今までの面会交流が1ヶ月に1回であったものを、2ヶ月に1回として代わりに宿泊を伴うことにするという方法が考えられます。また、子どもがそれなりの年齢に達している場合には、(子どもの希望を踏まえつつ) 離れて暮らしている親が子どもの住んでいる所に行くのと、子どもが離れて暮らしている親の住んでいる所に行くのとを交互に行い、子どもが離れて暮らしている親の住んでいる所に行く場合の旅費は一緒に暮らしている親の負担とする、という方法も考えられます。

◎話し合いのコツポイント
引っ越しは、あなたが思っている以上に相手に大きな影響を与えます。

 

<法律上のツボ>
●原則として親権者が子どもを連れて引っ越すことは問題ない
親権者にも自身の生活があります。そのため、親権者自身が引っ越すことを止めることはできませんし、親権者として、子どもの養育(しつけや日常生活等)に責任を持つ立場である以上、引っ越しに際して子どもを連れて行くことは、むしろ当然のことであり、これを止めることもできません。

ただ、例えば、子どもが私立の学校に進学しており、子どももその学校を卒業することを強く希望しているケースなど、子どもにとっても引っ越さない方が良いケースにおいては、裁判所に親権者変更の調停を申し立て、あなたが親権者となって子どもを養育し、今の学校に通わせ続ける、という方法も考えられます (2-4参照)。

 

また、相手が面会交流を妨害する意図で、あえて遠方に引っ越す場合には、その引っ越しは、相手の親権者としての適格性を疑わせる事情となります。こちらから親権者変更を申し立てた場合には、親権者の変更が認められる場合もあるかもしれません(2-12節参照。ただ、そのようなケースで、相手の妨害の意図を証明することはなかなか困難です)。

 

なお、離婚に際し、(面会交流のために)相手に引っ越しをしないことを義務付ける約束は、おそらく無効になるのではないかと思います(調停の場合には、そもそも調停で定める条項の中に入れてもらえないのではないかと思います)。

◎法律上のツボポイント
場合によっては、親権者の変更を考えましょう。

 

<用語の解説>
・面会交流:離婚や別居により子どもと離れて暮らしている親が、子どもと会うこと。詳細については、2-11節参照。
・親権【親権者】:①子どものしつけや日常生活の世話(監護教育)と②子どもの代わりに契約や財産の管理 (法定代理人)をする権限【その権限を持つ者】。詳細については、2-1節参照。
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・強制執行:調停等で決まった約束を相手が守らない場合に、国家権力が強制的に約束を守らせる手続の総称。例えば、差押えがこれにあたる。
・差押え:例えば、相手方が調停等で決まった養育費を支払わない場合に、相手の勤務先や預金先の銀行に対して、相手への給与の支払いや預金の払い出しを禁止した上で、申立人に支払わせる強制執行の方法。なお、相手の勤務先や実際に預金口座のある支店を特定して申し立てる必要がある。
・調停【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続【その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。

 

 


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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