『離婚のツボとコツ』

2-13 養育費を支払わないなら子どもに会わせなくてもいい?


<養育費を支払わないなんて親じゃない!?>
離婚したばかりの頃は養育費がきちんと支払われていたのですが、離婚から半年くらいすると、養育費の支払いが約束の日にちから遅れたり、1万円足りなかったりということが増えてきました。

何となく言いにくくて、ここまでずるずると来てしまいました。

面会交流に関する連絡は、毎月決まった日に必ず来るのですが、私の本音としては、養育費の支払をおろそかにするような親の自覚のない人には、子どもを会わせたくありません。

<話し合いのコツ>
●まずは支払えない理由を聞きましょう
離婚をして、ひとりで仕事をしながら、育児もするというのは、とても大変なことです。せめて、養育費ぐらいはきちんと支払って欲しいというのは、当然の気持ちです。また、養育費を支払うことは、子どもに対する親の責任ですから、その支払をおろそかにすることは、親としての自覚に欠けるのではないか、というのも、もっともな気持ちです。

養育費を支払わない親の中には、手元にお金があるのに、相手に対する婚姻時の確執から、嫌がらせとして支払わない人もいますし、ルーズな性格で決められた日に支払ってくれない人もいます。あるいは、お金が手元にない理由が浪費にある人もいます。

その一方で、支払いたいという気持ちはあるものの、不景気で残業代がカットになった、親が転倒事故を起こして介護状態になり出費がかさんだ、賞与で何とか滞納分を支払おうと思っていたら賞与がカットになった、という人もいます。どんなに支払いたいという気持ちがあっても、手元にない時には本当にどうしようもないのがお金です。

もちろん、事情があるなら話して欲しいし、きちんと説明するのが責任だという気持ちはあると思います。当然の気持ちです。ただ、お金が支払えない、というのは、言い出しにくいことです。できれば請求する側から事情を聞いてもらえればと思います。

こちらだって聞きにくいし、なぜそこまで気を使わなくてはならないのか、という気持ちももっともです。ただ、面会交流は、養育費がきちんと支払われる基礎となるものであり (2-7 節参照)、充分な話し合いもなく、養育費の支払いがないことを理由に、面会交流についての態度を硬化させると、相手も養育費に対する態度を硬化させます。

最終的に、今後の養育費について強制執行を要する事態を生じることもあり得ます。しかし、養育費の強制執行には困難な面もある上(2-5節参照)、後で説明するように、養育費や面会交流の問題は、法的に解決しようとすると、極めて不毛な状況になりがちです。

また、法的解決の過程で、相手から養育費減額の調停が申し立てられ、相手の現在の経済力によっては、養育費が大きく減額されることもあり得るす(元々決まっていた養育費は6万円で、現在毎月5万円しか支払われていなかったが、現在の給与を前提とすれば、4万円が相当だった、という結論になることもあり得ます。2-10節参照)。このようなリスクを踏まえて、まずは、事情を聞いてみてください。

なお、相手の事情を聞いたり、養育費を督促したりすることを子どもにさせるのは、絶対にやめてください。子どもが板挟みになるなどしてしまいます(2-11節、2-12節参照)。

●養育費も面会交流も子どものためのもの
養育費は、子どもの生活を支える大きな柱のひとつですが、面会交流もまた、子どとの情緒を育てる大きな柱のひとつです。
離れて暮らしている親から養育費が支払われないから、(子どもが会いたがっていても)制裁や交渉の材料として面会交流させないというのは、子どもにとっては養育費が支払われていない上に面会交流もできないという、両損の状態です。

その意味で、養育費が支払えていない事情を聞いてみて、ある程度納得できる理由があるのであれば、滞納額や本来支払うべき時期について、改めて確認した上で、一旦養育費のことを棚上げする、ということも一つの選択肢です(もちろん、納得かいかない相手に対しては、法的手続きをとることもできます。2-10節参照)。

また、面会交流させないことを正当化するために、あるいは、単なる愚痴であっても、子どもに対して、「養育費を支払ってくれないなんて、親とは思えないよね」「あなたのことを子どもとは思っていないんだよ」「親の自覚がない人とは会いたくないよね」というような声かけをすることは、子どもを深く傷つけることになりますし、法的にも不利な状況を生じることがあります (2-12節参照)。

◎話し合いのコンポイント
まずは養育費を支払えない理由を聞きましょう。
養育費も面会交流も、子どものためのものです。

<法律上のツボ>
●面会交流は養育費へのお礼ではありません
例えば、わたしたちがお店で物を買うときは、商品と引き換えにお金を支払います。逆に言うと、商品を渡してくれないのであればお金を支払わないよ、と言うことができます。これを、法律用語で、同時履行(の抗弁)といいます。

しかし、養育費と面会交流は、このような同時履行の関係に立つものではありません。養育費を支払わないなら面会交流をさせないよ、と言うことはできませんし、逆に、面会交流させないなら養育費を支払わないよ、と言うこともできません。すでに説明したように、そもそも面会交流も養育費も、子どものためのものであり、どちらも得られない状態は子どもにとって両損の状態だからです。

養育費の支払いがないのであれば、面会交流をさせた上で、養育費について強制執行を行うことになりますし(2-10節参照)、面会交流をさせてくれないのであれば、養育費を支払った上で、面会交流について強制執行を行うことになります (2-12節参照)。お互いに養育費を支払わず、面会交流もさせない状況は、お互いがお互いに対して強制執行をかけ合うという、極めて不毛な状況になります。

養育費も面会交流も、子どものためのものである、という視点を忘れないでください。

◎法律上のツボポイント
養育費と面会交流は、同時履行の関係にはありません。

◎用語の解説
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・面会交流:離婚や別居により子どもと離れて暮らしている親が、子どもと会うこと。詳細については、2-11節参照。
・強制執行:調停等で決まった約束を相手が守らない場合に、国家権力が強制的に約束を守らせる手続の総称。例えば、差押えがこれにあたる。
・調停【調停調書】裁判所における、非公開の話し合いの手続【その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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