『離婚のツボとコツ』

2-12 子どもを会わせたくないのですが


<確かにあなたは親だけど......>
もう離婚するしかないと思い、私が子どもを連れて家を出て、別居しました。別居しながら離婚について話し合いをしていたところ、相手から子どもに会いたいと言われました。同居中、相手は仕事の都合で深夜に帰宅してばかりで、子どもともほとんど顔を合わせていませんでした。そのため、子どもは相手に何となく苦手意識を持っていて、会いたくないと言っています。

 

<話し合いのコツ>
●子どもの気持ちを伝えて猶予を得る
離れて暮らしている親から子どもに対して虐待があった場合や、子どもが離れて暮らしている親に対して何らかの理由で恐怖心を持っていたりする場合等は別ですが、裁判所は原則として、離れて暮らしている親と子どもとの面会交流を、可能な限り認める方向で判断します。

 

個別の事件を通じて感じられる裁判所の基本的な態度は、仮に、今の時点では親子の関係が悪くても、その関係を改善することが、子どもの今後の人生に良い影響を与える、というものです。

誤解されがちですが、裁判所は、一緒に暮らしている親が子どもに会いたくないと言わせているのではないかと疑っているわけではありません。子どもが離れて暮らしている親に対して、苦手意識を持っていることを前提に、そのような親子関係を改善するために面会交流を実施する必要があると考えています。

そのため、裁判所は、子どもが小さいうちは (少なくとも小学校高学年くらいまでは)、子どもが離れて暮らしている親に会うことを嫌がっていたとしても、子どもと離れて暮らしている親が会えるように、一緒に暮らしている親に協力を要請します。

そのような観点からは、冒頭のケースのような場合、相手が子どもに会いたいと言って面会交流を求める調停を申し立ててくると、最終的には、面会交流をさせなければならない、という結論になる可能性は高いと考えられます。

とはいえ、実際に子どもが苦手意識を持っていることは間違いありません。苦手意識のある親と会えば、ストレスで発熱したり赤ちゃん返りをしたりすることもあります。心身の急変は、子どもにとって苦痛ですし、子どもと一緒に暮らしている親の負担にもなります。また、調停が申し立てられると、面会交流をさせるべきか否か、させる場合にはどのような形で行うべきかを決めるために調査が行われますが(2-11節参照)、このような調査も、子どもにとって大きな負担となります。

その意味では、今は子どもが会いたがっていないけれども、将来会うことができるように尽力する、という形で相手の面会交流の希望に対して一定期間の猶予を申し入れるのもひとつの話し合いの方法だと思います。

 

そして、猶予を申し入れる場合には、例えば、1年後、小学校に入学したら、中学に入学したら、などと、期間は明確にした方が良いでしょう。もちろん、人間関係や気持ちの問題に明確な期限を設定することは困難です。ただ、人間の心理として、明確な期限が設定されていない提案には、やはり相手も応じにくいところがあります。また、一度決めた期限を守らないということになると、紛争が泥沼化して、結果的に子どもの成長に悪影響が生じることも十分ありえます。真にやむを得ない場合は仕方がないとしても、原則として、一度決めた期限は守るようにしてください。

明確な期限を設定しつつ、約束をきちんと守るために、理由をきちんと説明した上で、あらかじめ長めの期間を提案するというのは、話し合いのひとつの方法です。

 

●実際に会わせることになったら
冒頭のケースのような場合はもちろん、円滑に行われているケースであっても、面会交流は双方の親にとって少なからず負担を生じます。双方の親に少なくない負担があっても行うのは、ひとえに面会交流が子の健やかな成長に資するからです。面会交流が有意義なものになるよう、以下の点に気を付けてください。

 

(1) 日頃から相手の悪口をいわない。
⇒子どもにとっては、あなたも相手も大切な親です。相手の悪口を耳にすることで、自分が否定されているような気持ちになる子どももいます。また、面会交流に罪悪感を覚えるようになり、面会交流に消極的になります。あなたは注意していても、日常生活の中で、あなたの親(子どもにとっての祖父母)から、あなた可愛さで相手の悪口が出ることも少なくありません。あなたの親とも事前に意識を共有できていると良いと思います。

 

(2) 面会交流の際は笑顔で送り出し、帰ってきたら笑顔で迎える。
⇒一緒に暮らしている親が面会交流に消極的だと感じると、面会交流に罪悪感を持つようになります。子どもながらに葛藤を抱え、面会交流を楽しむことができなくなります。

(3) 相手の様子を根堀り葉堀り聞かない。
⇒ー緒に暮らしている大好きな親からの質問ですから、いろいろと話してあげたいという気持ちになる一方で、離れて暮らしている親との関係でスパイをしているような後ろめたい気持ちになり、板挟みになります。

 

(4) 「~と伝えておいて」と、伝書鳩のように使わない。
⇒間に子どもが入ることで、情報が正確に伝わらない可能性があり、それが新たなトラブルにつながることがあります。また、面と向かって言いにくいこと(例えば、養育費の督促だったり、養育費の支払が遅れるという連絡)は、子どもも言いにくいことですし、言われた側がつい子どもに負の反応を返してしまうことも多く、子どもに良くない影響があります。

(5) 養育費の支払に関する感謝を子どもにも伝えておく。
⇒子どもにとって、良い教育効果があります。また、子どもが、養育費という形で、離れて暮らしている親から生活や夢への支援を受けていることを実感できていると、面会交流の際に態度や会話に現れ、相手も、子どもの生活や夢を支援していることを実感できます。結果として、より充実した面会交流を実現することができ、養育費の不払い等も減少します。

◎話し合いのコツポイント
子どもが会いたがっていない場合には、明確な期限を設定して面会交流までの猶予をもらいましょう。
面会交流がみんなにとって有意義な時間になるような配慮を。充実した面会交流の実施は、養育費の支払の確保にもつながります。

<法律上のツボ>
●面会交流に対する態度は親権者としての適格性の判断に跳ね返る
理由はさておき、面会交流には応じられないということになると、子どもと離れて暮らしている親から面会交流の調停を申し立てられる場合があります(2-11節参照)。

面会交流に応じない理由が、子どもと離れて暮らしている親から子どもに対する虐待等にある場合は別ですが、既に説明したように、最終的には、原則として月1回程度の面会交流を認める、という判断が、審判官(=裁判官)によってなされる可能性が高いです。

さらに、この面会交流に対する態度は、親権者としての適格性の判断材料とされることがあります。例えば、子を連れて別居後に離婚調停となり、その最中に相手から面会交流の調停を申し立てられたにも関わらず、理由なく面会交流に応じない状況が続くと、親権者を誰にすべきかという判断の際に悪影響がある(相手方が親権者とされる)可能性がある、ということです。

 

なお、平成26年に、親権者である母親の面会交流への態度を考慮し、親権者を父に変更(監護者は母親のまま)したという審判例がありました。審判の理由を簡単に要約すると、離婚前は父親と子どもの関係は良好だったにもかかわらず、離婚後の面会交流において子どもが拒否する態度をみせるようになり、面会交流をうまく行うことができなくなったのは、母親の態度に原因があり、そのような状態を解消するために、親権者変更を認めるという理由です。

 

●裁判所で決まったのに会わせない
調停または審判手続で面会交流を行うことが決まったにもかかわらず面会交流に応じない場合、まずは履行勧告を受けることがあります (2-10節参照)。それでも応じない場合には、あるいは履行勧告なく最初から、強制執行の申し立てをされることがあります。

面会交流については、一緒に暮らしている親から、強制的に子どもを奪い取って暮らしている親に渡すという執行方法(直接強制と言います)は、子どもの心を傷付けるという理由から認められていません。代わりに、面会交流させないのであれば、間接強制金(一種の罰金のようなもの)を支払いなさいという形で、心理的な強制をかける執行方法 (間接強制と言います)が認められています。

ここまできてしまうと、間接強制金もさることながら、相手から親権者変更の調停を申し立てられた場合に、かなり不利な状況になってしまうと思います。

 

◎法律上のツボポイント
理由なく面会交流に非協力的な態度は、親権を危うくします。
裁判所で決まったことを守らないと、どんどん不利になっていきます。

 

◎用語の解説
・面会交流:離婚や別居により子どもと離れて暮らしている親が、子どもと会うこと。詳細については、2-11節参照。
・調停【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続【その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。
・養育費:親が支払わなくてはならない、子どもの生活費。親権者でなくなっても、親子関係はなくならない。詳細については、2-5節参照。
・親権【親権者】:子どものしつけや日常生活の世話(監護教育)と②子どもの代わりに契約や財産の管理(法定代理人)をする権限【その権限を持つ者】。詳細については、2-1節参照。
・監護者:親権のうち、子どものしつけや日常生活の世話 (監護教育)に関する権限を持つ者。
・審判手続:調停で話し合いがつかなかった場合等に行われる手続。審判官(=裁判官)が結論 (養育費の金額等)を決める手続であり、一般にいう訴訟のようなもの。ただし、訴訟と異なり、非公開である。
・履行勧告:裁判所で決まった養育費の支払いや面会交流の実施等が守られない場合に、申出により、裁判所が相手に対し、養育費の支払いや面会交流の実施を促す制度。詳細については、2-10節参照。
・強制執行:調停等で決まった約束を相手が守らない場合に、国家権力が強制的に約束を守らせる手続の総称。例えば、差押えがこれにあたる。

【コラム】不貞をするような人に子どもを会わせたくないといわれました
不貞は、あくまで夫婦の間の問題です。たとえ不貞をしてしまったとしても、あなたが子どもにとって大切な親である、ということは変わりません。また、裁判所も、夫婦の問題と親子の問題は別だと考えており、離婚の原因が不貞である、という一事だけでは、面会交流を制限しようとはしません。

ただ、不貞は信頼関係を損ねる行為です。不貞をするような信頼できない人には大事な子どもを預けられない、面会交流なんてさせられない、という相手の気持ちも、理由のないことではないと思います。この点については、誠実に面会交流を続けていく中で、信頼を得ていくしかありません。

 

くれぐれも、不貞相手を連れて面会交流をするようなことだけはないようにしてください。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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