『離婚のツボとコツ』

2-11 離婚したら子どもと会えなくなるのでしょうか?


<子どもに会いたい!>
離婚の際に、相手が親権者になるということで話がつきました。離婚後、生活も落ち着いてきたので、別れた相手に子どもに会いたいと連絡したところ、「あなたはもう赤の他人だから会わせない」と言われてしまいました。

<話し合いのコツ>
●円滑な面会交流に向けた信頼関係の構築を
誤解が多いため、最初に確認しておきたいことがあります。親権者であることと親であることは全く別の話です。親権者でなくなっても、血がつながっている親であることは当然変わりませんし、法的にも親のままです。安心してください(2-1節参照)。

子どもと離れて暮らしている親が子どもに会うことを、面会交流といいます。かっては面接交渉といわれていました。もし、離婚に関する他の本を読んでいて面接交渉という言葉が出てきたら、同じ意味だと思ってください。

子の福祉を害することがない限り、という制約はあるものの、親は子どもに会うことができます。

面会交流を行うためには、子どもと一緒に暮らしている親の協力が必要不可欠です。子どもが中学生くらいになれば別ですが、小学生、更には乳幼児だと、面会交流のための送迎やスケジュール調整を考えても、相手の協力なしに面会交流を行うことはできません。円滑に面会交流を行うためには、相手の協力や、相手の協力を引き出す信頼関係の存在が大切になります。

この信頼関係ですが、一度は愛し合って結婚した者同士だから…、と考えるのは楽観的にすぎます。離婚に至る事情は様々だと思いますが、離婚に至っている以上、2人の間の信頼関係はゼロ、場合によってはマイナスになっているという前提で(実際には、きちんと信頼関係があったとしても)、新たに信頼関係を構築していくくらいの気持ちで面会交流に臨む方が、結果として円滑に面会交流を行うことができると思います。

信頼関係があるはずという思い込みで楽観的な対応をすると、すぐに面会交流に支障を来します。ここで面会交流に際してどのような点に注意しなければいけないのか、ポイントを確認してみましょう。

(1) 約束した面会交流の終了時間が近づいているけれど、子どもが楽しんでいるから5分くらいの遅刻はいいだろう、電車1本分くらい遅くても問題ないだろう。
⇒相手に、事故に遭ったのではないだろうか、あなたに連れ去られたのではないだろうかという不安を抱かせます。

(2) 約束ではレストランと映画館で面会交流を行う予定だったのに、突然、相手に連絡なくテーマパークに連れて行って、そこで面会交流を行う。
⇒いつ大災害が起きてもおかしくはなく、一緒に暮らしている親としては子どもの所在は重大な関心事です。

(3) 一緒に暮らしている親に断りなく会う。
⇒一緒に暮らしている親にとって、子どもの所在は重大な関心事です。また、子どもとの面会の予定が両親の間で共有できていないと、面会交流という名目で、子どもが友達のところに外泊したり、習い事などをさぼって友達と遊びに出かけたりするようになり、緊急時に所在不明であったり、交友関係の監督に支障を来すと行ったことが生じます。

(4) 相手の悪口をいう。
⇒それ自体が信頼関係を損ねる行為です。また、子どもにとってはどちらも大切な親であるため、板挟みのような気持ちになったり、自分が批判されているような気持ちになってしまいます。その結果として、罪悪感から面会交流を楽しく過ごすことができなくなってしまうこともあります。自分は注意していても、自分の親(子どもにとっての祖父母)から、「あなた(子ども)のお母さん or お父さん(相手)はひどい親で・・・・・」といった形で悪口が出ることがあります。あなたの親(子どもの祖父母)にとって、相手はかわいい子ども(あ
なた)を傷つけ、離婚した憎き相手であることが多く、どうしても悪口が出てしまいがちです。

(5)一緒に暮らそうと言う。
⇒子どもと一緒に暮らしている親の、連れ去りや親権喪失の恐怖を煽ることになります。また、子どもと一緒に暮らしている親が監督上必要な指導をした際に、子どもが離れて暮らしている方の親のところへ行く、などと言い出すようになり、以後、監督上必要な指導ができなくなってしまう可能性もあります。

(6) プレゼントを沢山あげる。
たまにしか会えないからサービスをしてあげたい気持ちはとてもよくわかります。しかし、相手からすると、子どもを買収しようとしているように見えたり、教育方針の問題で困ってしまったりします。

(7)子どもの都合を尊重しない。
⇒子どもにも、友達との約束や学校行事、習い事などの予定があります。また、体調不良なども当然起こりえます。極端な例としては、大好きなゲームの発売日の翌日に面会交流を行った場合、面会交流の最中に上の空であったり、携帯ゲーム機が手放せなかったりします。子どもと一緒に暮らしている親が円滑な面会交流が行えるように協力してくれるのは、面会交流が子どもにとって楽しい思い出になると思っているからこそです。子どもが面会交流を楽しめるよう、子どもの予定を尊重する柔軟な対応が必要です。

といった対応がないように注意をしてもらえればと思います。

また、上記に限らず、相手との約束を、これくらいなら問題ない、と勝手に破ったり、例外を作ったりせず、判断に迷うことについてはきちんと確認をとることを心がけてください(もちろん、あなたも親ですので、確認するだけではなく、場合によっては話し合うことがあってもよいと思います。ただ、一緒に暮らしている親ならではの立場は尊重してあげてください)。

面会交流の際に、約束事が守られないような事態が重なると、相手からの信頼も損なわれていきます。

信頼できない相手と子どもを面会交流させるということは、相手にとって精神的に大きな負担になりますから、結果として、法的に要請される最低限度の範囲でのみ面会交流を行う状況がいつまでも続くということになります。

逆に、きちんと信頼関係を構築することができれば、自然と面会交流の頻度は増し、面会交流の方法は深まっていきます。結果として子どもの幸せにつながっていくはずです。

●面会交流の頻度や方法
面会交流の頻度は、当初は月1回程度とすることが多いようです。
月1回と聞くと少なく感じるかもしれませんが、これは、子どもの体調 (小さい子どもは、面会交流のための移動やそれに伴う環境の変化、さらには離れて暮らしている親と久しぶりに会うことによる気分の高揚・興奮などにより、大人が思っている以上に疲労します。面会交流後にいつも熱を出す子どももいるようです)や、子どもと一緒に暮らしている親への負担(面会交流は、日常生活とは異なる特別な行事であり、精神的・肉体的な負担も大きく、無理をさせると結果的に子どもの養育に悪影響を生じます)に配慮してのことです。

相手との信頼関係の構築に伴い、相手の負担感は減っていきますから、自然と頻度が増していくことが多いようです(日頃の面会交流とは別に、子どもの学校行事に呼ばれたり、子どもが誕生日やクリスマスを一緒
に過ごしたがっている、という連絡が来ることもあるようです)。

面会交流の方法については、家の近くの公園や、ショッピングモール(フードコートとプレイパークが併設されているようなところであれば1日過ごせます)で一緒に遊ぶ、さらに、連休などを利用して離れて暮らしている親の家に泊まったり、一緒に旅行をしたり等の方法が考えられます。

また、しばらく会っていなかった場合には、子どもが何を話していいのか困ってしまうこともあるため、映画を見たり、ボーリングなどのゲームをしたりするなど、話題を提供してくれたり、会話がなくても場を共有できる面会交流の方法を選択するのもひとつの手段です。

面会交流という行事は、子どもにとっても親にとっても人生で初めての試みだと思います。最初は、みんなにとって負担が少ない形で進めていった方が、結果として長く続けていけるように思います。1回目の面会交流は、双方の負担を考えて、ファミリーレストラン等で食事をするだけにとどめることも考えて良いかもしれません。

その結果として、楽しそうに面会交流の話をする子どもの姿を見て、もっと子どもをあなたに会わせてあげなくては、と一緒に暮らしている親が考えるケースも少なくありません。

調停で、何とか、1回目の面会交流にこぎつけ、それがとてもうまくいった場合には、次の調停の期日で、今までとても頑なだった相手から驚くような譲歩案が出てくることも稀ではありません。

◎話し合いのコツポイント
「世界で一番信頼できない人に、世界で一番大事なものを預けるのが面会交流だ」という気持ちで、臨んでください。
子どもに無理がない頻度や方法で続けるのが、長続きの秘訣です。

<法律上のツボ>
●相手が会わせてくれない場合には調停を起こすことに!
離れて暮らしている親は、子の福祉 (簡単にいうと、子の健やかな成長という意味です)を害しない限り原則として子と面会交流をすることができます。離婚成立前に、相手が子どもを連れて別居した場合でも、離婚後と同様に請求することができます。

子どもと一緒に暮らしている親が、面会交流を認めてくれない場合には、裁判所に面会交流の調停を申し立てることになります。調停で話し合いがつかなければ、養育費と同様、審判手続になり、審判官(=裁判官)が判断をすることになります。

養育費と異なり、面会交流については、調停段階から家庭裁判所調査官が関与して、家庭状況や養育状況の調査を行ったり、意見を述べたりすることがあります(親権者に争いがある場合とは調査内容が若干異なりますが、イメージとしては同じです。親権者の場合については2-1節を参照)。また、必要に応じて、裁判所内の部屋で、面会交流の試行を行います。

面会交流の試行は、概ね以下のような手順で行われます。

まず、子ども向けのおもちゃが置いてある部屋(プレイルーム)に、子どもと共に、一緒に暮らしている親と家庭裁判所調査官が入ります。子どもが慣れてきたところで、一緒に暮らしている親と調査官は、離れて暮らしている親と入れ替わります。そして、別室から、調停委員や家庭裁判所調査官、一緒に暮らしている親などをはじめとする関係者が、離れて暮らしている親と子どもの面会交流の様子を観察します(場合によっては録画がなされます)。なお、子どものいる部屋と別室とはマジックミラーで仕切られており、子どものいる部屋から別室を見ることはできません。

このような調査を踏まえて調停で話し合い、それでも話し合いがつかない場合には審判手続になり、必要に応じて新たな調査を行った上で、審判官(=裁判官)が断することになります。

面会交流の頻度については、月1回程度という判断がいわゆる相場だと言われています。とはいえ、調停での話し合いで決着せず、審判までもつれ込むようなケースでは、離れて暮らしている親が子どもを虐待していたという主張や、育児に全く関与していなかったため子どもが怖がってしまっている等の主張があるケースも少なくありません。

虐待があった場合には、現時点での面会は認めない(現時点での面会は子の福祉を害する)という判断が出ることもありますし、子どもが怖がっているという場合には、関係改善のため文通から始めたり、一緒に暮らしている親から離れて暮らしている親に対して子どもの写真を送る形で様子を見よう、という判断になることもあります。

このように、事情によっては面会交流が認められなかったり、面会交流が認められたとしても会う以外の形での面会交流になることもありえます。

なお、特に、子の福祉を害する事情がないにもかかわらず面会交流を拒否することは、親権者としての適格性を疑われることにつながります (2-12節参照)。

◎法律上のツボ ポイント
子どもと一緒に暮らしている親が子どもに会わせてくれない場合には、裁判所に調停を申し立てましょう。

◎用語の解説
・親権【親権者】:子どものしつけや日常生活の世話 (監護教育)との子どもの代わりに契約や財産の管理 (法定代理人)をする権限「その権限を持つ者】。詳細については、2-1節参照。
・面会交流:離婚や別居により子どもと離れて暮らしている親が、子どもと会うこと。詳細については、2-11節参照。
・調停【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続【その話し合いの結果が記載された公的な書類】。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。
・期日:裁判所において、調停手続や審判手続などが行われる日のこと。
・審判手続:調停で話し合いがつかなかった場合等に行われる手続。審判官(=裁判官)が結論(養育費の金額等)を決める手続であり、一般にいう訴訟のようなもの。ただし、訴訟と異なり、非公開である。
・家庭裁判所調査官:家庭裁判所で取り扱われる離婚等の家族に関する事件について、法律以外の観点からも適切な解決を図るべく、心理・教育・福祉の知見を有する専門職として事件に関与する裁判所の職員。
・養子縁組:法律上の親子関係を成立させるための手続。通常の養子縁組の場合、養子縁組に伴って実親と子どもの親子関係が消滅することはない。なお、法律上の地位は、実親と養親でほぼ変わらない。

【コラム】子どもと一緒に暮らしている親が再婚したら、子どもにも会えなくなるの?
子どもと一緒に暮らしている親から、ある日突然、今度再婚することになった、子どもと一緒に新しい家庭を作るから、もう子どもに会わないでほしい、という連絡が来ることがあります。

確かに、子どもが一緒に暮らしている親の再婚相手やその連れ子と良好な関係を築きつつある場合、今まで通り面会交流を続けると、子どもが混乱するなどの悪影響があるのではないかという親の不安はもっともかもしれません。実際に、離れて暮らしている親と面会交流することが混乱を招き、健全な成長を阻害するような場合には、面会交流を制限できるとする裁判例もあります。

しかし、子どもと一緒に暮らしている親が再婚する場合であっても、面会交流を認める裁判例もあります。ケースバイケースで、個別的な事情が大きく影響しているようです。

子どもが再婚相手と通常の養子縁組をしたとしても、あなたが子どもの親であるという事実に変わりはありません。子どもと一緒に暮らしている親と、子どもに負担や混乱を与えない方法をよく話し合い(あまり存在感を発揮しないようにする、場合によっては一時的に面会交流を休止する、という方法も考えられます)、良い形で面会交流を続けることができれば、それは子どもにとって良い影響があるはずです。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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