『相続実務のツボとコツ』

2-1 民事信託(家族信託)とは?


<民事信託の沿革>
昨今、民事信託の活用が増加しつつありますが、これは、平成18年に信託法が改正され、一般の方でも信託制度を採り入れることが可能となったためです。商事信託については、後述の「民事信託と商事信託」で触れます。民事信託は、特に、相続実務における財産管理や資産承継に活用されるため、民法や相続税法と密接な関係にあり、それぞれとの法律の解釈で不確実な点もあり、また裁判例も少ないため、専門家の間で実務運用が徐々に進められてきた背景があります。

 

高齢化に伴うニーズの増加により、2016年ころからようやくメディアでも注目されるようになり、一般的
にも認知されるようになったのではないでしょうか。

 

<民事信託(家族信託)の仕組み>
民事信託とは、委託者(財産の所有者)が自分の財産を受託者(信託財産を管理・処分する人)に託し、受託者がその財産の管理処分を受益者(信託財産から生ずる利益を受ける人)のために行う法律関係のことをいいます。親(委託者)が子(受託者)に、自宅や賃貸アパートの管理、預金など、特定の財産の管理処分権を託し、子が話
された財産の管理を親(受益者)の為に行う形は、一般的によく活用されるケースで、このような家庭内での信託を家族信託と言っています。親子で信託することで、たとえ親が重度の認知症になり判断能力がなくなっても、子の判断で財産を管理処分することができるようになります(認知症の問題点については1-2節参照)。例えば、介護施設への入居資金を捻出するために空き家を売却することも、賃貸アパートの修繕や建て替えも、成年後見制度 (2-2節参照)を活用せず、子の判断でスムーズに進めることが可能です。このように民事信託を活用すれば、親が認知症になり判断能力が低下しても、財産凍結といった問題を回避し、子が信託契約の内容に沿って管理・処分することが可能となるので、相続対策おいて、財産管理や資産承継の一翼を担う制度となっています。

 

<民事信託と商事信託>
もともと信託は、信託業法に基づき金融庁から免許を受けた信託銀行や信託会社でなければ活用できない制度でした。運用会社が委託者から現金などの財産を預かり、資産運用を行うことで得られた利益を還元するというものです。これが、商事信託といわれるもので、収益や報酬を目的とした営業としての信託財産を引受ける形態です。

 

一方で、民事信託とは、受託者が不特定多数の委託者から財産を預かるという営業としての信託ではなく、自分の親族など特定少数の委託者から信託の引受を行うにとどまるケースを指します。そのため、商事信託ではなく、民事信託となる場合には、金融庁の許可や、信託財産の制約がありません。信託可能な財産は、金銭に
限らず、自宅不動産や自社株式など、自由な設計が可能です。なお、民事信託の場合でも、受託者への適切な額の信託報酬を設定することは可能です。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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