『入管法の実務』

2-2  各在留資格の分類


(1) 分類概念
日本に在留する外国人の法的地位については、入管法と入管特例法が規定しています。
まず、入管法が多くの在留資格を定めています(法2の2・別表1・別表2)。入管法別表第1の2の表に規定される「高度専門職」については、厳密には、同表下欄の1号イロハの各区分と2号はそれぞれ別の在留資格です(法2の2Iかっこ書)。同じく入管法別表第1の2の表に規定される「技能実習」についても、厳密には、同表下欄の1号イロの各区分、2号イロの各区分及び3号イロの各区分はそれぞれの別の在留資格です(法2の2I かっこ書)。
次に、入管特例法が「特別永住者」という法的地位を定めています(以下、入管法上の在留資格と入管特例法上の特別永住者をあわせて「在留資格等」といいます。)。これらの在留資格等は、それぞれ、日本における外国人の活動内容に着目して類型化された法的概念であり、外国人が日本において一定の活動を行って在留するための入管法及び入管特例法上の資格(法的地位)です。これらの在留資格等は、いくつかの基準により分類することが可能であり、ここでは、「就労可能資格と就労不能資格」、「活動類型資格と地位等類型資格」に分類して説明します。後記(2) (3)のとおり、入管法の別表も、当該分類に従って整理することができます。
(2) 就労可能資格と就労不能資格
ア分類の枠組み
分類概念としての就労可能資格とは、当該在留資格等を有していることにより、「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」(法191) (以下「就労活動」といいます。)を行うことが入管法上認められる在留資格等をいい、就労不能資格とは、資格外活動許可(法19 III)を得ない限り、就労活動を行うことが入管法上認められない在留資格をいいます。
入管法上違法に就労活動を行った場合には、その者自身に資格外活動罪が成立するほか(法7010.73)、その者に不法就労活動をさせた者にも、不法就労助長罪が成立します(法73の2)。
また、資格外活動を「専ら」行っていたと「明らかに認められる者及び入管法73条の罪により禁錮以上の刑に処せられた者は、退去強制事由に該当します(法240イへ)。したがって、就労可能資格と就労不能資格の分類は重要です。
就労可能資格は、一定範囲に限って就労可能であるか、それとも制限なく就労可能かによって、さらに分類することができます。ここでは、前者を業務限定就労可能資格、後者を無制限就労可能資格といいます。
イ就労可能資格
就労可能資格である在留資格等は、「外交」、「公用」、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「技術」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」、「技能実習」、「特定活動」の一部、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」、特別永住者です。
これらの在留資格等は、入管法別表第1の1の表第1の2の表、第1の5の表、別表第2及び入管特例法に規定されているものです。
(ア) 業務限定就労可能資格
就労可能資格のうち、一定範囲に限って就労可能である業務限定就労可能資格は、「外交」、「公用」、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「技術」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」、「技能実習」、「特定活動」の一部です。これらの在留資格は、入管法別表第1の1の表、第1の2の表及び第1の5の表に規定されているものであり、いずれも後記(3)イの活動類型資格にあたります。
一定範囲に限ってというのは、当該在留資格に応じこれらの別表の下欄に掲げる活動に属する就労活動に限ってということを意味します(法191①)。例えば、「技術・人文知識・国際業務」についていえば、当該在留資格を規定する別表第1の2の表の下欄に掲げる「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」に属する就労
活動(例えば、通訳・翻訳業務が含まれます。)に限って就労可能ということを意味し、当該範囲に含まれない活動(例えば調理業務)を報酬を得て行うことは認められません。
さらに、業務限定就労可能資格は、基準省令による上陸許可基準が定められているものとそうでないものとに分類することができます。上陸許可基準が定められている業務限定就労可能資格は、「高度専門職(1号)」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「技術」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」、「技能実習」であり、これらの在留資格は入管法別表第1の2の表に規定されています。
それに対し、上陸許可基準が定められていない業務限定就労可能資格は、「外交」、「公用」、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、「特定活動」であり、これらの在留資格は入管法別表第1の1の表及び第1の5の表に規定されています。
(イ) 無制限就労可能資格
就労可能資格のうち、制限なく就労可能な無制限就労可能資格は、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」、特別永住者です。これらの在留資格等は、入管法別表第2及び入管特例法に規定されているものであり、いずれも、後記(3)ウの地位等類型資格にあたります。
ウ就労不能資格
就労不能資格である在留資格は、「文化活動」、「短期滞在」、「留学」、「研修」、「家族滞在」、「特定活動」の一部です。これらの在留資格は、入管法別表第1の3の表、第1の4の表及び第1の5の表に規定されているものであり、いずれも活動類型資格にあたります。
就労不能資格は、さらに、上陸許可基準が定められているものとそうでないものとに分類することができます。上陸許可基準が定められている就労不能資格は、「留学」、「研修」、「家族滞在」であり、これらの在留資格は入管法別表第1の4の表に規定されています。それに対し、上陸許可基準が定められていない就労不能資格は、「文化活動」、「短期滞在」、「特定活動」の一部であり、これらの在留資格は入管法別表第1の3の表及び第1の5の表に規定されています。
工 罰則
(ア) 資格外活動罪
業務限定就労可能資格を有する外国人が、資格外活動許可を得ずに、当該限定された範囲を超えて就労活動を行うこと(法19 1 )、就労不能資格を有する外国人が、資格外活動許可を得ずに、就労活動を行うこと(法19 1(②) は、いずれも、入管法上違法な就労活動にあたります。
入管法上違法に就労活動を行った場合には、その者自身に資格外活動罪が成立します(法70 10・73)。また、資格外活動を「専ら」行っていたと「明らかに」認められる者及び入管法73条の罪により禁錮以上の刑に処せられた者は、退去強制事由に該当します(法240イヘ)。
なお、何らの在留資格を有しない外国人が就労活動を行うことも違法ですが、その違法性は不法残留、不法在留等の中で評価されており、別に資格外活動罪は成立せず(法70I①・73・19 I「別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者は」)、それ自体独自の退去強制事由にも該当しません(法240イ・ヘ・73・19I「別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者は」)。
(イ) 不法就労助長罪
入管法上違法に就労活動を行った者(非正規在留者を含みます。) に不法就労活動(法243のメイ)をさせた者には、不法就労助長罪が成立します(法73の2)。また、不法就労活動をさせ、唆し、又は助けた者は、退去強制事由に該当します(法243の4イ)。
(3) 活動類型資格と地位等類型資格
ア分類の枠組み
分類概念としての活動類型資格とは、日本における外国人の活動自体を類型化した在留資格であり、地位等類型資格とは、日本において外国人が活動を行うための根拠となる身分又は地位を類型化した在留資格等です。活動類型資格も、地位等類型資格も、ともに外国人が日本で行う活動内容に着目して定められた在留資格等であることは共通ですが、活動自体を類型化したものか、それとも、活動の根拠となる身分又は地位を類型化したものかの差異があるわけです。
入管法別表での規定のされ方を見ると、活動類型資格は、別表第1に規定され、それぞれの下欄は、「本邦において行うことのできる活動」でくくられているのに対し、地位等類型資格は、別表第2に規定され、それぞれの下欄は、「本邦において有する身分又は地位」でくくられています。
イ活動類型資格
活動類型資格である在留資格は、「外交」、「公用」、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」、「文化活動」、「短期滞在」、「留学」、「研修」、「家族滞在」、「技能実習」、「特定活動」です。
これらの在留資格は、入管法別表第1に規定されているものです。
ウ地位等類型資格
地位等類型資格である在留資格等は、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」、特別永住者です。これらの在留資格等は、入管法別表第2、入管特例法に規定されているものです。入管法別表第2に規定される地位等類型資格は、同表の下欄に掲げる身分を有する者又は地位を有する者が行うものとされる固有の活動(身分・地位を有する者としての活動)(法2の2II)があることを前提として、一定の身分又は地位を類型化したものといえます。
入管特例法上の特別永住者も同様です。入管法は、別表第2の下欄に掲げる身分を有する者・地位を有する者が行うものとされる固有の活動内容について個別具体的には定めていないため、その活動の内容及び範囲は、各在留資格の立法趣旨を踏まえ、社会通念に従って決定されることになります(「逐条解説」77頁)。
例えば、「日本人の配偶者等」についていえば、日本人との間の、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻という特別な身分関係を有する者としての本邦における活動であるとされます(最判平14・10・17民集56・8・1823)。
地位等類型資格を有する外国人が行うことのできる活動は、当該身分又は地位を有する者としての固有の活動(これは社会通念に従って決定されます。)だけに限られません。違法な資格外活動(就労活動)を禁じる入管法19条1項は、活動類型資格(入管法別表第1に規定)をもって在留する外国人についてのみ規制を加えており、地位等類型資格(入管法別表第2に規定)をもって在留する外国人については規制をしていないからです。よっ
て、地位等類型資格をもって在留する外国人は、当該身分又は地位を有する者としての固有の活動に加え、就労活動を無制限に行えるのであり、無制限就労可能資格にあたります。地位等類型資格をもって在留する外国人に違法な資格外活動ということは観念し得ません。

森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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