『相続実務のツボとコツ』

1-2 超高齢化社会となった日本の現状はどうなっているの?


<超高齢化社会の日本にとって財産管理は最重要課題>
日本は超高齢化社会といわれています。総務省の人口推計によると、2019年時点で、日本の総人口1億2,617万人のうち、高齢者(65歳以上)が3,588万人であり、高齢者の総人口に占める割合は28.4%と世界で最も高いのです。これは、4人に1人以上が高齢者ということになります。また、医療技術の進歩に伴い、人間の平均寿命も年々伸びて長寿化しています。ここで問題となるのが、不健康寿命も伸びているという事実です。認知症や寝たきりの状態になってしまうと、介護等の問題のほか、本人の意思確認ができず、契約のなどの法律行為ができなくなるため、財産を活用することが極めて難しくなります。ですから、財産管理対策は生前対策の中でもとりわけ重要課題といえます。

<認知症問題>
高齢化が進む中で、特に認知症による問題は大きく、厚生労働省の推計によれば、今後、高齢者の認知症有病者数は2025年には約700万人にも上るとされており、高齢者の内5人に1人が認知症になると予測されています。また、日本で認知症患者が保有する金融資産額は2030年時点で215兆円に達すると試算されています。認知症は、本人の理解力や判断力が著しく衰退した状態で、単に老化による物忘れとは異なりますので、回復が困難なケースも少なくありません。本人の意思が確認できなくては、契約など法律行為はできませんし、意思が曖昧な状況で行った契約は、後々になって契約無効などのリスクを伴います。ですから、契約相手が見つからないといった状況にもなるわけです。実際、銀行口座の預金も、銀行が本人の認知症を察知した場合、口座を凍結する扱いをするため、以後の出金は家族であってもすることはできません。介護施設の費用を工面するために、空き家となる持家を売却したいというケースでも、本人が意思表示できなければ売却はできません。長期的な生前対策の場合、途中で認知症が進み、計画が頓挫するリスクを考えると、実行に移すことは難しいでしょう。今後、認知症リスクは、生前対策を検討していく上で、より重要な課題と言えるのです。

「認知症になってできなくなること】
①自宅の売却ができなくなる
②遺産分割ができなくなる
③口座が凍結状態となり現金が下ろせなくなる
④節税対策ができなくなる

<意思能力の判断>
本人がした不動産売買契約や遺書などの有効無効について、後々になって、当時の判断能力の有無を巡るトラブルが考えられます。実際に裁判となった場合、本人の年齢、認知症の程度、行為の動機・背景、内容、難易、重大性、行為の結果を正しく認識できたか等を総合的に考慮されますが、具体的には、医療上の認定(長谷川式簡易知能評価スケールの結果、医師の意見書や診断書等)や取引内容への理解度、特に不動産取引のような通常行わない契約の場合は、単に契約書や委任状へ署名をしただけではなく、契約内容の理解力があったかどうかの状況が求められます。また、取引の合理性や高齢者にとって不利な取引か否か等から判断されるようです。高齢者が関与した不動産取引等に関わる専門家は、本人の判断能力に疑問がある場合、より慎重な対応を心掛け、医療上の根拠や、関係者に確認書を求めるなどし、最悪、契約を中断するなどの柔軟な対応が必要です。

●用語の解説
長谷川式簡易知能評価スケール:認知症診断の入口ともいえる検査ツールに使われているのが「長谷川式簡易知能評価スケール」です。問診票によるいくつかの設問があり、それらに対し正答が得られれば1点、間違いもしくは答えられなければ0点となります。採点の結果30点満点中20点以下の場合、認知症の可能性が高いと判断できます。なお、テストの実施方法が適切でなければならないため、専門医の下で実施してもらうのが確実です。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

 お問い合わせ
contents
↓応援ポチ感謝です↓
にほんブログ村 士業ブログ 行政書士へ
様々な法律知識