『相続実務のツボとコツ』

4-3 特別受益者・寄与分って?


<特別受益者って何?>
民法では、被相続人の生前に特別受益を受けた共同相続人を特別受益者といい、この受けた特別受益については、共同相続における相続分について考慮されています(民法第903条第1項)。被相続人の生前に被相続人より特別に贈与等の受益を相続分の算定で考慮しなければ、他の相続人との間での不平等が生じることから、こ
れを調整するための制度であり、共同相続人間の実質的平等を図るための制度とされています。

具体的には、特別受益者は相続分の算定において、相続財産の全体として特別受益を含めて計算し、各自の具体的相続分の計算においてこの特別受益を控除することされています(民法第903条第1項)。

この特別受益とされるのは、被相続人から相続人に対して「遺贈」された財産、及び婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として「贈与」された財産をいいます(民法第903第条第1項)。したがって、遺贈や養子縁組に伴う贈与のほか、学費や住宅購入のために援助等を受けていた場合は生計の資本として「贈与」されたものとして扱われるので、相続における具体的相続分の計算においてこれらを考慮する必要があることに留意が必要となります。

<寄与分って何?>
被相続人と共同しての経営に従事してきた共同相続人のように、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の貢献をした者がいる場合に、このような貢献のない他の共同相続人と同等に取り扱い、法定相続分どおりに被相続財産を分配するのは、実質的に衡平を失することになります。

そのような場合において共同相続人間の衝平を図るために、共同相続の場合に、共同相続人のうちに、被相続人の生前に被相続人の財産の維持又は増加について特別な寄与をした者がいる場合は、これを寄与分として考慮する制度があり(民法第904条の2)、これを寄与分といいます。

具体的には、相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることによって、寄与分相当金額についてこの者に有利に具体的相続分を計算することとなっています。

もっとも、寄与分が遺産分割における相続分の修正要素とされていることから、本条では、寄与分を受けることができる者は相続人に限定されています(民法第904条の2第1項)。すなわち、相続人ではない者(たとえば相続人の配偶者や子、事実上の養子、内縁の配偶者など)は、共同相続人になれず遺産分割にも参加できない以上、自らの寄与分を主張することはできません。

<特別寄与料とは>
上記のとおり寄与分は相続人に限られている結果、被相続人の配偶者などの相続人以外の者(子の配偶者など)は、被相続人の介護を尽くしても、相続財産の分配を得ることができず実質的な不公平が生じていると批判されていました。そこで、相続人以外の被相続人の親族が療養看護等により「特別の寄与」をした場合、相続開始後、相続人に対して、その寄与に応じた額の金銭の支払を請求できるという制度(特別寄与者制度)が新設されました。

この特別寄与者制度では、被相続人に対して、無償で療養看護その他の労務提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人以外の被相続人の親族(特別寄与者)は、相続開始後、相続人に対して、その寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができることとし(新民法第1050条)、相続人以外の親族の貢献を直接認める制度を設けることにより、実質的な公平を図られることとなりました。

なお、特別寄与者制度は、単に一定の要件を満たす場合に金銭的な請求を認めるものであり、対象となる親族に新たな療養看護などについての義務を課すものではないです。

おお、特別寄与料の支払いのためには (1) 被相続人の親族であること、(2) 無償で、意養看護その他の労務の提供をし、(4) これによって、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたことが要件とされています。

(1)として、被相続人の「親族」であることが定められています。なお、相続人や相続放棄をした者、相続人の欠格事由に該当する者および排除された者は除外されます。なお、民法上、「親族」とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指し(民法読725条)、内縁の配偶者や事実上の養子などは、「親族」には該当しません。

(2)については、無償性は寄与分制度でも当然の要件と解されていましたが、今回創設された特別寄与者制度では、要件として明文化されました(新民法第1050条)。

さらに、(3) 「労務の提供」が要件とされています。これは従前の寄与分制度においては「財産上の給付」「その他の方法」も含む規定となっていることと比較すると、要件が限定されています。療養看護が法令上例示されていますので、事業に関する労務の提供等も「労務の提供」に含まれるといえます。他方で、介護費を負担するような金銭上の給付は含まれないとされる可能性もあります。

(4) 「特別の寄与」という要件は、寄与分制度文言が同一です。寄与分制度においては、相続関係を前提として、法定相続分を修正するに値する強い寄与を指し、その者と被相続人との身分関係において通常期待すべき程度の行為含まれないと解されています。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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