『離婚のツボとコツ』

1-6 結婚前の借金を隠していました


<借金はないって言うから結婚したのに>
プロポーズされた時に、「借金だけは嫌いなの。借金はないよね?」と確認しました。その時、彼が借金はないと言うから結婚したのです。
でも実は、借金があったんです。しかも、その原因はギャンブルでした……。

 

<話し合いのコツ>
●夫婦関係にどのような影響を与えているか
借金があり、かつ、借金のせいで一緒に生活していくことが難しい場合には、離婚することができる可能性は高いです。

とはいえ、結婚生活を振り返ってみて、純粋に借金という経済的な事情だけが結婚生活を続けていくための障害だと考えるのであれば、夫婦で話し合いをして、まずは、借金を整理することを考えてもいいかもしれません(もちろん、借金は気持ちを荒廃させますので、もともとは純粋な経済的な問題であったのに、荒廃した気持ちでの生活によって夫婦の信頼関係そのものが壊れてしまっていることもあるかもしれません)。

借金の問題については、例えば、弁護士に依頼することによって、月々の返済のベースを交渉してもらったり、あるいは、破産・免責という形で借金を清算し、一からやり直す、という方法をとることもできます。

 

以前、離婚の相談にいらっしゃった方に離婚したい理由をうかがったところ、「事業上の借金」を挙げられたため、債務整理の説明をした上で夫婦間で話し合っていただくことを勧めました。改めて債務整理の相談・依頼をいただき、離婚をせずに解決した、というケースもあります。

 

●借金の原因について考える
仮に、相手とやり直すにしても、借金をしてしまう体質をなんとかしてもらう必要があると思います。そのためには、なぜ、借金をしてしまうのかを考えていく必要があります。
中には、ギャンブルにのめり込んだ結果、借金をしてしまっているケースもあります。あるいは、アルコール、買い物、さらにはキャバクラ・ホスト・風俗などにつき込んでしまっているケースもあります。いわゆる、依存症という病気の可能性もあります(心当たりのある方は、本節のコラムも参照してください)。

 

個人の借金の原因として、単純に生活費が足りない、というケースは少ないように感じます。大抵の借金は、何らかの生活上の歪みから生じた生活習慣病のようなものです。もし、借金の陰に、ギャンブルや買い物などの問題行動がある場合には、その問題行動そのものへの対応に加え、なぜその問題行動が起こるのか、ということまできちんと考えてくれる専門家・専門機関にきちんと相談してください。そうしないと、今回限りという条件で借金の返済を立て替えてあげても、何度も同じことを繰り返すことになります。

 

◎話し合いのコツ ポイント
|借金がなくなれば解決する問題かどうかをまずは考えましょう。
度重なる借金は、病気かもしれません。専門家・専門機関に相談を。
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<法律上のツボ>
●借金の存在を理由に離婚できるか
単純に借金があるという理由だけでは離婚は難しいと思います。裁判で離婚が認められるためには離婚事由(1-1節)が必要で、法律は、借金の存在を直接の離婚事由としていません。ただ、例えば、借金のせいで、家計が成り立たない、喧嘩が絶えない、それにもかかわらず借金をやめられない、といった事情があれば、借金の存在だけではなく、借金に伴う問題を全体としてみて、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められるのではないかと思います。

また、事情により強く借金を嫌う理由があり、結婚に際して借金がないことを何度も確認したにもかかわらず、後日、借金があったことが発覚したケースでは、嘘をついてまで借金の存在を隠したことは、夫婦の共同生活の基礎となる信頼関係に影響があると判断されました。

借金によって、どのように夫婦の共同生活が脅かされているかが重要なポイントになります。

●夫の借金は、妻の借金?
「旦那が作った借金は、奥さんに払ってもらおうじゃねぇか!」

 

ドラマなどで、聞きそうな台詞です。厳密には離婚そのものとは関係ありませんが、相談の時によく受ける質問ですので、ここで説明したいと思います。配偶者がつくった借金は、もう一方の配偶者も返済しなくてはならないのでしょうか。答えはNOです。法律上は何の義務もありません。むしろ、貸金業者が、借金をした本人以外の者に対して、本人の代わりに借金を返済するよう請求することは、法律で禁止されています。

 

ただ、例外がふたつあります。

 

1つ目の例外は、あなた自身が、配偶者の保証人になってしまっている場合です。この場合は、保証人としてあなたも借金を返済する義務があります。まれに、保証人になるという保証契約書にサインをした記憶がないのに、保証人としての請求を受けることがあります。不審に思ってよくよく調べてみると、配偶者が愛人に、あなたのサインを偽造させていた、という事情が明らかになることがあります。

 

このような場合、原則として、あなたに借金を返済する義務はありません(ただし、訴訟になってしまった場合には、偽造されたことを主張・立証する必要があります)。

 

また、あなたに借金を返済する義務がない=偽造だった、ということですから、配偶者は、何らかの刑事的な処罰(刑務所へ行く等)を受ける可能性が生じます。

2つ目の例外は、日常家事債務というものです。日常の家事に関する契約によって生じた債務(例えば新聞代など)は、一方配偶者の契約により生じた債務であっても、他方配偶者も支払い義務を負うことが民法761条に定められています。

 

●条文 民法761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

◎法律上のツボポイント
借金により、どのように困っているかが重要になってきます。
原則として、配偶者の借金を返済する義務はありません。

 

◎用語の解説
・離婚事由:裁判で離婚が認められるために必要とされる事実。民法770条に定めがある。詳細については、1-1節参照。

 

【コラム】依存症という可能性
少し毛色の違う話をしたいと思います。
離婚相談の中で、離婚を希望する理由として、ギャンブル目的の借金であったり、繰り返される浮気であったり、お酒に酔ってのトラブルであったり、といったこと等を挙げられる方がいらっしゃいます。他にも処方薬の過剰服薬 (オーバードース:OD)、やリストカットに振り回されて疲れた、という理由を挙げる方もいらっしゃいます。

これらの行為は、依存症という病気に由来する行為である可能性があります。

 

他人とうまくコミュニケーションをとれない、実家の親との関係がうまくいっていない、職場での重責に潰れそうである等、種類を問わず「生きづらさ」に直面した人が、そのような生きづらい気分を変える、あるいは紛らわすことのできる行為(例えば飲酒)を、習慣化させ、依存症という状態・病気になります。

 

相手の問題行動に振り回されて傷つけられているあなたは、間違いなく被害者です。離婚は当然ありうる選択肢です。離婚を希望する場合には、胸を張って選択してもらいたいと思います。

 

他方で、あなたが離婚に踏み切れない場合、あるいは、これらの問題行動さえ収まってくれれば結婚生活を続けたいという気持ちがある場合には、相手が依存症から回復できるような手伝い、すなわち、相手が直面している生きづらさを解消できるような支援をするという選択も考えられます。

 

ただ、その場合には、病院やカウンセラーをはじめとする専門家に必ず相談してください。例えば、最近は、うつ病の人に「頑張れ」と言うことが禁忌であることは広く知られていると思いますが、かつては、うつ病の人に「頑張れ」と言ってしまう人は少なくありませんでした。依存症も、うつ病と同じ精神疾患の1つで
あり、精神疾患の支援というのは、感覚だけではとても難しい部分があります。

 

あなたが1人で全てを抱えるという形での支援は、共倒れを招いたり、かえって相手の病状を悪化させてしまったりする危険があります。なお、相手は専門家に相談することを間違いなく嫌がります。

 

そのため、このような分野の専門家の多くは、家族向けの相談窓口を持っています。まずは、あなただけでも相談してみてください。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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