『相続実務のツボとコツ』

1-4 手続き前に相続人が亡くなった場合はどうする? ~数次相続~


<数次相続とは?>
数次相続とは、相続開始後に、遺産分割協議や不動産の名義変更などの相続手続きが完了する前に、さらにその相続人の内の誰かが死亡することで、相続が重なるケースをいいます。父が死亡したあと、何だかんだで遺産分割を先送りにしている内に、母が他界してしまったというケースも少なくありません。この場合、父の相続に関しての遺産分割協議と、母に関しての遺産分割協議をしなければなりません。

 

ここで法定相続というものを思い出してください。相続というのは、民法に定められた相続人に自動的に権利や義務が承継されるようになっています。一度の数次相続であればそこまで問題となることは多くないかもしれません。しかし、数次相続の問題点は、これが重なることにより関係者がどんどん増えていってしまうことにあります。

実際、実務的に問題となるのは、このような親族関係が複雑化し、全く面識のなかった者同士が遺産分割を行わなければならいない点にあります。いざ相続した不動産を売却しようと調べたら、所有者が何十人にもなっていたとか、相続人が認知症や寝たきりの状態で後見人を選任しなければならないとか、そもそも行方不明といったケースでは、もはや裁判所を通してでなければ解決できなくなり、費用も時間もかかります。都度整理していくことが肝要です。

 

<数次相続と代襲相続の違いは?>

数次相続と代襲相続との違いは、簡単に言えば死亡のタイミングによる違いです。

代襲相続は、もともと相続人となる予定の子または兄弟姉妹が、被相続人よりも先に死んでしまっていた場合の規定です。
その場合、子または兄弟姉妹の子が、代わって相続人となるのがこの代襲相続です。一方で数次相続とは、一旦は相続人としての地位を取得しますが、その後、遺産分割協議を経ないうちに相続人が死亡してしまうケースをいいます。

 

わかりやすい事例を見てみましょう。父の死亡後、相続人の長女が翌年死亡したケースでは、父の相続人は、母、次女、長女になり、長女の相続人は配偶者と長男になります。一方で、父の死亡前に既に長女が死亡していた場合は、父の相続人は、母、次女、そして長女を代襲相続して長男になります。これらの違いによって、相続人が変わることがあるため、相続人を判断する際は注意が必要です。

<数次相続の際の法定相続分は?>
数次相続が発生した場合に、相続人や相続分はどうなるのか、遺産分割協議はどうするのかという点ですが、ここは、難しく考えずに順を追ってみていくと理解が深まると思います。

 

父の相続に関しては、母が4分の2、次女4分の1、長女4分の1となります。しかし、既に長女は死亡しているため、父の遺産分割協議には、長女の相続人である配偶者と次男が参加して行います。したがって、父の相続に関して、配偶者と長男が、それぞれ8分の1ずつ相続することになります。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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