『離婚のツボとコツ』

1-2 別居していれば 離婚できますか?


<もう随分と会っていなくて、夫婦って気がしない!>
結婚して同居をはじめた瞬間に、妻から生活習慣の違いをいろいろと指摘さるようになりました。どんどん息苦しくなってしまい、最終的に家を飛び出しました。別居を始めてからもう1年が経過しています。私が家を飛び出した時、妻は専業主婦でしたが、今は、何をしているのかわかりません。この間、妻に対して生活費を送ったりしたことはありません。

<話し合いのコツ>
●別居だけを理由とした離婚はハードルが高い
別居に至るということは、おそらく夫婦として共同生活を送るのが辛い理由がいくつかあるのだと思います。通常は、別居に加えて、それらの理由を、離婚事由として主張することになります。

しかし、別居以外に明確な離婚事由を挙げられない(あるいは、裁判において別居以外の離婚事由を証明できるだけの証拠がない)ということになってくると、裁判で離婚が認められるためには、みなさんが思っている以上に長い別居期間が必要となります。

ただ、これはあくまで裁判で離婚しようという場合の話です。1-1節でも触れたように、双方に合意があれば、離婚を成立させることができます。その意味では、離婚事由が別居だけの場合、裁判に持ち込むよりも、なんとか話し合い(場合によっては駆け引き)で離婚する方法を考えた方がスムーズです。

●別居中の義務
夫婦には、婚姻から生じる費用(婚姻費用)を分担する義務、簡単に言うと生活費を支払う義務があり、このことは別居期間中も変わりません。そのため、夫婦の一方は他方に対して生活費の支払を請求することができ(どちらがどれくらいの請求をできるのかについては、本節の法律上のツボを参照してください)、これに応じないことは、悪意の遺棄に当たります。そのため、生活費を支払わないと離婚について責任のある配偶者 (有責配偶者 (1-3節参照))として扱われることになります。

このように、決定的な離婚事由がない(証明できない)状況での別居であっても、別居後に、離婚事由が生じる(証明できるようになる)場合もあります。

また、生活費の請求をしているうちに、相手が、生活費を支払うくらいであれば離婚した方がマシだ、という気持ちになって、離婚に至る場合もあります。

◎話し合いのコツポイント
別居だけを理由に裁判で離婚するには、みなさんが思っている以上に時間がかかります。
相手に生活費の支払義務を認識してもらうことが、離婚につながる場合もあります。

<法律上のツボ>
●離婚に必要な別居期間は?
別居だけを離婚事由として主張する場合、離婚が認められるために必要な別居期間は概ね5年~10年と言われています。

さらに、夫婦には同居の義務がありますから、何の理由もなく(例えば配偶者の暴力や暴言に耐えかねて、というのは正当な理由です)別居した場合は、その別居自体が悪意の遺棄にあたると判断される場合があります。悪意の遺棄をした有責配偶者であると判断されてしまうと、離婚へのハードルはさらに高くなります(1-3節参

●婚姻費用の分担について
夫婦には、婚姻から生じる費用(婚姻費用)を分担する義務があります(民法760条)。

この婚姻費用の金額は、決定で定めるということになると、裁判所が公開している
「養育費・婚姻費用算定表」(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf) を参考資料として定められることがほとんどです。そのため、話し合いで婚姻費用を決める場合でも、この表の金額が、いわゆる相場になっています。

使い方について簡単に説明します(次ページ参照)。子のいない夫婦は「表10 婚姻費用・夫婦のみの表」を使用します。

次に、例えば夫婦ともに給与所得者で、夫の年収が400万円、妻の年収が100万円の場合は、義務者(年収の高い方)の給与400万円と権利者(年収の低い方)の給与100万円の交差する部分を見ます。該当部分は4万~6万円のブロックですので、夫の年収が給与で400万円、妻の年収が給与で100万円の夫婦は、妻は夫に対し、毎月4万~6万円の婚姻費用の分担を請求できるということになります。

また、例えば、夫が自営業者、妻が給与所得者で、夫の年収が400万円 (ちなみに、自営業者の場合、確定申告書の「課税される所得金額」に対し、実際支出されていない費用(基礎控除や青色申告控除等)を加算して年収を定めることになります)、妻の年収が100万円の場合は、6~8万円のブロックに該当し、妻は夫に対し、毎月6万~8万円の婚姻費用の分担を請求できるということになります。

婚姻費用の分担は、請求の意思が明確になった時点(例えば、婚姻費用の分担を請求する調停または審判の申立て時点)から請求できるのが一般的とされています。

また、一度決めた金額についても、状況の変化を理由として、増額や減額を求める調停や審判を申し立てることができます。

◎法律上のツボ ポイント:別居の際は、婚姻費用の分担や悪意の遺棄の問題に注意して!

●条文 民法760条(婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

【用語の解説】
離婚事由:裁判で離婚が認められるために必要とされる事実。民法770条に定めがある。詳細については、1-1 節参照。
婚姻費用:夫婦が共同生活を送るために必要な費用。簡単に言うと生活費。いわゆる養育費も含まれる。詳細については、1-2節参照。
悪意の遺棄:民法770条に定められている離婚事由のひとつ。例えば、生活費を渡さなかったり、正当な理由なく別居したり、置き去りにしたりすること。
有責配偶者:離婚の原因(離婚事由) 作った側の配偶者。例えば、不貞をしたり、暴力を振るったりしている側の配偶者。詳細については、1-3節参照。
決定(決定書):審判手続における審判官(=裁判官)の結論 【結論と理由が記載された書類】。例えば、話し合いがつかない場合に、分担すべき婚姻費用の金額についてなされる。一般の方がイメージする判決に相当する。
審判手続:調停で話し合いがつかなかった場合等に行われる手続。審判官(=裁判官)が結論(養育費の金額等)を決める手続であり、一般にいう訴訟のようなもの。ただし、訴訟と異なり、非公開である。
調停【調停調書】:裁判所における、非公開の話し合いの手続その話し合いの結果が記載された公的な書類。原則としてお互いに顔を合わせることはなく、守秘義務を負う調停委員が間に入り、話し合いを進めていく。詳細については、4-3節参照。
財産分与:婚姻中に夫婦で形成した財産を、離婚に伴い分配・清算する手続き。
詳細については、3-2節参照。
慰謝料:精神的な苦痛に対する損害賠償(金銭請求)。詳細については、3-1節参照。

 

【コラム】内縁ってなに?
内縁関係というのは、社会的にみると夫婦としての実質を備えているにも関わらず、婚姻届を提出していない(=法律上、婚姻していない)関係のことです。

よく、同棲との違いを聞かれるのですが、同棲は、あくまで交際相手と一緒に生活しているだけで、相手と、夫婦として共同生活を送ろうという気持ちまではない場合です。内縁関係は、相手と、夫婦として共同生活を送る気持ちがある場合、いわば今後の人生を共にしていく気持ちがある場合に成立します。
そして、単なる同棲ではなく、内縁関係があると認められる場合には、法律上の婚姻をしていなくても、夫婦として婚姻費用の分担を請求し、相手が不貞をした場合には慰謝料を請求し、内縁関係を解消した場合には財産分与を請求することができます。また、相手が亡くなった場合には、遺族年金を請求できる場合もあります。
ただし、内縁関係では、相手が死亡した場合に財産を相続することはできません。この点については、事前に遺言状を作成するなどの対策を立てる必要があります。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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