『相続実務のツボとコツ』

1-1 相続実務ってどういうこと?


<生前対策と相続手続きの流れをイメージしよう>

本書を手に取っていただいた方の中には、これから相続実務の知識を身に着けておきたい一般の方のほか、相続手続きを担う各士業やコンサルタント、銀行や不動産会社、保険会社など専門職の方が多いのではないでしょうか。さっそく本題に入りたいところですが、ますは、生前対策と相続手続の概要について見ていきましょう。

 

<生前対策の3つの柱>
生前対策では、主に個人の持つ資産を誰にどのように承継させ、実際に相続が発生した際に相続税の納税資金をいかに確保するのか、あるいは、相続税そのものの負担をいかに少なくしていくかについて検討していきます。この生前対策には、大きく3つのポイントがあり、①遺産分割対策、②相続税対策、③財産管理対策をバランスよく検討し、相続人間の争いや、後々相続人が相続税の納税資金で困らないように計画しなければなりません。

①遺産分割対策の問題
相続財産の内容が、現金や有価証券など分けやすい資産であれば比較的平等な遺産分割も難しくないでしょう。しかし、相続実務の現場で特に問題となるのは、不動産や自社株式(非上場株式)など容易に分けたり現金化することが困難な資産です。これらの資産がある場合、遺産分割がまとまらず、それぞれの主張が対立し、骨肉の争いに発展するケースも多々あります。遺産分割協議に期限はありませんが、未了の状態では、銀行が現金の引き出しに応じてくれず、事実上の口座凍結状態となり、資金繰りに戸惑う相続人もいるでしょう。相続登記が未了では、不動産の売却もできません。他にも、後述する相続税申告の問題も発生します。生前から誰がどの財産を承継するのかを検討し、その内容を遺言書や民事信託によって実現できるように準備することが重要です。

②相続税の問題
一定額以上の相続財産がある場合、税金を納める義務が発生します。これを相続税といいますが、相続開始から10か月以内にこの相続税申告を行い、原則現金で納付しなければならない決まりになっています。これを過ぎると、延滞税などのペナルティが課せられることもありますので、相続税の発生が予想される場合は、計画的に納税資金を確保する必要があります。また、遺産分割協議がまとまらなければ、各種の減税特例などを受けることができないなどのデメリットがありますので、遺産分割対策と同様に優先して検討していく必要があります。相続税は超過累進課税となっているため、相続財産が大きければ大きいほど、納税負担も重くなります。相続税を減らす方法として大きく2つのポイントがありますが、1つは、生前贈与などで子や孫に財産を移し、相続財産を減らしていく方法です。年間110万円までの非課税枠を活用した暦年贈与は、もっともポピュラーな対策でといえるしょう。もう1つは、相続税の課税対象となる相続財産の評価額を下げることにより、相続税を圧縮する方法です。つまり、同じ価値のある財産でも、適用する評価方法によって相続税評価が異なるため、より評価の低くなる財産を保有するという考え方です。これには、主に、賃貸不動産の建築や区分マンションを活用した方法があります。

③財産管理の問題
遺産分割対策や相続税対策も重要ですが、本人が認知症になった場合の財産管理が問題になります。財産管理とは、預金口座の現金を使ったり、不動産を担保に入れてローンを組んだり、不動産投資を始めたり、あるいはこれらの財産を贈与する、遺贈するなど、財産の利用や維持、形成に関する行為を言います。認知症になると、これらの意思表現が困難になり、契約を結ぶなどの法律行為ができなくなりますので、必然的に生前対策の根本的な問題となるのです。長期的な相続税対策では、計画が途中で頓挫するリスクもあるため、本人が元気なうちから対策が必要です。


森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

 お問い合わせ
contents
↓応援ポチ感謝です↓
にほんブログ村 士業ブログ 行政書士へ
様々な法律知識