『入管法の実務』

2-1  一在留一在留資格の原則


(1) 一在留一在留資格の原則の意義
ア在留資格
入管法によれば、日本に上陸しようとする外国人は、一定の在留資格に係る在留資格該当性を有することの審査を受けなければならず(法712)、日本に在留する外国人は、特別の規定がある場合を除き、当該外国人に対
する上陸許可(法3)若しくは当該外国人が取得(法22の2) し又は変更(法20)に係る一定の在留資格をもって日本に在留するものとされています(法2の21)。
入管法にいう「外国人」とは、日本の国籍を有しない者をいい(法22)、無国籍者も含みます。他方、日本国籍を含む重国籍者は、「日本の国籍を有しない」わけではないので、入管法上、日本人です。退去強制令書発付処分取消等請求訴訟において、裁決及び退去強制令書発付処分を受けた原告が「外国人」(法22)に当たることの立証責任は、被告たる国の側にあります(大阪高判平23・12・8公月59・10・2731、大阪地判平23・1・19(平19(行ウ) 191)裁判所HP、山脇康嗣「入管法判例分析」232頁(日本加除出版、平成25年))。
仮に原告が真実は裁決当時日本国籍を有していたにもかかわらず、日本国籍を有しない外国人であることを前提として、異議の申出に理由がない旨の裁決がされた場合は、当該瑕疵は入管法の定める退去強制制度の根幹にかかわるものなので、違法であるにとどまらず、無効となります(大阪地判平17.11.18(平14(行ウ) 161)判所HP)。
イ在留期間
在留資格を決定する場合には、必ずその在留資格に対応する在留期間が定められることとなっています(法2の21 IⅢ、規3・別表2、法91 Ⅲ・20Ⅳ・19の41③・21Ⅳ)。また、上陸・在留資格変更・在留期間更新のいずれの許可においても、在留資格及び在留期間は、1個のみ記載することとされています(法19の41 3V・69、視71・20W・21V)。さらに、既に在留資格(及びこれに対応する在留期間)を有する外国人が、在留期間経過後も適法に在留するためには、現に有する在留資格を変更することなく在留期間の更新を受けるか(法21)、又は在留資格の変更を受ける(法20)ことを必要とします。
これらのことに照らすと、在留資格は、これに対応する在留期間と常に一体不可分に観念されるべきものであることが明らかです。
ゥ 一在留一在留資格の原則
上記ア及びイからすると、入管法は、外国人が上陸許可又は在留資格の変更若しくは在留期間の更新許可を受けて日本に適法に在留するためには、1個の在留資格と、それに対応する1個の在留期間が決定されることを
必要としており、同時に複数の在留資格を有したり、終期の異なる数個の在留期間を有したりすることを許容していないと解されます(名古屋高判平15・8・7(平14(行コ)50) 裁判所HP、名古屋地判平17・2・17判タ 1209・101)。
これを入管法上の一在留一在留資格の原則といい、入管法における最も根源的な原則です。日本に在留する外国人が在留資格を失うと、入管法上、退去強制事由に該当し(法242の20日)、日本から退去強制される立場となり、日本において合法的に滞在することはできなくなります。
(2) 正規在留と非正規在留
外国人が日本に適法に在留するためには、一在留一在留資格の原則により、1個の在留資格(とそれに対応する1個の在留期間)を有していることが必要です。在留資格を有する外国人の在留を正規在留といい、在留資格
を有しない外国人の在留を非正規在留といいます。
外国人の日本における在留は、正規在留と非正規在留に分けられます。正規在留者に係る主な入管法上の手続として、在留期間更新(法21)、在留資格変更(法20)、永住許可(法22)、在留資格取得(法22の2)、資格外活動許可(法19II)、就労資格証明書交付(法19の2I)等があり、非正規在留者に係る手続として、退去強制手続(法5章)(在留特別許可、仮放免、退去強制令書発付処分等)があります。
(3) 非正規在留の態様
非正規在留は、その態様により、主に、不法入国(法240)、不法残留(法2400)及び不法在留(法70 II)に分けられます。いずれについても同じ法定刑の刑罰規定が設けられ(不法入国につき法701、不法残留につき法7016、不法在留につき法70II)、また同じく退去強制事由にも当たります(不法入国及び不法在留につき法240、不法残留につき法2100)。
しかし、不法入国不法残留及び不法在留では、出国命令制度(法24の3)の対象となるか否かにおいて違いがありますし、在留特別許可(法50)の許否の判断においても情状面で異なって考慮されうるので、それぞれの態様を明確に認識しておくことが重要です。
ア不法入国
不法入国とは、有効な旅券等を所持しない外国人が日本国の領海・領空に入った場合(法3IO)又は有効な旅券等を所持する外国人で入国審査官から上陸許可等を受けないで日本に上陸する目的を有するものが日本国の
領海・領空に入った場合(法31②)をいいます(法240)。
入管法24条1号に該当する外国人(不法入国者。不法入国後に不法在留する不法在留者も含みます。)は、不法残留者(法2400)と違って出国命令制度の対象となりません(法21の3柱書)。また、在留特別許可の許否判断において、入国(上陸)当初から不法状態であったことは、当初から出入国管理秩序を無視する態度であったことの発現として、入国(上陸)当時は不法状態でなかった不法残留に比して、より不利益な事情として料酌され得ます(在留特別許可に係るガイドライン)。
なお、外国人が、一般上陸の許可(法3章1節・2節)、特例上陸の許可(法3章4節)のいずれの許可も受けることなく不法に日本に上陸することを不法上陸といいますが(法24②)、不法入国者(法24①)が上陸した場合には、その上陸は不法入国行為の中で評価され、入管法24条2号の不法上陸には該当しません(「逐条解説」526頁)。
イ不法残留
不法残留とは、在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(特例期間を含みます。)を経過して日本に残留することをいいます(法2400)。特例期間(法20V・211V)とは、30日以下の在留期間を決定されている外国人を除き、在留期間満了日までに、在留期間更新又は在留資格変更を申請した場合において、申請に対する処分が在留期間満了日までにされないときは、その在留期間の満了後も、当該処分がされるとき又は従前の在留期間満了日から2か月を経過する日のいずれか早いときまで、引き続き当該在留資格をもって日本に在留することができる期間のことです。
ウ 不法在留
不法在留とは、不法入国者又は不法上陸者が、日本に上陸した後引き続き不法に在留することをいいます(法70IⅡ)。不法入国罪(法701①)及び不法上陸罪(法70 IⒸ)は即時犯であり、不法入国又は不法上陸した日から公訴時効が進行するのに対し、正規に入国しその在留期間を経過して在留する不法残留罪(法70 15) は継続犯であり公訴時効にかかりません。そこで、入管法70条2項は、日本に不法に在留する外国人であることにおいて何ら変わりはないのに、不法入国者・不法上陸者であるが故に時効によって処罰を免れ、著しくバランスを欠くこととなるのを防ぐために、不法入国者又は不法上陸者が日本に上陸して引き続き不法に在留する行為については、不法入国罪又は不法上陸罪とは別個に、継続犯としての不法在留罪で処罰することとしたものです(「逐条解説」977頁)。
(4) 非正規在留の合法化
ア在留特別許可
在留特別許可(法50I)とは、入管法24条各号で規定される退去強制事由に該当するため本来は退去強制される外国人に対し、法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると判断し、その裁量により与える在留許可です。
在留特別許可を受けることにより、非正規在留が合法化されます。非正規在留が終局的、確定的に合法化され、正規在留となるのは、在留特別許可された場合だけです。したがって、非正規在留者から日本において引き続き在留したい旨の相談を受けた場合には、基本的には、在留特別許可の可能性を検討します。退去強制手続において、不法残留者が仮放免(法541)されたとしても、一時的に収容を解かれたにすぎず、身柄を仮放免されて日本に滞在する行為についても、不法残留罪が成立している状態であることに変わりありません(最決平15・12・3月集57・11・1075)。
なお、難民認定手続(法7章の2)において、法務大臣が在留資格未取得外国人(法61の2の21)に対し、在留特別許可をするときは、入管法50条1項ではなく、入管法61条の2の2第2項が適用されます(法61の2の6V)。
イ 出国命令
出国命令制度は、入管法違反者のうち、一定の要件を満たす不法残留者について、全件収容主義の例外として、身柄を収容しないまま簡易な手続により出国させるというものです(法24の3)。不法残留者で出国命令の要件(法24の3) を満たすものについては、身柄を収容されず(法55の2I)、出国期限の指定(法55の3I)により、その間の在留をいったん合法化され、また、出国後の上陸拒否期間も最短の1年間(法519ニ)となるなど、通常の退去強制手続による場合と違いがあります。
出国命令に係る出国期限を経過して日本に残留する者は退去強制の対象となるほか(法249)、刑事罰の対象となります(法7018の2)が、これを反対解釈すると、出国命令を受けた場合、出国期限まではその在留が合法化
されるといえます。
もっとも、出国命令は、出国期限までに出国することが前提の制度であり、継続在留を前提として在留の終局的、確定的な合法化を意味する在留特別許可とは根本的に性質が異なります。
ウ仮滞在
不法滞在者等の在留資格未取得外国人(法61の2の21)が難民認定申請(法61の21)をしたときは、一定の除外事由がある場合を除き、法務大臣から仮滞在が許可されます(法61の2の41)。すなわち、当該外国人が日本に上陸した日(日本にある間に難民となる事由が生じた者にあっては、その事実を知った日)から6か月経過後に難民認定申請を行ったものであるとき(法61の2の416・61の2の21①)、難民条約上の迫害を受けるおそれのあった領域から直接日本に入ったものでないとき(法61の2の416・61の2の21②)、退去強制令書の発付を受けているとき(法61の2の4I③)、逃亡のおそれがあるとき(法61の2の419) 等の法定の除外事由(法61の2の410~9)に該当する場合を除き、必ず、仮に日本に滞在することが許可され(法61の2の41)、その間は退去強制手続が停止されます(法61の2の6II)。これが仮滞在許可です。
在留資格未取得外国人から難民認定申請があったとき、法務大臣は、上記の除外事由に該当する場合を除いて、必ず仮滞在を許可しなければならないという意味で、羈束行為です(「逐条解説』801頁)。この羈束性は、入管法61条の2の4第1項柱書の「許可するものとする」との文言から明らかです。
仮滞在期間を経過して日本に在留する者は処罰されますが(法70)、これを反対解釈すると、仮滞在許可を受けた場合、仮滞在期間中はその在留が合法化されるといえます。
退去強制事由(法24)があっても、仮滞在期間中は、収容令書によって収容(法39I)されることはありませんし、収容令書によって収容されている場合は、収容を解かれます(「逐条解説』818頁)。もっとも、仮滞在許可も暫定的なものであり、継続在留を前提として在留の終局的、確定的な合法化を意味する難民認定(法61の2・61の2の21) や在留特別許可(法61の2の2 II)とは根本的に性質が異なります。
2 各在留資格の分類
(1) 分類概念
日本に在留する外国人の法的地位については、入管法と入管特例法が規定しています。
まず、入管法が多くの在留資格を定めています(法2の2・別表1・別表2)。入管法別表第1の2の表に規定される「高度専門職」については、厳密には、同表下欄の1号イロハの各区分と2号はそれぞれ別の在留資格です(法2の2Iかっこ書)。同じく入管法別表第1の2の表に規定される「技能実習」についても、厳密には、同表下欄の1号イロの各区分、2号イロの各区分及び3号イロの各区分はそれぞれの別の在留資格です(法2の2I かっこ書)。
次に、入管特例法が「特別永住者」という法的地位を定めています(以下、入管法上の在留資格と入管特例法上の特別永住者をあわせて「在留資格等」といいます。)。これらの在留資格等は、それぞれ、日本における外国人の活動内容に着目して類型化された法的概念であり、外国人が日本において一定の活動を行って在留するための入管法及び入管特例法上の資格(法的地位)です。
これらの在留資格等は、いくつかの基準により分類することが可能であり、ここでは、「就労可能資格と就労不能資格」、「活動類型資格と地位等類型資格」に分類して説明します。後記(2) (3)のとおり、入管法の別表も、当該分類に従って整理することができます。
(2) 就労可能資格と就労不能資格
ア分類の枠組み
分類概念としての就労可能資格とは、当該在留資格等を有していることにより、「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」(法191)留が合法化されるといえます。退去強制事由(法24)があっても、仮滞在期間中は、収容令書によって収容(法39I)されることはありませんし、収容令書によって収容されている場合は、収容を解かれます(「逐条解説』818頁)。
もっとも、仮滞在許可も暫定的なものであり、継続在留を前提として在留の終局的、確定的な合法化を意味する難民認定(法61の2・61の2の21) や在留特別許可(法61の2の2 II)とは根本的に性質が異なります。

森井 啓之

代表 行政書士

森井 啓之

東京大学法学部を卒業後、大手金融機関に入社。法務部で、民法改正への対応、リーマン・ブラザーズの破産管財人との英語での激しい交渉を経て莫大な債権回収(詳細は守秘義務)に成功。また、個人融資における遺言・相続業務など幅広い経験を積んで参りました。皆様に、迅速かつ丁寧で最高の法務サービスをご提供させて頂ければ幸いです。

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